第4話  ヴィスティン王国の崩壊 (3)

 ディナーレへは、蒸気汽関車で、大陸の東部から中西部にかけての移動で、長くかかると思われた。

 が、ティランは、汽車に乗り込むと急に眠たくなり、ほとんどの時間を寝て過ごしてしまったようだ。

 エリサは、初めて見る車窓からの景色にはしゃいでいた。


「若長、起きて。ディナーレよ」


 エリサに揺さぶられて起こされた。

 おかしい……

 この大陸鉄道は、道中四日はかかるものなのに?


「僕はずっと寝てましたか?」


「ええ、時々、用を足したり、ご飯を食べるとき以外は、ずっと寝てたわ。おかげで私は、一人ぼっちのつまらない汽車旅行になったわよ」


 エリサは、プンスカ怒っていた。

 感情が、ストレートに現れる性格のようだ。表情が、くるくる変わるので見ていて飽きない。


「すみません」 


 ティランは、言い訳をせずに謝った。

 言い訳をすれば、多分倍返しの説教が飛んでくるだろう。

 身近にそんな、叔母がいたから分かることだ。


「若長、これからどこへ行くの?」


「その、髪飾りを買ったと言う店をあたりましょう」


「それなら、表通りの露店だそうよ。

 まだやってるかしら?」


「では、早く行ってみましょう」


 2人は、走り出した。

 ティランは、エリサに追い付けなかった。

 当たり前だ、年中熱と喘息の発作に苦しめられて、ベッドの上から起きていられるのは、月に3分の2程だ。

 でも、今は、走っても苦しくなかった。

 母上の手掛かりが見つかった以上、早くそれに辿りつきたかった。


 ディナーレの王宮近くにアクセサリーを扱う露店を見つけたのは、わりと早かった。

 そこには、まだ、母のネックレスやら指輪を売っていた。

 店の主人にどこから仕入れたものかと聞いたら、西域の古王国、アルテア王国から仕入れたと言う。


「では、アルテアに行きましょう」


 とエリサに声をかけた時、彼女の姿は何処にもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る