エルフの霧

宿屋の部屋で目を覚ました僕はカーテンを開け、部屋に日差しを取り入れる。


昨日は疲れていたので、夕食を食べて、風呂に入った後、すぐに寝てしまった。


今日は冒険者ギルドでヒール草の提出とスライムの魔石の換金をするつもりだが、もう一つやらないといけないことがあるのだ……


そう思って冒険者ギルドに行こうとしたが、その前にステータス確認をしておこう。


昨日、クエストのついでにスライムを倒していたから何レベルかアップしているのだ。


"ステータスオープン"


心の中で念じると目の前にステータス画面が現れる。


セト・ザルバルド レベル8

HP 120

MP 70

ATK 130

DEF 120

AGI 200


分配可能スキルポイント 720p


獲得可能スキル

基礎剣術Lv2(100p)

収納Lv2(500p)

隠蔽Lv2(500p)

鑑定Lv2(500p)

瞑想Lv1(50p)

疾風Lv1(10p)


スキル

基礎剣術Lv1

収納Lv1

隠蔽Lv1

鑑定Lv1


スキルの種類はどうやら増えていないらしい。


なんでだ……??と思ったがおそらく、単純な戦闘しかしてないからだろう。


モンスターもスライムしか倒してないのだから当たり前だ。


少しがっかりしたが、仕方ない。


気を取り直して、獲得可能スキルの欄をみる。


分配可能スキルポイントには余裕があるので、とりあえず、瞑想と疾風を取得することにした。


「さて、あとはLv2スキルだが……」


一体どうしようか……と思ったが、まだレベル8だ。これからレベルアップしていくにつれて、スキルポイントも増えていくだろう。


だとすれば、今は戦闘に役立つ基礎剣術と手持ちがいっぱいにならないように収納をレベルアップさせておくべきだろう。


鑑定は今のところ、詳細まで調べたいアイテムもないし、隠蔽だって今はLv1で十分だ。


取得したいスキルを決めると脳内にアナウンスが鳴り響く。


――スキル瞑想Lv1を取得しました。

――スキル疾風Lv1を取得しました。

――スキル基礎剣術Lv2を取得しました。

――スキル収納Lv2を取得しました。


「よし!ステータス確認もできたことだし、早速ギルドに行くか!」


朝食を食べ、準備を終えた僕は、そう言って宿屋を後にするのだった。



セトが自室でステータス確認をしている時の一階の料理場での話だ。


「ルリエン、パンを焼いといておくれ!」


「はい、わかりました。」


マチルダの声が料理場全体に響きわたる。


ルリエンは14歳の女性だ。


髪の毛は薄い黄緑色で、細くて先が鋭い耳、しなやかな長身はその種族を純血のエルフと断定するに相応しい。


ルリエンは捨て子であった。


赤ん坊の時にノーマの町の南門に揺籠ごと捨てられていたルリエンをマチルダが見つけて以来、14歳になる今までこの宿屋で育ってきたのだ。


ルリエンは自分が捨て子であることに気づいていた。


故に未だに敬語が抜けないのである。


揺籠には丁寧に刺繍が縫ってあり、そこには"ルリエン"と書かれていたのだ。


これをみたマチルダは赤ん坊の名前をルリエンと名付けたのである。


子供の頃から宿屋の手伝いをしていたルリエンは慣れた手つきでパン生地を窯に入れていく。


パンが焼けると窯から出し、丁寧にお盆に置いていく。


ルリエンには夢があった。


それは自分の正体を知ることだ。


何故自分は捨てられたのか。


自分は一体何者なのか、どうしてここにいるのか。


旅は何かを感じるきっかけになると、ルリエンはそう想っていた。


そして、その想いは日に日にルリエンを満たしていた。


ルリエンがそんな想いを抱いていることもマチルダは気づき始めていた。


いや、実際予想していたのだ。


いつかこうなるであろうことを……


「ルリエン、後で話があるから、朝食の準備が終わったら私の部屋まで来な。」


マチルダがそう言うと、ルリエンは


「わかりました。」


と返事をしてまた朝食の準備を再開するのだった。




僕は冒険者ギルドにつくと、受付まで歩いていく。


「こんにちは、リザーレさん」


「あっ、こんにちは、セトさん、今日は何か御用ですか?」


そう言われると、僕はクエスト用紙を渡しながらこう言う。


「薬草採取クエストの報酬を貰いに来ました!」


「クエストの報酬受け取りですね。わかりました。では、採取したヒール草を提出してください。」


そう言われると収納からヒール草を取り出していく。


どんどん出てくるヒール草。


200本をすぎたあたりから、リザーレさんは驚きを隠せていなかった……


結局600本のヒール草を提出することになった。自分でも正直驚いている。


「ノーマの町は小さな町ですから、ステータス適性を持った冒険者さんも殆どいなくて……

なかなかこの規模の採取を目にするのは珍しいんです。」


そう言いながらも明らかに驚いた様子だ。


どうやらステータス適性を持つものとそうでないものには身体能力的にかなりの差が開く様だ。


だから、採取量にも影響が出るのだろう。


「ヒール草600本確かにいただきました。では報酬の12000ルピーです。」


「ありがとうございます。」


そう言って報酬を受け取る。


「それと、セトさんはGランクの報酬を10回クリアされましたので、Fランクに昇格可能ですが、昇格しますか?」


そうか、僕は今回でかなりのヒール草を提出したから、一度に10回の報酬を、クリアしたことになったのだ。


「はい!もちろんです。」


「では、冒険者カードを貸してください。」


そう言われ、カードを手渡す。


少し間が開く。


「更新が完了しました。これでFランクに昇格です!」



新しいカードを見るが特に変化はない。


「ありがとうございます!」


そう言って受付をあとにしようと思ったが……


「あ、あと、もう一つ宜しいですか?」


「はい!どうされましたか?」


「実はスライムの魔石なんですが、換金するといくらになりますかね?」


そう言って収納からスライムの魔石を20個ほど取り出す。


スライムの魔石だと1個5000ルピーになります!全部換金されますか?」


「はい!」


魔石を手渡すと報酬として、10万5000ルピー渡された。


ヒール草の提出と魔石の換金を終えたので、冒険者ギルドを後にする。


次はあそこに行かないといけない。


そう思って、"ある場所"を目指すのだった。



















 











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果てなき世界へ 光の海 @bunnmei0

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