第3話
首輪をつけられて、その上で告げられた『監禁』という言葉。私はその真意がわからなくて、固まってしまう。
「せなねぇはわたしに監禁されてしまったのです。自分の意思で何かしようとかは、もう許されませんっ」
それが、ヒナの言う、監禁。
ヒナがそんな事を言うなんて、そんな事をするなんて、信じられない。
けどヒナはいつもより112%ほど頬を赤らめて、呼吸も荒く、興奮している事からヒナの発言が真なるものであることが理解できる。
そんなの、嘘だ。
「……監禁って……なに?」
「もう、せなねぇは他の人と触れ合ったりすることは出来ません。わたしがお世話するから、わたしだけをみてね」
「……それって、もしかしてなんだけど、私がヒナのそばを離れて何処か行くかもって思ってるって事? 嘘だよね? 今まで私が、どれだけヒナを愛してきたかなんてわかってるはずだよね? なのにわざわざ首輪までつけるなんて、私の事をやっぱりしんじてくれないんだ。でも、そんなわけないよね。ヒナはわかってくれてるはずだもんね。だからこれは嘘、嘘、うそうそうそうそ」
「あ、あ、違うよう。……わたしはせなねぇを守りたいのです!」
目の前が真っ暗になりそうな私に、ヒナがそんな事を語ってくれる。守りたい、だなんて、嬉しい。
でもどう言う事だろう。可愛いヒナを私が守るならともかく、ヒナが私を守りたいだなんて言うのは、少しチグハグに感じる。
うぅん? と悩んでいると、ヒナは恥ずかしそうに口を開いて、理由を聞かせてくれる。
「せなねぇは……周りの人達からとても慕われてる、よね。アルバイトでも、後輩の方から何度も頼りにされてるのは見てるから」
「そんな事ないと思うけど……私はヒナの事しか考えてないし」
「そんな事あるよっ! そうやって自覚がないのも、わたしには不安で。……だから、悪い虫が寄ってこないように、わたしはせなねぇを独り占めしますっ!」
独り占め、と言われて、ようやく理解が追いついた。ヒナは私の交友関係に思うところがあって、それで焼きもちを焼いてしまったんだ。
やっぱりヒナは可愛い。
そう言う事なら私も、大人しく監禁されることにしよう。
ふんふんと少し興奮したヒナの頭を撫でて、そうしてようやく立ち上がる。
とりあえず監禁されたし、ご飯作らなきゃ。
「そういうことなら、わかったよ。じゃあ、そろそろ夕飯作るね」
「だ、だめ! ご飯もわたしがお世話するの!」
お世話します、と言われても、ヒナはあまり自炊をしないはず。日頃は私が作るか、あるいは作り置きをしているし、彼女の家庭科の成績も3が限界だし。
「お世話ってヒナ、料理しないよね?」
「今日のところは、その、お弁当を買ってこようかと……」
「……それ、ヒナは何を食べるの?」
「わたしも、同じものを食べるつもり、だけど」
ヒナがお世話してくれるというのは、すごく嬉しい。けど、お弁当?
栄養も偏りやすいし、何より誰が作ったのかわからないものをヒナの口に入れる?
そんなのはだめ。ヒナのためにならない。
「よし、じゃあお買い物行こうか。よく考えたら、挽肉とか買わないとね」
「え、あ、あれ? わたしがお弁当を買ってくるよ……?」
「私が作るよ、いつも通り。レストランとかならともかく、出来合いの弁当なんかヒナには食べさせたくないし」
「でも、せなねぇは監禁されてるので、お外には出てはいけないのでは……?」
「続きは帰ってきてからにしようね」
「は、はいぃ……あれー?」
挽肉、レタス、ミニトマト、ヒナの好きなイタリアンドレッシング……メモをとった方がいいかな?
とりあえずまた靴を履いて、ヒナと一緒に買い物に行こう。
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