第2話 先輩は思っていたよりも初心だったようです

まさか、僕のことをずっと触ってた人が学校の先輩で、しかも近所に住んでて昔よく一緒に遊んだ人だとは思わなかった。

とりあえず話をするということで移動したのだが、移動している最中何を話せばいいのかわからずずっと無言だった。ものすごく気まずい。

というわけで今、近所のファミレスに来て話をしている。

「えっと、先輩が僕のことずっと触ってたんですか?電車の中で」

その言葉に水を飲んでいた先輩がせき込む。

どうやら水が気管に入ったらしい。すごく苦しそうだ。

なんて考えが浮いてくるくらいには僕は落ち着いていた。焦りすぎると人は一周回って冷静になるのかもしれない。

「ちっ、違うんだ!いや、確かに私がやったんだがちょっと話を聞いてくれ!」

一瞬冤罪だ!と言っているのかと思ったけどちゃんと聞いているとただただ自分の罪を認めただけだった。

ほんとに発言している雰囲気は「冤罪だ」と叫ぶ人のそれなのに。

そしてできれば違う人であってほしかった。

何をどうすれば近所に住んでてよく遊んでた女の先輩に電車の中で痴漢されて再開するんだろう。

久しぶりに再会するならドラマチックにとかロマンチックにとか言わないけど、せめて普通に再会したかった。

まさか先輩が電車の中で男性相手に痴漢をする犯罪者になっているとは思ってもみなかった。

「君は私がいつもああいうことをしていると思っているだろ!」

「え?違うんですか?てっきりやりなれているものだと...」

「違う!あれは初犯だ!過去には一度もやっていない!」

「過去にやってなくても今日やっちゃたんだから駄目じゃないですか」

初犯ということで常習犯じゃないことに安心はしたがそれでも今日の出来事は忘れられそうにない。

別に触られたことが怖かったわけじゃないが少しは怒ってもいいだろう。

「ていうかなんでこんなことしたんですか?先輩美人なんだからこんなことしなくてもそういう相手なら勝手によってくるんじゃないんですか?」

「びじっ!?」

実際先輩はかなり人気者だ。

幾度か告白されたという話も聞くし、実際友人も告白して玉砕していた。

長めのつややかなカラスの濡れ羽色の髪、ぱっちりと開いた瞳、すっと通った鼻筋にぷっくりとつややかな唇。そのどれもが完璧と言っていいほどの容姿を生み出している。

当然スタイルに関してもそうだ。しっかりと出ているところは出ていて引っ込むところは引っ込んでいる。まさに女性からすると理想のようなスタイルだろう。

まぁ、それが本人の努力によって作られたものだということは知っているのだが。

ここ4年ほど直接話してはいなかったがよくランニングをしているところは見かけるしコンビニに行ったときにスイーツに手を伸ばしかけて迷うような顔をした後にあきらめていたことも知っている。

え?詳しすぎて気持ち悪いだって?しかたないだろ生活圏は同じなんだ。

そんな近くにこんな華のある人がいたら自然と目が向いてしまうだろう。

「いや、先輩ならとっくにこんな言葉言われなれてるでしょ。なんでてれてるんですか...」

「いや、そんなまっすぐな目で面と向かって言われることはあんまりないから...」

先輩は思っていたよりも初心だったようだ。

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というわけで2話です。平日に投稿するとか言いながら連日投稿してますね。

ストックはないです。ギリギリなので。

なんとなくの流れは決めてるんですけどべつに面白そうなの思いついたらそっち書くので更新遅いです。お許しを。

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