第17話 ソロ
ガレイドに負債を押し付けたと思っているケビンは、サザンカの冒険者ギルドに入る。
「まだ手続きが終わってないと思うが、パーティを抜けたんだ。リーダーもメンバーに譲った。俺個人はCランクなんだが、Cランクの依頼を受けても報酬はもらえるだろうか?」
ケビンは受付で、もうAランクではないのだから、Cランクの依頼でも報酬が出るだろ?と確認する。
「初めまして。私はラフランといいます。セブンスドレイクのケビンさんですね。まだパーティ変更の申請がされていませんので、このままだとCランクの依頼の報酬をお渡しすることは出来ません。リーダーも代わられたということですので、その方が申請されるか、その方と連絡が取れない状態が十五日経つと、ケビンさんがパーティを離脱したと認められます。リーダーはどの方に代わられたのですか?」
ラフランはギルド規則に則って説明する。
「ガレイドだ。ガレイドは今王都に向かっている最中だ。王都に着き次第、リーダーが代わった申請とパーティメンバーに変更があったことをギルドに伝えるはずだ。ガレイドにはリーダーを任せる旨を書いた紙を渡してある」
「達成報告をする時にパーティを離脱したことが認められていれば、報酬を受け取ることが出来ます。王都まではここからだと遅くても五日で到着しますので、それまでこの依頼を受けるのはどうでしょうか?本来であればパーティ離脱前に依頼を受けることもあまり良くないのですが、この依頼を今まで受けていた方が現在この街を離れていまして、ギルドとして受けていただけると助かりますので、この依頼を受けてくださるのであれば目を瞑ります」
ケビンはラフランから一枚の依頼票を受け取る。
「カエルの討伐か」
「はい。街から歩いても行けるくらい近くにある沼にムラサキガエルが大量発生しています。致死性の毒を持っていることからCランク冒険者を対象とした依頼になっていますが、解毒薬を持っていけばそこまで危険な魔物ではありません。毒を考慮しなければ新人の冒険者でも討伐可能な魔物です。毒袋から解毒薬が作れますので、討伐報酬だけでなく買取りとしてもおいしい依頼です。街にムラサキガエルが入り込むと厄介ですので、受けていただけるとありがたい依頼になっています」
「わかった。この依頼を受ける」
ケビンは、Cランクの中では高額な大銀貨ニ枚という報酬と、毒袋一つにつき銀貨一枚という買取価格を考慮して、この依頼を受けることにする。
「ありがとうございます。パーティ離脱前に報告してしまうと報酬を受け取れませんので、早く終わったとしても、報告には来ないように気をつけて下さい。報告された時に万が一パーティ離脱前だと、報酬を受け取れなくなり、買取り額も一割となってしまいます」
「ああ、わかった」
ケビンはギルドを出る。
「あんた、また勝手なことをして、ギルド長に怒られるわよ?」
ケビンが出ていった後、やり取りを隣で聞いていた受付嬢がラフランに言う。
「あの人、王都でずっと活動してたみたいだから、誰も受けたがらない依頼を任せるにはちょうどいいと思って。訳ありみたいだし……。報告しに来た時に依頼を受注したことにすれば問題ないです」
「ムラサキガエルの討伐は、大変な割に報酬が少ないって理由で誰も受けないのよ?毒を消せる高位の治癒術師でもいればかなり稼げるけど、違うなら解毒薬を使い過ぎれば稼ぐどころか、赤字になるわ。あんなにおいしい依頼みたいに説明して、戻ってきて怒られても知らないわよ?」
「あの人、Aランクパーティのリーダーをやってたみたいです。なので、ムラサキガエル程度の魔物の攻撃は当たりませんよ。そしたらおいしい依頼っていうのも嘘じゃないです。毒袋の買取価格が高いのも本当です。パーティで活動し続けていると個人のランクは全然上がりませんから、Cランクなだけですよ」
「それなら問題ないかもしれないけど、違ったらどうするのよ?」
「何言っているんですか、もう。ムラサキガエルに苦戦する人がAランクパーティのリーダーになれるほど、冒険者は甘い職業じゃないですよ。先輩は考えすぎです。それに、去年大量発生した時は頭を下げて『
ラフランは理由を付けて規則を破っていることを正当化し、先輩受付嬢にファイルを見せる。
「本当ね。王都のギルド職員に大分嫌われているみたいだけど、何をしたのかしら?」
「そこまでは書いてないですけど、リストに載ってるなら言い争いになってもこちらが有利です」
「あんた、いつか刺されるわよ」
先輩受付嬢は、なんだかんだでかわいい後輩の為に忠告だけして、自分の仕事に戻った。
ムラサキガエルの討伐依頼を受けたケビンは、宿屋で部屋を借りた後、ムラサキガエルの毒に効果のある解毒薬を買いに、冒険者ギルドが運営している雑貨屋に向かう。
「ムラサキガエルの討伐依頼を受けることにした。解毒薬を売って欲しい」
ケビンは店員に用件を伝える。
「ムラサキガエルの毒にはこれだな。一瓶大銀貨一枚で、受けた毒の量にもよるが、一瓶で五回は解毒出来る」
「高いな。もう少し安くならないのか?」
解毒薬の価格を聞いて、ケビンは店主に言う。報酬の五割というのは、毒袋の買取で別途儲けがあるといっても流石に高すぎる。
「おすすめはこれだが、小分けにした物も売ってはいる。こっちは一瓶で一回分の量しか入っていないが、その分安くはなっている。銀貨三枚だ。3回までしか使わないならこっちの方が得ではあるが、おすすめはしない。勧めるとすれば、さっきの大きい瓶一つと、この小さい瓶一つだ。こっちの小さい瓶は使わずにもしもの時のために持っておくのが好ましい。弱い魔物といっても、毒は致死性だ」
店員は先程よりも小さい瓶を持ってきて説明する。
「小さい瓶を二つでいい。どうせムラサキガエルごときの攻撃はかすりもしない」
ケビンは店員のアドバイスを聞いた結果、悩みもせずに、予備も含めて小さい方の瓶を二つだけ買う。
「そうかい。なら銀貨六枚だ」
解毒薬を買い準備を終えたケビンは、早速ムラサキガエルを討伐する為に沼地へと向かった。
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