第4話 先輩の過去回想1

というわけで話は7年前にさかのぼる。

「りくくーん!あそぼー!」

そういって駆け寄ってくるのは姫島先輩。当時僕は9歳、先輩は10歳。

思春期に入り始めるころで異性と少し距離をとったりする時期だと思うのだが先輩は一切変わらなかった。

「ことちゃんやめてよ!暑いからくっつかないで!」

このセリフすらも僕の照れ隠し。仕方がない。だって先輩発育いいから当時ですでに感触が伝わってくるんだもん。そりゃ暑くもなる(意味深)

しかもこのころは思春期で反抗期真っ只中。たまに世話を焼いてくれる先輩に対して強く当たることも多かった。

決して褒められたことじゃないんだけどくっついてくるのを引きはがしたり抱き着いてくるのを嫌がって突き飛ばしたり。

先輩は痛いときもあったはずなのになぜかずっと笑ってくっつきに来る。

これは当時、ただ無邪気なだけだとおもっていた。というより完全に当時の僕の頭の中では先輩が頭のいいイメージがなくアホの子だったのでけがしても気づかないんだろうなぁと思っていた。

今となってはちょっと違う理由に思えてくるんだけど。

「りくくんあそぼー!」

「やだよ、外暑いし。家でゲームしてたい。」

このころはゲームにはまって外で遊ぶのをやめた時期だったりもする。

でも先輩は体を動かすこと自体は好きなようで鬼ごっこだったり缶蹴りだったりとなにかと僕を誘って遊んでいた。だけど僕らが遊ぶのは大体2人。大したことができるわけもないのにすごく楽しかった記憶がある。

このころも外で遊びたい欲求はあったのだがそれよりもゲームをしていたかった。

「からだ動かさなきゃ風邪ひきやすくなるってママが言ってたもん」

そういってふくれっ面でこっちを見る先輩に対していつもぼくは

「いや、べつに習い事で十分動いてるから...それ以外で動きたくないよ。疲れるし」

実際このころはバレーボールと水泳をやっていたのだがバレーボールは週に四日、水泳は週に五日あり大変だった。

それに加え自主練習まで重ねていたのだ。

それにバスケにも興味が出て個人で近くの体育館に行って週に5時間ほどバスケで遊んだりいろんなスポーツをしているのだ。

正直それ以外で体を動かしたくないというのが本音。

でも先輩にとってはそんなことは関係ない。というより小学生がそこにまで気を使える方がおかしいんだけども。

「でも私がりくくんと遊びたいの!だからりくくんも私と遊ぶの!」

そういってしがみついてくる先輩のことがものすごくうっとおしくて。

まだまだ幼かった僕はつい先輩のことを突き飛ばしてしまった。

「いたっ!」

尻もちをついてしまう先輩。

ついやりすぎてしまったことを自覚した僕は先輩がケガしてないか確認しようとしたときに見てしまった。

痛かったはずなのに、自分よりも力の強い人が結構強く突き飛ばしたにもかかわらず一切崩れない笑顔で起き上がろうとしていることを。

心なしかこの時の笑顔は嬉しそうだった。けどそれを気のせいだと思いたくて目をそらしてしまったけども。

もしかしたらこの人はそのころから、小学生のころからそういう趣味にめざめていたのかもしれない。

ほかにもいくらそっけなくしてもずっとついてきたり、

よくドМの人に当てはまるのは

愛されるより愛したい、縛られるよりも縛られたい、そして自分の苦痛すら相手によるだろうが自身の快楽に変換してしまう。

この人はなにがあっても僕から離れようとしなかった。

僕がいじめにあってその原因が先輩と絡んでいたことだったということが判明するまでは。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

始まって間もないシリーズで過去回想ぶち込んでいくスタイルです。

後々ちゃんといろんな複線作りつつ回収していくので続きを読んでいただければありがたいです。

なんでこんなに先輩は陸人のことを大切にしていたのにずっと話さなかったのかとか

仲が良かったのになぜ疎遠になったのかとか、すでに作者程度の才能ではどうにもかんぜんに隠すかしっかりすいそくで当てられる程度だと思われますが今後も楽しく読んでいただければ幸いです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る