ポコちゃんの気持ち

 ボクのお仕事は堆肥と草木灰を作ることだよ。


 収穫が終わったあとの葉っぱや根っこを、植物の子が持ってきて、それを堆肥に変えていくんだよ。

 なんだっけ?

 微生物の分解だっけ?

 難しいことはわからないけれど、葉っぱが時間とともに、土に帰っていく途中のことだよね。

 土精霊のボクは植物と仲良しだから、堆肥に変わる葉っぱの声が聞こえるよ。

 うれしいって。

 また役に立てるって言っているよ。

 次の命の助けになれることを、喜んでいるみたい。


 草木灰も同じだよ。

 光の精霊に火を起こしてもらって、白い灰になるまで低温でじっくり焼いていくの。

 パチパチいいながら、やっぱり葉っぱは笑っていたよ。

 土に還って、また役に立てるって。


 ボクたちはすべてのものを支える大地の一部なんだ。

 ボクたちは、ただそこにあって、世界を支えていくものなんだよ。



 緑の子と手をつないで、この世界から、外の世界へ飛び出した日。

 輝くお日様のまぶしさに目がくらんじゃった。

 そして大きなお山の峰に驚いて、大きな森に圧倒されたよ!

 なんて大きな世界!

 なんて奇麗な世界!


 そこでボクと緑の子は、大好きなご主人様に出会った。

 本当は、ずっと前から知っているよ。

 ボクらの力の源だって。

 ボクらの存在する理由だって。


 かわいいお顔と声で、初めて名前を呼ばれたときの気持ちがわかる?

「はじめまして、きみはグリちゃんで、きみはポコちゃん。なかよくしてください」

 にっこり笑ってボクらに名前をくれたよ。

 ほっぺが真っ赤になるのを感じたよ!

 体が破裂しそうなほどドキドキワクワクして、うれしさで空まで舞い上がっちゃった!

 うれしい、うれしい。

 大好き! 大好き!!

 ボクたちはご主人様の一部分であることがうれしくて仕方がなかった。



 ご主人さまのお名前は「ハク」というの。

「ハクってよんでねー」と、ピッカピカの笑顔で言われて、ボクと緑のグリちゃんは何度もうなずいたよ。

 ボクらはまだお話しできないけれど、なんとなくハクちゃんと気持ちが通じ合えるの。

 いつも一緒に、ご機嫌に、お庭や畑で遊んでいるのが大好き!


 ボクが土の魔法で畑をどんどん耕していくと、ハクちゃんとグリちゃんはいっぱいほめてくれるの!

 ボクの手にかかれば、どんな荒れ地もフカフカの畑になるんだって、ハクちゃんが喜んでくれたよ。

 ボクは満面の笑みでハクちゃんの抱きついちゃった。

 ハクちゃんは僕をギュウと抱きしめてくれたよ。

 もちろんグリちゃんも一緒だよ!



 あるとき、ハクちゃんに意地悪する人間の子がやってきたよ。

 ハクちゃんのお兄ちゃんたちとは違う子で、『いとこ』って言うんだって。

 その子が大きな体で小さなハクちゃんに意地悪するから、ボクとグリちゃんはいじめっ子の膝裏に、飛び蹴りを食らわせてやったよ!


 ハクちゃんとリオルお兄ちゃんはほめてくれた!


 あのいじめっ子は、それからもハクちゃんをツンツンしたから、アイツはボクらの敵になったんだよ!

 ボクとグリちゃんと、水のクーさんと光のピッカっちゃんと風のフウちゃんとで、敵と戦うことにしたんだ!


 ボクとグリちゃんは、背後からパンチとキックをあびせた。

 ときどき僕は、足元に小さな穴を作って転ばせちゃったよ!

 クーさんはなにもないところで、お水をバシャリとかけたんだ。

 ピッカちゃんは頭上でサンサンと輝いて、暑いのにさらに暑くしてやった。

 フウちゃんは暑い日にアイツの周りだけ無風にしていたよ。


 アイツはブツブツと「なんかいやがる! 俺ばかり狙いやがるぞ!」と、文句を言っていた。


 ボクらがこっそり笑って見ていると、リオルお兄ちゃんが「ほどほどにがんばってね」と言って、ボクらの頭をナデナデしていった。

 ハクちゃんの頭もついでにナデナデして、ちゃっかりラドベリーをもらっていたよ。


 ハクちゃんは僕らにも大きなラドベリーをわけてくれて、涼しい木陰でみんなで仲良く食べたんだよ。

 すごく甘くて、おいしかったねー!


 ハクちゃんがにこにこお日様みたいに笑ってくれたら、ボクらも心がポカポカして、とってもうれしくなるよ。

 幸せだなって。

 あったかいなって。

 またみんなでギュッてして、いっぱい笑いあおうね!


 よーし! 

 今日もがんばって畑を耕すんだ!

 ハクちゃんのお家がある村を、世界で一番豊かな大地にかえるんだよ!


 ボクたちは、みんなで決意したんだから!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る