南の泉へ行ってみよう! 7
グルグルと考えていたとき、僕ははたと閃いた。
「ルイス! あの口の中に魔除玉を放り込めないかな!」
僕は慌てて自分のマジックポーチの中から、自作の魔除玉を複数取り出した!
「はい! 植物園産高濃度魔除玉で作った、『マシマシ君二号』!!」
ルイスはソラタンに駆け寄って、僕から魔除玉を受け取った。
「なんスか? 『マシマシ君二号』って??」
「説明はあとでするから、タイミングを計って口の中に放り込んでよ! 着火はミディちゃんにお願いできるかな?」
僕が周囲に首を回し、火精霊さんを見つけて叫ぶと、キリリ眉毛でうなずいてくれた。
「とりあえず、駄目元でやってみるッス!」
「お願い!」
ルイスがソラタンの横を抜けて、潜むように大蛇に近づいていく。
僕らの会話が聞こえていたのか、ほかの四人が代わる代わる攻撃を仕掛けて大蛇の注意を引いてくれているんだ。
ニャンコズも休まず攻撃し、ミディ部隊と精霊さんたちも魔法で援護射撃をしている。
僕はソラタンの上で指を組んでお祈りしていた。
ああ、なんとかうまくいって!
だけど大蛇は警戒してか、なかなか口を開けてくれないんだ。
長い胴体と尾を近くの巨木に打ちつけながら、うねりくねってヒューゴやケビンに襲いかかっている。
そのときイザークの放った矢が大蛇の左目を射抜いた!
大蛇が声なき悲鳴を上げてのたうち、大きく口を開いたそのとき。
ルイスが見事な投球フォームで魔除玉を大蛇の口めがけて投げた!
火精霊の子がタイミングを合わせて火球を放ち、見事に大蛇の喉の奥で着火した!
僕はその瞬間に叫んだ!
「土精霊のみんな! 大蛇の口を重力操作で封じてぇぇーーッ!!!」
ポコちゃんを筆頭に、土精霊さんたちが魔法を放つと、大蛇の大きな口が強制的に閉められたんだ!
たとえ大蛇といえど、土精霊のポコちゃんたちのパワーには敵わない!
一瞬のあとに、大蛇の口の中に放り込んだ魔除玉が効果を発揮する。
大蛇の口内で魔除玉がボンと音を立てて破裂し、一気に内部が膨らんで、大蛇がツチノコみたいになった!?
えぇ?
大蛇の口の端や鼻の穴、ついでにイザークが潰した左目からも、紫の煙がモクモクと吹き出している!
ビタンビタンとのたうち回る大蛇を、ニャンコズと父様&従士たちは遠巻きにして、固唾を飲んで見守っていた。
そこでグリちゃんたち植物精霊さんが、ツタを生み出して大蛇の胴体をグルグル巻きにし、近くの木に固定してくれたんだ。
これで大蛇は身動きが取れなくなった!
「ありがとう、グリちゃんたち!」
僕は精霊さんたちに手を振ってお礼を告げた。
みんなもワァーッと両手を振り返してくれたんだよ。
かわいいねぇ!
「さぁ、父様たち! 大蛇は弱りましたよ! やっつけてください!!」
僕が意気揚々と拳を握りしめて叫ぶと、父様たちは微妙な顔をしていた。
「
「どうするんだ、これ?」
ケビンとイザークが首をかしげていた。
外皮に刃が立たず、内部への攻撃は口が閉じているからできないってこと?
むむむ!
「どうしよう! どうしたらいい、メエメエさん!?」
「もっと自分で考えましょうよ!!」
僕の肩口で、メエメエさんが至極真っ当なことを言った。
「このまま時間が経てば、窒息するんじゃないッスか? 鼻の穴に魔除玉を突っ込んでくるッス」
ルイスがつぶやいて、即実行していた。
ついでに自分で所持している、普通の魔除玉を周囲にいくつか放っていた。
すかさず火精霊の子が着火してくれたので、周辺に紫の煙が立ち上る。
これなら魔物は近づいてこれないし、大蛇にとっても苦しい環境になる!
わぁ、何げにひどい手法だけど、いいと思うよ!
父様とヒューゴもうなずいていた。
「魔除玉はこんな大物にも効果がありますからね。さらにハク様の『マシマシ君二号』でしたっけ? 魔物にとっては猛毒と同じではないですか?」
ヒューゴが警戒を緩めずに、そんなことを言っている。
猛毒を持つ大蛇の魔物にとっては、魔除玉が猛毒になるのか。
「ハクよ、『マシマシ君二号』とはなんだね?」
父様に質問されたので、僕は素直に答えた。
「植物園産の魔除草とその精油を加え、虫除草の代わりにチモチモリ草とその精油を加え、さらにカンファオールの葉を混ぜ合わせました! 植物園で繁殖させたボムボム・スライムでノリを作り、仕上げにユエちゃんの強化付与魔法をかけてもらったんです!」
僕の力説に父様たちは顔を引きつらせていた。
「ちなみに『マシマシ君一号』は、着火と同時に爆発するのでお蔵入りデッス!」
メエメエさんが余計な説明をしているよ。
『マシマシ君一号』は危険だから、門外不出だよ!
もはや誰も何も言葉を発しなかった。
父様たちは肩を落としていたよ。
ニャンコズは巨木の枝の上で欠伸をしていたんだ。
かくして、黒赤模様の大蛇の討伐は終わった。
「こいつの皮を切れるだけの剣が必要ですね」
「まったくだぜ。北の御大たちはこいつに出会わなかったんですかねぇ?」
「あれは真冬だったッスよ? さすがに魔物といえども蛇にはつらい環境じゃないッスか? 大森林の北部でもあんまり見ませんよね?」
「まぁ、蛇だからな。この弓ももっと強度が欲しいぜ」
従士たちはそんなことを話し込んでいた。
父様は僕の側に戻ってきて、苦笑していた。
「ハクの魔除玉はたいしたものだな。今回は助かったよ」
僕はコクンとうなずいた。
思えば、これでは従士たちの鍛錬にはならないよね?
余計なことをしちゃったかも……。
僕がしょんぼりしている横で、メエメエさんが父様に話しかけている。
「クロちゃんシロちゃんでも歯が立たない相手でしたから、今回は仕方ないと思います。皆さんの武器の問題点を洗い出せましたし、研究用の皮が手に入ったので善しとしましょう」
「ああ、そうだな。俺たちもまだまだ力が足りない」
父様は顔を引きしめてうなずいていた。
「まずはあの大蛇をマジックバッグにしまってください。確実に死んでいれば入るでしょう? ――――ミディ部隊は頭上の木の実を採取してください! 枝も何本かお願いします!」
メエメエさんは従士やミディちゃんたちに指示を飛ばしていた。
なんか偉そうだね?
頭上の木の実といえば、さっきからマッピング上に見える緑マーカーだね。
あれはどんな効果があるんだろう?
僕はそびえ立つ巨木を見上げた。
よく見れば、さっき大コンドルンと戦った森の木とは、種類が違うみたい。
こっちの木は、少し幹がうねり曲がっているような……?
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