第51話
突然生徒総会が行われてなんかテンションが高い校長が「音楽祭をしよう!」と口にしたのが始まりだった。
校長が突然言い出したことなので開催するのは今年が初めてだ。
最初は合唱とかかなぁと思っていたのだが、話を聞いていくと結構ガチのライブをしようとしていた。
(校長……マジですか)
そしてクラスごとに合唱でも、ライブ的なことでも……音楽に関することを選んで発表することになってしまった。
「校長のせいでこんなことになったけども、なにか音楽祭で何をするかの案はあるか?」
普段校長は優しくて、多少のことなら目を瞑ってくれるのだが今みたいに急に暴走してしまうのだ。
ただ普段の行いがあるからこそこの校長に反対する人はいないし、校長が出した案は最初はこんな感じでも学校の恒例行事になったことがある。
数年前のことらしいが文化祭だって校長が提案して恒例行事になったらしい。
「案って言ってもな、合唱はベタすぎるしライブにしてもクラス全員でやれるようなものでもないだろ」
「でもさ、折角なら普段できないようなことをしてみたいというか」
そしてしばらく話し合ったのだが、やることはみんなで出来る合唱ということで話が進んでいたのだが、進行をしていた速水が「どうせなら少しアレンジでも……」と言った。
「合唱にアレンジは厳しいと思うから、俺はライブの方がアレンジを加えやすいと思う」
「ふーん、さっきも言ったけど全員で出来るようなものじゃないよね?」
「それは思い浮かべてるライブがガチのライブだからだろ。楽器を細かく分ければクラス全員に役割を振り当てられると思うが」
最悪、ひとつの役割に数人割り当てれば何とかなるだろう。
そんなこんなでライブをすることになった奏介のクラスだったが、ライブとなるとボーカルがいないと話にならないだろう。
「歌いたい人ー」
当然、手を挙げる人はいなかったのだが真夏がゆっくり手を挙げた。
「1人だったら嫌だけど、誰かと一緒ならいいよ? 例えば奏介くんとか!」
真夏はそう言って後ろにいる奏介の手を握って微笑む。
「真夏のお願いならやりますよ〜。ただ雨ケ谷、お前も道ずれな?」
「ちょ!?」
2人きりというのは少し恥ずかしいので雨ケ谷を無理やりボーカルに参加された。
「ん、それじゃあボーカルは神楽と真夏さんと雨ケ谷ね。あとはベース担当とか決めようか」
可愛い彼女のお願いなら受け入れるし、別に俺は歌うのが嫌いという訳でも無いので問題は無い。
それから話し合いで、叶と真冬はベース担当、雨恵はキーボード担当ということになった。
そして曲も決まったので早速各々は練習に取り掛かった。
当たり前だが楽器などは音楽室にしかないので、ほとんどのクラスメイトは音楽室に移動してこの教室には4名しか残っていなかった。
「
「よろしく、音楽室に行った人には教えなくていいの?」
「私はボーカル担当で楽器の方には私と同じ教室に通ってる
改めて思うがこのクラスは色んな人が揃っている。
普通にこの6人が集まるのも奇跡なのに、音楽教室に通ってる人が二人同じクラスになるのも珍しいだろう。
「まず3人いるってことは歌詞の割り当ても考えないといけないじゃん」
「それもそうだけどまずは歌ってみてどこまで高い声が出るか把握したいかな。それで歌詞割り当てを決めるから」
3人はとりあえず普段通りに歌って、それを聞いている綾香がうんうんと頷きながら歌詞割り当てを決めていた。
そして3人は決まった曲を最後まで歌いきった。
「みんな、歌上手いね〜もしかして音楽教室にでも通ってた?」
「通ってないけど……」
3人とも音楽教室に通っていないので素で歌が上手いということだろう。
「へぇーこれならボーカルは多少の歌い方を教えれば大丈夫そうかも、それじゃあ私はここで色々決めとくから3人で練習しておいて」
そう言って綾香さんは一枚の紙に何かを書き記し始めたが、そんなことより歌の練習が優先だ。
※※※
「当たり前だけど人多いね……教えるのに苦労しそうだ」
音楽室は他のクラスも使うので一クラスが使っていい時間が決まっていて悠長にしている時間はない。
「それじゃあなんの楽器かでとりあえず別れてもらって……まぁできる人がいるのなら教える側に当たって欲しいな」
「私……キーボード、できるから教える側になる……」
「ありがと、雨恵ちゃん!」
雨恵と梢は2人で残りのクラスメイトたちに楽器を教えるのだがもちろん時間が足りる訳もなく、数人には教えきれずに終わってしまった。
「いやぁきっつい、短時間でこの人数に教えろって無理な話だよ」
「あはは……キーボード担当の人は数人しかいないからまだ楽な方だけど……そっちは大変そうだね……」
「音楽祭が終わったら絶対にお礼させるんだー!」
そうして校長の急な提案によって開催されることになった音楽祭の準備の一日目が終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます