第7話 休日の過ごし方②
昨日は昼過ぎに起きて一切外出しなかったから、さすがに今日は外に出て買い物しに行こうかな。
あー...でもなに買おう。陸上部専用のランニングシューズとかって買う必要あるのかな...
でもたぶん高いんだろうなぁ...うん。よくわかんないや。
あ、日焼け止めは買った方がよさそうかな?なんか陸上って肌の露出多い気がするし...
そしたら電気シェーバーも欲しいと思ってたんだよね...
よく剃刀負けしちゃうし肌を傷つけないように剃るのめんどくさいんだよなぁ。
電気シェーバー買ったら結局、高いシューズと同じくらいの金額になっちゃうだろうな...
まぁシューズは素人が選んでも自分に合ってるかなんて分かんないだろうから、美容も兼ねて日焼け止めと電気シェーバーを買った方が一石二鳥ってことでイイ気がする...!
昼食を済ませたら自転車で近くの薬局へ行く。だいたい自転車で10分ぐらいの距離にあって、学校とは反対側に位置しているから、こっちの道はお散歩でたまーに通るくらいだ。
今日は朝から曇り空で、直射日光を受けないのはいいがずぅっとジメジメしてる。
たった10分自転車を漕いだだけでTシャツが肌に張り付いてきた...
大通り沿いにある薬局の近くに自転車を停めて、駆け足で中に入る。冷房が効いてて涼しい。
「えーーっと、日焼け止め...と電気シェーバー...っと」
日焼け止めは念のため2本買っておこう...
電気シェーバーは...いろいろ種類があるな...
あっ!防水仕様のやつがある...!お風呂場で剃れば毛と一緒に洗い流せるしコレいいんじゃないかな...!
...よし、これにしよう。
あ、あと...シェービングクリームも買っておかなきゃ。
結局2万円ぐらいかかってしまった...
中学生からお年玉とお小遣い貯金していたのに今日の出費で残り1万を切ってしまった。
...そろそろバイトしなきゃなぁ。
そんなことを考えながら自宅に着くと、隣の家からちょうど湊が出てきた。運動する格好でボールバッグを背負っていた。
「あ、湊...」
「おっ今帰り?」
「うん、買い物してきたとこ」
「なあ琴音、ヒマなら今からサッカーしに行こうぜ」
「そこの公園?」
「そう。どう?」
まぁ言われる通りこれから特に予定はないし今日は気分も悪くないしたまには湊と遊ぶのもいいかな。
「うん、じゃああとで行く」
「お!琴音が誘いにノるなんて久々じゃね?ゼッタイ来いよ〜」
そういって湊は駆け出してった。
...本当にサッカーが好きなんだな。元は私が小学生の時に習い出したからそれを追うようにして始めてたのに。
自室に戻り、買ってきた化粧品を整理して、Tシャツから運動着に着替えて家を出る。
公園は歩いて5、6分ほどの位置にあり、田舎なので広場は結構広い。親子でバドミントンをしていたり、友達と追いかけっこしている男の子たち、隅っこで集まってゲームをしている小学生、いろんな人たちがいて湊は隅っこの方にいた。1人でリフティングをしている。
「湊〜!」
「おっ、きたか」
湊は首を振ってたまにこっちを見たり反対側を見たりしながらリフティングを続ける。
「.....うまいね」
「そう?へへ、結構大変だったんだぜ、これ習得するの」
「たしかに、そんな首ブンブン振ってたら目回りそう」
「はは、それもあるけどボールコントロールがめっちゃむずい。.......あっ!っと...」
湊がボールタッチをミスして、明後日の方向にボールが飛んでいく。湊は、楽しそうに笑いながら取って帰ってきた。
「いや〜さすがに話しながらはミスしちゃうな」
「うん、大変そうだなって思いながら見てた」
「いやでもリフティングと首振りと会話の3つ並行してやるのめっちゃ練習になるわ!これ自主練に取り入れよ」
「...それ会話する相手いなきゃ成り立たないじゃん」
「あーたしかに、でも琴音が相手になってくれれば解決じゃん!」
「えーなんで私が」
サッカーのことになると湊って突拍子もないこと言い出すんだよなぁ。私たちなんてここ2ヶ月ぐらい全然話してなかったのに定期的に自主練の相手をしろってことでしょ...
