スキル取得

冒険者ギルドにつき、看板を眺める。


僕はGランク冒険者なので、Gランククエストしかできない。


「えーっと、Gランクのクエストは……これか!」


看板の端の方にポツリとあったそのクエストは薬草採取だった。


「薬草採取か……」


モンスター討伐クエストをしたかったという思いはあるが、まぁいい。


何もクエストだけに集中しなければいけないわけではない。


クエスト関係なしにモンスターを見つけて狩ればいいだけの話だ。


そう気を取り直して、薬草採取クエストの詳細を見る。



「薬草採取 難易度1」


クエスト内容

ノーマの町の周辺に生えている薬草の元になるヒール草を50本採取する。

クエストをクリアする為には採取したヒール草をギルドに提出する。


報酬

1000ルピー


クエスト用紙の説明の下にはヒール草の絵が書いてあるが、こんなので区別できるのか?……


と思いつつ、とりあえずやってみることにする。


ノーマの町の北門を出ると、あたり一面に草原が広がっていた。


日差しが眩しい、そよ風で草が揺らめいている。


一瞬景色に見惚れるが、すぐにヒール草を探し始める。


クエスト用紙と目に入った草を何度も見比べながら探すが、一向に見つからない。


「やばい、このままだと手ぶらで帰ることになるぞ……」


そう焦り始めた時、少し先に一匹のノーマルスライムを発見する。


「お!あれは……スライムか……?」


ヒール草はまだ一つも見つかっていない。


しかし、僕は目の前に現れた初めてのモンスターに夢中になる。


「初戦闘はお前か。」


粘り気のある青い体を持ち、表面がヌルヌルしている。僕はブロンズソードを構える。


一瞬、間が空いた後、僕は地面を蹴って走り出す。


スライムが驚くほどの速さで僕に近づいてくる。


いや、逆だ。


僕が今までとは比べものにならないスピードでスライムに接近しているのだ。


スライムの前に来た瞬間、ブロンズソードを両手で構え、上から真っ直ぐ振り下ろす。


力いっぱい振り下ろされたその刃はスライムを一刀両断にした。


ゼリー状のスライムの体液が周りに飛び散る。


それは蒸発し、やがてスライムは完全に消えていった。


後には小さな青い魔石が残っていた。




――1レベルアップしました。


アナウンスが脳内に響く。


ステータス画面を開く。


  

セト・ザルバルド レベル2

HP 20

MP 15

ATK 25

DEF 20

AGI 45


分配可能スキルポイント 100p


獲得可能スキル

基礎剣術Lv1(10p)

疾風Lv1(10p)

収納Lv1(10p)

隠蔽Lv1(10p)

瞑想Lv1(50p)

鑑定Lv1(50p)


スキル なし




分配可能スキルポイント……??


なんだそれ、と思いつつ、注視していると、またもや説明が浮かんでくる。


分配可能スキルポイント→対象者がレベルアップした時に獲得するポイント。このポイントを使用することで、新しいスキルを取得したり、スキルのレベル上げをすることができる。



なるほど。


おそらく、この分配可能スキルポイントというものを使用して、獲得可能スキルを取得するのだろう。


そう考えた僕は早速なにかスキルを取得することにする。


「うーん、にしてもどんな効果を発揮するかよくわからないな……」


そう思っていると、スキルの説明が浮かんでくる。


基礎剣術Lv1→基本的な剣術の型を扱えるようになる。レベルが上がるごとに洗練された剣術を使用できるようになる。片手剣使用時発動。片手剣専用。


疾風Lv1→1分間の間MPを50消費する代わりに、AGIの数値が1.5倍になる。任意発動。


収納Lv1→少しのものを収納することができる空間魔法。収納した物は劣化しない。消費MP0。任意発動。


隠蔽Lv1→第三者からの鑑定を阻害する。HP・MP・ATK・DEF・AGIにおいて効果発揮。消費MP0。常時発動。


瞑想Lv1→10分間目を瞑り、呼吸を整え、精神統一を行う。全ての状態異常と体力を完全回復する。消費MP100。任意発動。


鑑定Lv1→対象の名称を認識することができる。消費MP0。任意発動。



まずは基礎剣術。


今は片手剣主体で戦闘しているからこれは外せない。


次に疾風。


今以上にスピードアップできるのはメリットしかないが消費MPが50というのが気がかりだ。


僕のMPは15。


これだと一度も発動できない……


「あはは、残念だが疾風はあとまわしにするか……」


今度は収納。


これは絶対必要だな。


薬草採取にも役に立つし、今後の冒険の為にも必須だろう。


残りは隠蔽・瞑想・鑑定か。


隠蔽を取る必要は今はなさそうだけど……


うーん、迷う。


正直、今の僕のステータスを鑑定されて何になるんだって話だとは思ったが、今後の為にも一様取っておくか。


瞑想は消費MPが多すぎるし、何より10分間もの間行動制限がかかるというのはかなりいたい。


今はまだ取るべきではないだろう。


最後に鑑定だ。


これは言うまでもない。絶対取るべきスキルだ。


一通りスキルについて考えた後、結局、基礎剣術・収納・隠蔽・鑑定を取ることにした。


全部で80ポイントの消費だ。


――スキル基礎剣術Lv1を取得しました。

――スキル収納Lv1を取得しました。

――スキル隠蔽Lv1を取得しました。

――スキル鑑定Lv1を取得しました。




「さて、スキルも取得したし、早速鑑定でも使ってみるか!」


と思ったが、何やら忘れているような……


そうだ!スライムを倒した時に出てきた魔石だ!


そう思って、地面に転がっている魔石を手に取る。


透明感のある宝石のようなそれは、太陽光を反射して青く光り輝いていた。


魔石はギルドに提出するとお金と交換することができる。


スキル、収納!


心の中でそう念じると、目の前に異空間が現れる。


その中に魔石を放り投げると、異空間は勝手に閉じてしまった。


さて、魔石もしまったことだし、今度こそ、ヒール草採取をするか!



スキル鑑定を使用し、あたりを見回す。


様々な種類の草の名前が一目でわかる。


ソソク草、バース草、キュウセイ草……


「あったこれだ!」


すぐにヒール草を見つけた僕は腰にあるノーマルダガーで、ヒール草を根本から切りとる。


「ふぅ……やっと一本見つけたぞ……!」


セト・ザルバルドはヒール草一本で喜ぶおめでたいやつだった……


その後は鑑定を使用して、どんどん集めていく。


ヒール草を見つけてはダガーで採取し、収納に入れる。


それを繰り返している内に、だんだん日が暮れてきた。


夕日が草原を照らし、黄金色に輝いている。


途中20匹ほどスライムに出会ったが、レベル2+スピード型の僕の敵ではなかった。


瞬殺し、すぐに薬草採取に戻る。


何本集めたかわからないがとりあえずこの辺でやめとくか。


「今日は疲れたし帰ってすぐに寝よう。」


そう呟くと、僕は帰路につくのであった。

















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