お出掛けシリーズ

第19話

なんだかんだ言って先輩との映画は楽しかった。

というより人と話すこと自体そこまで多くない僕にとっては誰かと遊びに行くこと自体が久しぶりだったし。

「また遊びに行きたいなぁ...」

そうはいっても先輩は多忙な身。帰宅部で何もしてない僕と違って人望もある先輩はそこまで暇じゃないのだろう。

まぁそれは仕方のないことではあるし、むしろ先輩がみんなに好かれていると考えれば悪い気はしない。

「だからこそこっちからメッセージ送るのが怖いんだよなぁ...」

あの時は先輩から誘われた。僕は基本的に遊びに行くときに1人で行ってたからか誰かを誘うことに慣れてない。

もし断られたら...って考えるだけでなけなしの勇気はどこかへ飛んで行ってしまう。

言ってしまえば小心者の臆病者ということになるかもしれないが。

世の中の陽キャたちはすごいなーと思いつつまだ朝も早いのでベッドでごろごろする。

センパイと遊んだのが先週の日曜日。

そして今日も日曜日。つまり一週間空いているわけだが互いに一度も連絡を取っていなかった。ラインの最後のやり取りも先週の日曜日のまま。

正直に言えばあの時のお出かけで僕は楽しかったけども先輩は楽しくなかったんじゃないか、先輩にもしかしたら嫌われてしまったのではないかと少し不安になる。

まぁ、女性と二人きりで遊ぶのとか中学入ってからほとんどないからなにかやらかしていたとしてもきっと僕には理解ができてないだろうし。

そう思いながらベッドで悶える。

ニチアサを見るために朝早くから起きてしまう癖がついてしまっているため無駄に早い起床。そのせいでこんなにももやもやしながらニチアサが始まるまでの時間を待ち続けることになるとは...。

早起きもいいものじゃないなと思いつつ体を起こしてスマホの通知を見る。

相変わらず先輩からのメッセージは無かったが珍しく家族と公式以外からメッセージが来ていた。

澪『陸人さん今日は暇ですか?』

つい先日知り合った少女からのメッセージ。届いていたのは5分前。

既読を付けてメッセージを返す。

『暇だけどどうしたの?』

メッセージを送り返して時間も空いていたからすぐにはメッセージは帰ってこないだろうと思ったらすぐに既読がついた。

「既読着くの早ッ!...最近の若い子は怖いわぁ...」

その最近の若い子に陸人も入っているのだがここでは割愛。

スマホをゲーム機兼多機能目覚ましとしてしか使うことのない陸人にとっては常日頃からスマホの通知をオンにしてメッセージを送りあう習慣がない。たいしてこういう女子たちはどちらかといえばゲーム機という扱いよりもSNSをするためのものという認識が強いのだろう。

既読がついたようですぐにメッセージが来るのかと思って陸人もラインを開いたまま待機しているが一向にメッセージが来ない。

もしかしてこれって一人ぼっちで予定のないなんてかわいそうですねってだけのメッセージかと思ったが遠山澪という人間性ではそれはあまり考えつかない。

............真昼なら喜んでやるだろうが。

だがメッセージが来ると思っているのにこないというのもまた気になってしまう。

そう考えているうちにメッセージが届く。

澪『もしよかったらなんですけどカフェに行きませんか?』

思っていたよりも短い文章。

それでも彼女の人間性的に勇気を出した一言なのだろう。

それを無下にするのも気が引ける。

『わかった。何時にどこで待ち合わせする?』




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