私は高校入ってからちょっと湊と気まずいって思ってたのに、こいつは全然そんなこと感じてなかったのかな。
「湊って日曜はいつもここで自主練してるの?」
「うん。まぁ1時間以上は絶対やってるかな」
「へぇ、すごいね。1人で?」
「他にやる人いないしな。....隣にサッカーやってたやついたけど辞めちゃったし」
「ふーん...」
「琴音がこっから毎週練習付き合ってくれるって言うなら俺もっと上手くなれる気がするんだけどなー」
・・・
「...いいよ」
「へっ!?マジ?」
湊は私の想定外の返事に驚いたのか、安定したリズムを取っていたサッカーボールがまた明後日の方向へ飛んでいった。
「ウソ、ジョーダンよ、冗談!からかっただけ〜」
「...なんだよそれ、わかんね〜」
「アンタが私を放っておいてずっとリフティングしてんのが悪いんでしょ。さ、テキトーにパス練しよっ!」
「はいはいそうだな、悪かった」
・・・・・・・
湊との練習が終わり、帰り道で私は猛抗議した。
「アンタねぇ、私をあんなに走らせるなんて...!」
「おかげでいいパス練になったわ!」
「私は疲れた!もう足が棒!」
「おう、おつかれ〜。いい運動になったっしょ」
「なにニヤけてんのよ、気持ち悪い」
「へへ、でも陸上やるならこれよりもっとキツいトレーニングすることになるぞ〜たぶん」
「う...まぁそうかもだけど」
「種目は決めた?何やりたいの?」
「...うーん、あんまり決めてない」
「そっか。まぁでも琴音の足なら短距離でも長距離でもどっちでもいけるんじゃね?」
「そうだといいな」
「........」
「なぁ琴音。これから毎週日曜さ、サッカーの特訓付き合ってくれると練習の幅広がって嬉しいんだけど...」
「あーー...あれ、本気だったんだ」
「俺はいつでも本気だけど」
「...う〜ん、毎週はきついかなぁ。ツキイチぐらいなら」
「じゃあそれでもいいや!1人より2人の方が練習してて楽しいしな!」
「じゃ、琴音。今日はありがとな!楽しかった、バイバイ!」
「うん、ありがと。ばいばい」
帰宅してすぐにシャワーを浴びて汗を流す。
夕飯を食べてベッドに寝転がる。まだ夜8時か...疲れて眠いけど今日全く勉強してないし少しだけ勉強しとくか...
そして1時間半後、勉強が終わりベッドの上でぼーっと天井を見つめる。
湊のやつ、毎週練習に付き合えってあれ、本気だったんだな...。からかって悪いことしちゃったかも。どうせ毎週空いてるだろうけど私だって女の子だから事情はあるし、予定も入るかもだし。ツキイチぐらいがちょうどいいよね、きっと。
それにしてもいよいよ明日か...陸上部......いやまだ体育祭から2日しか経ってないんだけれども。いったいどんな練習してるんだろう。校内一足が速い紅林先輩がキャプテンだからきっと厳しいんだろうなぁ。
湧いてきた不安を紛らわすために胸をさわる。
...そういえば最近シてないな。
おもむろに部屋の灯りを消し、声が漏れないように全身に毛布を被る。身体をもぞもぞとくねらせながら左手は胸を、右手は股の方へ伸ばしていく。
ショーツの上から4本指で恥部をなぞる。気持ちのいい感覚が身体中に巡り、全身が火照る。
勉強の疲れとストレスが溜まっていたからか両手が激しく蠢き、呼吸が荒くなっていく。ただでさえ暑い毛布の中がさらに熱を帯びて湿度の高いサウナみたい...
「〜〜〜っぅあ...!」
全身が小刻みに震える。
限界まで達して思わず声が漏れ出てしまった。今日はいつもより早かったな、なんて思いながら大の字になって余韻に浸る。暗くてよく見えない天井をぼーっと眺めて呼吸を整えて冷静になる。毛布を剥ぎ取り薄手のピンクのブランケットを掛け直して眠りについた。
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