第11話 先輩と電車待ち

「ちょっとトイレ行ってきていいですか?」

「あ、うん。いいよ」

電車はあと10分程度で来るけどもう話す話題が正直尽きてきた。

いや、まだ話題自身は残ってるんだけどこのままだと今後の話題がほんとになくなりそうなのと純粋に会話が続かなくなってきた...。

会話の話題があってもひさしぶりに話してるとどこまで踏み込んでいいのかわかんなくなってるんだろうなぁ...。てか、忘れかけてたけど思い返せば先輩との再会の時...というか何なら10時間くらい前に痴漢されたばっかだって言うのになんで先輩に気を使ってるんだ?僕。

もしかして先輩の口数が減ったのって痴漢したこと忘れて話してたけどここにきて思い出したから気まずくなったとか!?

いや、あり得るな。

なんなら僕自身もちょっと気まずくなってきたんだけど?

まぁ、こっちとしてはあんまり気をつかう必要ないのかもしれないけども...。

被害者が加害者に気を遣うってのもなぁ...。

別に怒ってるわけでもないし水に流したつもりだし一切追及する気ないけどそれでもなおこのきまずさは消えてくれない!

「これ割と長い間ひきずるんじゃない?少なくとも一か月くらいは一緒に駅に向かったりするの避けるって形になってもおかしくない気がする。」

まぁ、そうこう考えてるうちに着けている腕時計は電車があと2分で出発することを示していた。

「そろそろまずいか...。先輩も待たせてるだろうし」

そういって戻ると先輩は完全に無言でただ無表情に虚空を見つめていた。

こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい。

え?あれに話しかけなきゃならないの?え?僕に死ねって言ってる?

(※ただ待ってる間に考え事をしているだけです)

僕みたいなチキンハートの持ち主はあの視線を向けられただけで心臓止まる可能性あるよ?

(※ただのビビりです。考えすぎてるだけです)

いや、死にはしないんだろうけどあまりにも先輩が怖いんだけど。

なんかもう博物館とかそういうところに安置されてる深夜の人形みたいな怖さがあるんだけど。

なんかあるじゃんあの呪いの人形とか、いや、まぁいろいろ違うんだろうけど。

(※失礼)

こんなにも表情のない先輩は初めて見たかもしれない。

僕の前の先輩はずっと表情豊かで愛くるしさもあったのに今の先輩は何も感じない壊れた人みたいにしか見えない。

はなしかけづらい...。いや、まぁ待たせてるし話しかけるんだけどね?

「せんぱーい?お待たせしましたー?」

「あ、りくくん!お帰り」

え?待って怖い。さっきまで無表情で虚空を瞬きすらせず見つめてた人と同一人物とは思えないほどに笑顔だし声も明るい。

さっきまでのあの虚空を見つめる目はどこに行ったの?ものすごく冷たい雰囲気はどこにいったの?

(※ただ考え事をしていただけです。二度目)

「.....あ、ただいま戻りました...」

なにやらみてはいけないものをみてしまったような気もしなくはない。

(ほかの人視点ではただ美人が人をまってて待ち人が来て笑顔を見せただけです。)

なにやらよくわからないまま電車に乗ってそのまま学校まで行きました。

......僕何かした?

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