第26話 ゲーミングネーム
次に本にはそれぞれ付与できる効果、必要な土器の大きさなどが記載されていた。最初のページとは紙が少し異なり、この先のページは始めからあったものではなく後の世代で付け加えられたものだと分かった。
春川はここの文を読み上げる。
「土器に付与できる効果を大きく分けると『人の身体を変化させる効果』『人の運を操る効果』『人の思考を書き換える効果』の3つであり、効果の大きさは土器と体液の量で決まる。体液を日々注ぐ事でその土器の効果は完全に復活し、損傷した所も治る。ただしあまりにも細かく粉砕されると再生は不可能になる。
ま、これが土器のルールの全てですね」
このシンプルで分かり易いルールを耳にいれながらも、二人が特に気にかけているのは
(『人の思考を書き換える効果』、俺のこの身体入れ替わりもその効果によって起こされているんじゃないか?)
(そう考えるのが妥当だろうな。魂がどうたらじゃなくて、善田の思考が俺の思考に書き換えられたって感じじゃないか。問題はその身体入れ替わりの土器が何処にあるかだ。壊れたら効果が無くなるらしいから破壊したら元に戻れるんだろう。
お前自身がどうなるのか分からないから壊すかどうかは別として、場所だけは知っておきたいな)
取り敢えずその土器は館にある可能性が高いので、先ずは館の構造について知る事にした。
「春川、全一君は今日からここで暮らすわけだし館の部屋の紹介を頼みたいわ。私も同行するけどね」
「かしこまりました。ですが私はあくまで善田様担当のメイド長、他の善田家の皆様のエリアの案内は出来ないので、ここは館の全使用人統括の半蔵殿に同行してもらおうと思います」
「半蔵って人、20代なのに使用人の中だとトップなんだな。そんな人が俺の家にまで来たのか」
「仕事も指揮も完璧なのですが、お嬢様を溺愛するあまり行動が先走る事がありますからね。50年以上この館で使用人を務めている方もいるのですが、何故その人らを差し置いてトップに立っています。正直私もあまり理由が分かっていません」
「それでは当館の観光ツアーの出発となります!案内人はこの私、半蔵 日和が担当致します」
玄関ホールでツアーガイドの様な紹介を始める半蔵。
それを見て本当になんでこの人が使用人統括なんだと全一と偽善田だけではなく、春川までも改めて思った。
「それでは先ずはこの玄関ホールから。当館には非常口が7つありますが、基本的にはこの玄関ホールから館を出入りします。
ここは館の中心であり、4階層×二つの扉が左右に付いています。
一階は東側が優雅お嬢様、西側が『
二階は東側が『
三階は東側が『
そして最上階の4階の東側が当主様の奥様こと『恵子』様、西側が当主であられる『
一つのエリアで生活が済む様にキッチンから風呂まで全て揃っており、それぞれのエリアごとこに使用人が20人います。使用人達の部屋もそれぞれのエリアにありますが、下の階に行くほど使える部屋が少ないのでお嬢様専属の使用人は大きな部屋二つで全員夜を過ごしています。
プライバシーもクソもありませんが、それでも優雅お嬢様の傍に居たいと思う使用人が今いる20人です」
大きな館だと思っていたが、やはり金持ちは考える事が違うなと二人は思った。一区画ごとに生活出来るもの全て揃えるなんてあまりにも贅沢過ぎる。
「最上階は当主様とその奥様のエリアという決まりがあり、上の方から序列が高い順となっております。
ここでの序列は土器の取引額で決定されるので、特別枠でこの館に住んでいるお嬢様は取引額が0円なので一番下の序列の部屋となっております。
ちなみに、今は部屋がいっぱいですが、もしも新しく才能を持って生まれたご子息が誕生しましたら、別館に移る事も可能です。
なので全一様、お嬢様との間に子供が出来てもその子に才能があれば館で共に過ごす事が可能です。ただ、もしも才能が規定ほど無かったらその子には力の存在を明かさず普通の生活をしてもらう事になるので、館で共に生活する事は出来ません。
なのでお嬢様と致す際はその決意を…」
「半蔵殿!その話はまだ早いかと…」
赤裸々に全てを話す半蔵に春川はあたふたしていた。
一方その話を聞いた二人は、固まってこの家の異常さを改めて理解した
(うわっ、この家のシステム凄いな。普通の家で生まれ育った俺からするとそんな家族内での序列だとか有り得んし、しかも才能の有無によって子と離れる事になるとかっていうのも考えられない。
でもこのシステムで今まで善田家を紡いできたんだろうし、多分これが正解なんだろう)
「それでは先ずは優雅お嬢様のエリアである。1階東館についてご説明しましょう」
善田優雅のエリアには、優雅の部屋、浴場、厨房+食事場、使用人の大部屋2つ、商談室(今は全一の部屋)、トイレ、空き部屋が1つがあった。
それぞれ部屋を案内してもらい、次に庭へと移る。
サッカーのフィールド3,4個は入りそうなぐらい広い庭で、虹色の照明で光る噴水と木々のイルミネーションには思わず二人とも目を奪われた。
「ここは特に区画は区切られておりませんが、光物が大好きな
ちなみに噴水はゲーミングシャワー、木はゲーミングツリー、道はゲーミングロードと名前が付けられております」
「ゲーミングって虹色に光るものの修飾語じゃないのを、誰かその白様って人に教えてあげてくれ」
「あっ、じゃあ今から白様の所に行ってみましょうか。ちょうど今日の昼頃に商談から帰ってきた所ですし」
「「えっ…」」
全一がノリで言った言葉に半蔵がガチでそう返し、心の準備を出来ていなかった全一は少し怯む。
「そ、その…今のはツッコミってだけで別に俺が注意したいわけじゃ…」
「そ、そうよ。初対面の人にいきなりそんなツッコミをされたら向こうもきっと驚くわ」
「白様はこの館でお嬢様の次に寛容な方…だと私は思っています。あの方なら全一様の意見にも耳を傾け、この適当過ぎるネーミングセンスにも恥じらいを持つようになるでしょう。
さ、今から白様のいる所までご案内します!」
「ああ、半蔵殿も適当過ぎる名前だと思っていたのか」
半蔵は春川の言葉を聞こえないふりをし、白という者がいる所へと一同を連れて向かった。
同じクラスの美少女の身体と俺の身体が入れ替わってる!?…と思っていたら、どちらも俺だった。あいつの人格は何処に消えた? 体育座り @4lwn3
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