第5話  ヴィスティン王国の崩壊 (4)

 突然、エリサが消えた。

 いつの間に?

 先ほどまで、一緒に母上の指輪とネックレスを見ていたのに?

 アルテア王国に行こうと言っていたのに?


 突然、目の前が暗くなった。発作か?

 こんな時に……

 嫌になる、この身体。

 いつも、肝心なところで倒れてしまうのだ。


 再び目を開けると、まだ夢を見てるのか、いろいろな場面が写っていった。


 風の奥方を無意識に送ってしまったのだろう。

 ヴィスティンの王城が、崩れていた。

 そして、恐ろしい顔の神を祀っていたことが分かり、ティランもビックリした。

 ロイルの神官が、ヴィスティン王を責めていた。


 視覚が引いて、ディナーレの街全体が見渡せた。ディナーレの街は、グルリと包囲されており掲げていた旗から、神殿の持っているレフ・クライヴ騎士団だと分かる。

 ヴィスティン王国は、大国だが自国の軍隊を持っており、今まで数多の国の領土を侵略をしてきた過去があった。

 ロイルの神殿が、介入する前には撤退しているので、なかなかしっぽを掴めないでいた。


 今回は、いつもと勝手が違うようだ。

 王城が崩れて、多分邪神の信仰がバレたのだ。


 再び、場面が変わる……


 エリサだ。

 エリサが、レフに叱られていた。

 レフのことは、よく知っていた。

 守役のジェドの親友で何度か、屋敷にも来て面識があった。

 エリサは、レフの娘ということか?


 また場面が変わった。

 銀色の世界で声だけが聞こえた。


『そなたは、ここまでだ。後は我に任せよ』


 聞いたことはなかったが、何処か懐かしさのある声だった。


「「「若長!!」」」


 ふと気がつくと、ディナーレの街中にいた。

 エリサの声で我に返った。


「どうして、急にいなくなったの? 捜したわよ」


 見れば、王城は崩れている。

 白昼夢を見ていたのか?


「アルテア王国に行くのでしょ?」


 エリサは、何事もなかったように言った。

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