第17話
「りく君?何してたの?」
まずい、非常にまずい。
ものすごく久しぶりに先輩と仲直り...というわけでもないけど話して、遊ぶ約束までしておいてそのまま違う女の子三人とご飯を食べてたとかちょっとまずいかもしれない...。
「ちょちょ、陸人」
真昼に服を引っ張られ耳元でささやかれる。
「陸人が待ち合わせしてた人ってこの美人さん?」
「そうだけど...」
「は!?マジで言ってるの?」
「まぁ、その反応が正常だと思うよ...」
少なくとも僕が真昼の立ち位置だったらおんなじことを言っているだろう。
「それで?りく君は私が待ち合わせの場所に来てる間その子たちとなにしてたのかな?」
笑顔のはず、笑顔のはずなのになぜか圧がものすごい。
きっとここで下手な返しをしたら終わるんだろうなー僕の人生と思いながらもはや僕に許されたのは神に祈ることと現実逃避のみ。
「外で待つのもしんどいかなぁ?って思ってお店で時間つぶしてたらたまたま顔見知りに出会って話してただけだよ」
「ほんとに?」
「さすがにこの状況で嘘をつけるほど僕の肝は据わってないかなぁ?」
「そっか...顔見知りにしては距離がものすごく近い気がするんだけどなぁ?」
「えーっと...」
何だろう...。怖いの一言しか出てこない。
語彙力が消えてる。
「あー、えっとお姉さんって陸人さんのお知合いですか?」
遠山さんがこの空気をどうにかしようと質問してくれてるけどもごめん、多分無理だと思う。
「知り合いというか幼馴染だね。それも家もお隣さんの赤ちゃんの時から一緒にいたんだよ?」
「まぁ、三年くらい疎遠でしたけどね」
「何か言った?」
「いえ何も言ってません」
今すごい睨まれた。余計なこと言うなって顔してた。もはや言葉にされなくてもわかる。これが以心伝心ってやつなのか?
......あんまり嬉しくないなこの以心伝心は。どっちかといえば怖いわ。
「それで?私は今自分の恩人と話してただけっすよ?何か問題あるんですか?」
やめて真昼!火に油を注がないで!
多分先輩は久し振りに話して遊びに行こうとしてたのにいざ待ち合わせ場所に着いたら僕が他の人と遊んでる様に見えてそれに嫉妬してる類のやつだから!
「ふーん、私とりく君は昔っからの幼馴染で色んなことを一緒にしてきてるんだからいっぱい助けられてるし助けてきてるんだよ?だから君よりも私の用事を優先してもいいよね?それにこっちは何日も前からの約束なんだから」
あー、そういえばこの人に助けられたことがないわけじゃないし昔も色々あったんだけどどっちかといえば僕が助けてばっかで先輩が面倒事持ってきてた気がするんだけど...。
それに最近あった痴漢関係でちょっと頭がいっぱいだったわ。衝撃デカすぎたもん。
まぁ、それはさておきここは僕が原因だと思うから僕がどうにかしなきゃ。
「先輩、そろそろ映画始まる時間じゃないんですか?」
「あ、ほんとだ。あと30分しかない!」
相変わらず抜けているところが多い様で。
「あと、真昼。遊びに行くんならまた今度誘ってくれ」
「そーだね。連絡先も手に入れたことだし」
「ちょっ、どういう...!」
ちょっと先輩は黙ってて。
「それじゃあお兄さん。また」
「陸人っちまたねー!」
「...じゃあまたね陸人!」
「それじゃあまたな」
手を振って女の子3人組を見送る。
さてと、ここからが問題だろうなー。
「じゃあ、りく君?映画館に行きながらお話聞くから教えてもらえる?」
残念ながら逃げられなかったようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます