第9話   目が覚めたら……

 ティランが目を覚ますと、エリサが顔を覗き込んでいた。


「大丈夫?ティラン?」


 聞きなれたエリサの声と喋り方だ。

 嬉しくなって、エリサを抱きしめてしまった。


「「「何するのよ!!」」」


 エリサはティランの頬を思い切りつねる。

 痛いけど嬉しかった。

 この暴力少女は、はねっかえりのエリサの証拠だ。


 すると、後ろの方から父のミルドランが、羨ましそうな顔をして言ってきた。


「ティラン君、父上にも抱かせて欲しいですよ~」


 こういう父なのだ。エリサから離れて、父のもとへ行った。

 銀の森の自室の部屋だったが、周りには守役のジェド、妹のセシリーアンもいた。


「父上、母上はお帰りですか?」


 ティランは、疑問をぶつけた。

 一同は沈黙した。

 一緒に母のカタリナを捜すために旅をしたエリサが帰っているという事は、

 旅は終わっているという事だ。

 夢の中のエリサも言っていた。

 旅はとうに終わっていると…


 その中で口を開いたのは、エリサだった。


「奥方様は、北の人達のために今しばらく残るそうよ」


「北の地?」


「大山脈の向こう側! 奥方様は、闇の神様に選ばれてしまったのよ。

 北の地方が少しでも豊かになる様にと、少しでも自分を知ってもらいたくて、協力をお願いされたそうよ」


 エリサは一気に話した。

 エリサの言う事に嘘はない。

 エリサ自身が精霊使いなのだ。

 精霊は嘘が付けない。

 だから、エリサも嘘を嫌っていた。


「あなたは誰と山脈を越えたのですか?」


「ティランのフリをした同行者よ」


「僕のフリをした同行者って誰です?」


 エリサは、耳元で囁いた。


「光の神様」


 ティランは、もう一度倒れそうになった。

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