第27話 地雷系
「唯人、今日はよろしくな」
駅前に建てられた変な近代アートの前に、唯人たちは居た。
とりあえず集まったのは男子たち。
唯人、佐藤と共に、別のクラスの鈴木がやって来ている。
「唯人くんとは初めて喋るよな? 今日はよろしく」
「よ、よろしく」
唯人の胸がドキドキと騒いでいた。
今日は鈴木を始めとして、知らない人たちと過ごさなければならない。
なんとか上手いことやり過ごさなければ。
「女の子たちは店で待ってるから、さっさと行こうか」
佐藤が先導して歩き始める。
唯人は生まれたてのカモのように、その後を付いて行った。
合コンとは言っても唯人たちは高校生。
お酒を飲んで騒ぐわけもない。
向かった先は、ちょっとお高めのファミレスだ。
佐藤はファミレスの六人掛けの席に向かう。
すでに三人の女子が集まっていた。
片方の席に、まとまって座っている。
「おまたせー」
「ちょっとー、遅いんだけど―?」
「悪い悪い!」
佐藤が女の子の一人と話している。
彼女が女子側を集めた人なのだろう。
「ほら、二人とも座ってくれよ」
「りょ」
「あ、うん」
佐藤に勧められて、女子の対面席に座っていく。
(凄いなぁ。フリフリの人が居る)
唯人の対面に座っているのは、ひらひらの付いたピンクの服に黒いスカートを履いた女子。
いわゆる量産型地雷系だ。
ふと、地雷女子と目が合あった。ニコリと微笑みを向けられる。
見ていたのがバレると、なんとなく気まずい。
唯人は目をそらした。
「じゃあ、まずは自己紹介でもしよっか」
その言葉を皮切りに、女子側の自己紹介が始まった。
順々に名乗って行って、最後に地雷女子だ。
「ひなは『
陽菜はにこにこと笑顔を浮かべながら、甘い声で自己紹介をした。
人当たりの良さそうな雰囲気は、桐華にも似ている。
(うーん? なんか、変な感じがする……)
桐華にも似ているのだが、何かが違う。
しかし、唯人にはその違和感の正体は掴めなかった。
気のせいだろうと流してしまう。
「じゃあ、今度は男子側の自己紹介だな」
佐藤の言葉に従って、男子側も自己紹介。
唯人も無難に切り抜けることが出来た。
これで全員が名乗ったことになる。
女子の一人が口を開いた。
「男子の皆は、趣味とかあるの?」
「俺たちはバスケだな。中学のころからやってるから」
佐藤が鈴木と肩を組みながら、さわやかに笑った。
「高校でもサークルに所属するつもり」
探求都市にある高校では、部活動は盛んではない。
そもそもダンジョンに潜るために、時間が無い者が多いからだ。
その代わりに、同じ趣味を持つ人同士が集まるサークル活動が盛んだ。
「唯人くんは?」
皆の視線が唯人に集まる。
困った。とても困った。
唯人には合コンで言えるような、おしゃれな趣味が無い。
唯人が悩んでいると、佐藤が助け舟を出してくれる。
「唯人は読書だよな? いつも読んでるし」
「あぁ、そう……かな」
だが、読書と言う回答にもリスクがある。
「へー、どんな本が好きなの?」
この質問が怖かったのだ……。
唯人が呼んでいる本は、主にラノベだ。
女子の質問の意図はどんな『カッコいい本』を読んでるのか。
たぶん、ミステリー小説とか期待してそう。
(『シャーロック・ホームズ』とか答えとくかな『バスカヴィル家の犬』なら読んだことあるし……でも、あんまり内容憶えてないんだよなぁ)
読んだのは中学時代の話。
唯人の体感で言えば、十年近く前だ。
細かく覚えているわけがない。
詳細を突っ込まれたり、この中にガチのシャーロキアンが潜んでて、食いつかれたら困る。
悩んだ末に、唯人は素直に答えることにした。
「ら、ラノベとか……最近読んだのは『とある魔法学校の悪役に転生してしまった件』とか……」
「あ、あぁ……そっち系ね……」
露骨にがっかりされた。
気まずい雰囲気が流れる。
だが、そんな空気を断ち切ってくれる人が居た。
「あ、ひなもアニメなら見たよぉー。面白かったよねぇ」
陽菜はにこにこと笑いかけてくれた。
(て、天使だ……!)
まさに地獄に仏。
陽菜が空気を変えてくれた。
唯人は救世主である陽菜を、心の中で拝んで置く。
陽菜はさらに続ける。
「唯人くんはオタク系なんだ?」
「まぁ、どっちかって言うとそうです」
オタクやゲーマーを名乗れるほど、それらに詳しいわけでもない。
だが、流れ的に肯定しておく。
「スマホゲームとかもやる感じかなぁ?」
「少しくらいは」
「ひなもこないだ課金しすぎちゃってぇ。唯人くんは最高でどれくらい課金したことある?」
「……十五万くらい?」
正確にはスマホじゃなくて、パソコンでプレイしていたのだが。
気に入ったキャラが完凸するまで、ガチャを回したことがある。
正直言って、ちょっと後悔している。
「すげぇな!? どっからそんな金が出てきたんだよ⁉」
「中学時代にダンジョン探索を手伝ったりしてたから、貯金はある方なんだよね」
それを聞いた陽菜の目が、ギラリと輝いた気がした。
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