怪奇!顔面カンパン男!
家から出た私を取り囲んでいるのは、大きな羽の生えた銀髪の女性と、猫耳を生やした黒髪の女性と、音符をあしらった可愛いドレスの女の子と、頭部がカンパンになっている男だった。
「やあ! ようこそ、俺たちの住む街へ! 俺は乾いた心を癒す、みんなのヒーローカンパンマン! よろしくな!」
「メソレム。よろしく」
「私は夢子! 猫同院夢子! よっろしくぅ!」
「メロア! よろしくね〜♪」
明らかに異常な状況、既に見えなくなったかづらさん。しかも、よく見ればメソレムさんは手に武器を持っているし、カンパンマンさんは普通にデカくて怖い。どうしよう。
「聞きたいことがあるんだろう? 俺たちで良ければ、相談に乗るよ」
「お店の場所がわからないとか、お金の事とか? そういうことなら何でも答えてあげる!」
「慣れないうちは、私たちを頼ってください! 新しい家族みたいなものなんですから!」
「……ん」
メソレムさんは何も喋らないのかい。……えっと、そうです。お金の事なんですけど。
「それなら問題無い! この世界にやってきた時点で専用の財布が支給されるんだが、その中にはその人が望むだけの金額が無限に出てくるからな! 店は向こうにある大型ビルに全て入っているから、入り用ならあそこに行くといいぞ!」
そうなんだ、よかった。
「あっ、あとね? この世界には、怖い人とか、化け物がいっぱいいるから、戦える人と一緒に行動するか、ちゃんと武器を持ち歩いた方がいいよ」
えっ、何それ怖い。
「何か使える武器があるなら、きっと部屋に置いてありますよ。後で確認した方がいいと思います」
「私たちも何かあれば助ける。呼んで」
……ていうことは、皆さんもかなりお強いので?
「メロアは戦えないが、俺がいるから大丈夫だな。夢子とメソレムは強いぞ! 俺たちはこうやって、新しい人が来れば案内をしたり、説明をするのが役割だからな! ま、君の場合は別の案内人がいるようだから、明日改めて外に出てみるといい。今日はもう部屋で休め!」
実際、もう目的は果たした。聞きたかったのはその二つ……と、そうだ。学校はどうなんだろう。
「もちろんあるぞ! 生活に慣れたら行ってみるといい!」
「先生がとっても面白くていい先生なんだよ!」
そっかぁ、あるんだ。よかった……皆さん、ご親切にありがとうございました。
「うむ! じゃあな!」
「まったねー!」
「ぜひこの世界を楽しんでくださいね」
「ばいばい」
私は彼らを見送って、家に戻った。
部屋を見てみると、最低限の家具家電に、お気に入りだったぬいぐるみや、沢山の服があった。
クローゼットの中には、私が実際に使っていた薙刀があり、よく見ると先端はしっかりと刃のついたものになっていた。
最初、なんだあの化け物と思ったカンパンマンさんも優しかったし、他の人たちもとても親切だった。
死んじゃって、おじいちゃんおばあちゃんにもう会えないのは寂しいけど、せっかくこんな楽しそうな世界に来たんだから、少しは楽しまないと。
私はいつしか流れていた涙を拭い、晩御飯の準備を始めた。
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