第45話 イキリチキン
「――だから、あんまり警察は当てにできないんだよね……」
「うわぁ……ここってそんなヤバい街だったの?」
唯人は街の警察事情について話した。
聞き終わった陽菜は顔が引きつっていた。そして、ダラダラと動いている警察たちを睨んだ。
「女の子の命がかかってるんだから、もうちょっとやる気出しなさいよ……!」
「まぁ、今回の事件も真相を掴んだところでギルドがもみ消す可能性があるから。積み上げた努力が無駄にされるとなると、やる気もでないんだろうね」
「ギルドが関わってる可能性もあるの?」
陽菜は不安そうに自分の体を抱いた。
「もしそうだったら、どうしようもないじゃない……」
「その時は俺がなんとかするから。大丈夫」
唯人は遠くを眺める。
この街の中心には電波塔が建っている。世界一位の高さを誇る。街の観光スポットだ。
未来では『とある事件』によって倒壊していた。
「分かった。唯人を信じるわ」
陽菜はポケットからスマホを取り出した。
「誘拐に関わってそうな男子から調べるのよね?」
「うん。現状ではそれくらいしか、手掛かりがないと思う」
「じゃあ、私のお手柄ね」
陽菜はスマホを見せてきた。
映っていたのは一枚の写真。荒井が、秤と桐華を背負っている。
「荒井さん……⁉」
まさか、荒井が誘拐に関係しているとは思わなかった。
性格が合わないとは思っていたが、犯罪に手を染めるとは。
「なに、知り合い?」
「……少しだけ因縁があるかな」
唯人と荒井には縁がある。もっとも悪縁だが。
嫌がらせだと感じたこともある。向こうが手を出してきた事もあった。
だが、荒井と桐華は仲が悪いわけでもなかった。
どうして、誘拐なんてしようと思ったのだろうか。
「とりあえず、荒井を追いかけようと思う」
「じゃあ、友だちから情報集めてみるわ。SNS時代バンザイね」
「俺も友だちに協力してもらうよ」
「……唯人って友だち居るの?」
「……一人だけ」
唯人はスマホを取り出すと、佐藤に電話をかけた。
数コールほどで通話が繋がる。
『おう、唯人から電話なんて珍しいな?』
「ごめん。ちょっと協力して欲しいことがあって」
『いいぜ』
「まだ、内容も言ってないけど……」
電話の向こうから、笑い声が聞こえた。
なんとなく、佐藤がドヤ顔をしている姿が思い浮かんだ。
『俺の予想だと、唯人は遠慮して人にお願いとかできないタイプだ』
「まぁ……そうかも」
『そんな奴がしてくるお願いは、よほど切羽詰まってて友人知人に関係することだ』
佐藤は声のトーンを落として続けた。
『話くらいは耳に入ってる。秤ちゃんと桐華ちゃんの件だろ?』
「うん。助けてくれるか?」
『任せとけ。何かしら手掛かりがあるんだろ?』
「それが――」
唯人は荒井のことを話す。
話を聞きながら、佐藤は低い声で相槌を打っていた。
『あのイキリチキン野郎……そんなことまでやらかしたのかよ』
「い、イキリチキン野郎?」
『無駄に髪をツンツンさせて、鶏のとさかみたいな頭してるだろ?』
「ぶふぉ!?」
唯人はつい噴き出してしまった。
荒井の髪型と、鶏のとさかがキレイに一致した。
確かに似ているかもしれない。
『とりあえず友だち当たってみる。もしかしたら、アイツから連絡貰ってるやつもいるかもしれない』
「……ありがとう」
『気にすんな……桐華ちゃんにはこないだのお礼が残ってるからな。唯人の前でバニー姿をさらしてやる……!』
「あぁ、うん」
桐華は無事に助けられても、試練が立ちはだかりそうだ。
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