第5話 過去回想2

先輩が中学に進級し時間帯が合わなくなってきたのか一緒に過ごす時間も減って少し疎遠になってきた。

それでもうちは家族ぐるみでのかかわり。

夜親に予定があればどちらかの家に遊びに行ってご飯を食べることもよくある。

「おばさん、いつもありがとうございます」

この日は先輩の家でご飯を食べさせてもらっていた。

「あらやだ、おばさんなんて呼ばないで。義母さんでいいのよ」

なぜかおばさんはいつもこういっている。

昔は「ことちゃんと結婚するー!」と言っていた記憶もあるが今となっては完全な黒歴史だ。僕ごときが才色兼備の先輩とお付き合いをして挙句の果てに結婚できると考えるなんておこがましい。

幼馴染だからと言ってそういう関係性になるわけでもないし、きっと先輩ならほかにいい人を見つけて幸せになるだろう。

「いえ、ぼくはこの家の子供ではないので」

だからこういわれるたびに{義母さん}という字を分かっていても{おかあさん}と脳内で変換していかにも気づいてないようにふるまった。

そういう日々が変わらず続いていく一方でぼくは先輩が進学した中学校に通うことになった。

べつに先輩を追いかけてとかではなく受験しない限り学区的にその学校に進学することになるというだけだ。

入学して数か月は平穏にすごしていた。

特に目立とうともしなかったからクラス内のカーストではそんなに高くない。

だからこそダメだった。

先輩は美人だったし僕らの学年からも人気があった。

そんな学校のアイドル的な存在が僕みたいな特段目立たない男子と一緒に遊んでいたり、挙句の果てには互いの家に入っていくところが見られれば当然話題にもなる。

実際は家族間での仲が良く交流が続いているだけ。

流石に構内でくっついてこない先輩も放課後家のあたりでは関係なくくっついてくる。

まるで体だけ成長して中身は成長していないかのように...。逆コ〇ンかよ。

別に付き合っているだとかそういうことは無い。

だけど周りから見ればまるで付き合っている相手のように見えたらしい。

そりゃそうだ。この人は昔から距離感がバグっている。

世の中には兄弟と買い物をするだけで恋人だと間違われたりする。

昔から、それこそ本当の姉弟かのように過ごしてきた僕らはそう見えたんだろう。

だからこそ噂が立った。一体なぜ僕らの家の近くに来ていたのかはわからない。

住宅街だし人も通る。でもなんで先輩の家と僕の家だとわかって、相手がだれかわかったのかも知らない。でもどうせろくな理由じゃない。

この噂話は一瞬で広がった。

ものの数日でほぼ全校生徒が知る共通の話題になってしまった。

当然僕も当時同じクラスだった子から質問攻めにされたし、そのたびに否定してきた。

ある程度仲の良かった子や理解してくれる人は僕らが幼馴染で純粋に姉弟のような関係だと説明したら納得してくれた。すごく妬まれたりうらやましがられたけど。

問題はクラスの陽キャどもだ。

自分たちに自信があるからこそ僕みたいなやつに突っかかってくる。「なんでお前なんかが」「なんで俺らじゃないんだ」「お前みたいなやつがあのひとと仲がいいなんておかしい」とまぁ、要約するならこうだ。

周りの大多数からはそいつらは冷たい目で見られていた。

なにせ幼馴染という関係性で仲がいいただの姉弟のような関係だと知っているから。

それにそもそも女性陣の大半はそういうゴシップに興味があるだけで相手がだれかわかればそれ以上の興味はそこまでない。たまに話を聞かれる程度だろう。

男性陣だってそうだ。そもそもの共通認識として「俺らが姫島さんと付き合ったりできるわけがない」という考えがあった。

それに美人だからって誰もが惚れるわけじゃない。もし本当に付き合っていたとしても「あぁ、あの人恋人いたんだ」というくらいになるはずだった。

でもこいつらは違う。本気で自分が姫島先輩と付き合えると思っていたしほんきで狙っていたのだろう。

こうなったのは一部の男子生徒だけ。陽キャの人たちもほとんどがすぐに鎮静化したかそもそも騒ぎ立てていない。

でも騒ぎ立てたのはおんなじ学年のやつらだけじゃなかった。

2年、3年の先輩まで出てきたのだ。

しばらくはずっと誤解を解こうとしていたが一週間も続けていればいやになる。

特段僕は我慢強いわけでもない。

だから言ってしまったんだ。

「僕と先輩が付き合っていたとしてあなたたちに関係あるんですか?」

この言葉が失言だということにはいってから気づいた。

ここから僕の中学校生活は大きく変わっていく。

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どんどん過去の話ぶち込んでいきます。

ここから話は重くなっていきますのでご注意を。

暴力表現が入りそうなのでつけくわえておきました。

今後ともよろしくお願いします!

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