第46話

新学期が始まってまず最初に決めるのはクラス内での仕事の割り当てだろう。


奏介は前までなんでもいいと思っていたのだが、なんでもいいと言うとめんどくさい仕事を任されると学んだので今回はしっかりとやりたい仕事を決めていた。


俺が仕事を選ぶと、当然かのように真夏さんと叶が同じ仕事をを選んできた。


ちょうど定員は3人丁度になったからよかったものの、他にも人がいて真夏さんか叶のどちらかが下ろされてしまったのなら、俺としてもなんかモヤモヤするのでよかった。


「それじゃあ、この割り当てで決定ですね。それじゃあ仕事ごとで集まって役割分担について話し合ってください」


真夏さんと叶の3人で話し合うのだが、役割分担についてはすぐに決まって、残りの時間で別のことを話していた。


「みんなが同じクラスになるなんてねー、これは楽しいクラスになりそうだ」


「それはそれですね、そーくんと一緒にいれる時間も増えることですし、嬉しいことばかりです」


「俺は2人を平等に扱いたいから昼を食べるのなら2人とも誘うからね?」


どちらかと2人きりで食べようなんて優劣をつける行為はしたくないのでどちらかに誘われても断るか2人とも誘うのどちらかだ。


2人がなんと言おうともこれだけは俺の中で絶対に守りたいと思っている。


そしてクラス内の役割の話が全体で終わったので先生は教室を出ていった。


授業が終わったのなら6人は全員集まり話し始める。


「神楽さん……今年も和くんと仲良くしてくださいね」


「それはもちろんだよ立花さんもよろしくね。あと雨ケ谷が暴走しかけてたら止めて貰えると助かる」


「俺が暴走したことあったかー?」


「いやもう記憶にない」


心当たりは無いのだがいずれ暴走するかもしれないので釘を打っておいて損は無い。


俺はそんな気はないのだがもし俺が真夏さんか叶のどちらかと付き合ったりでもしたら必ずダブルデートしようとか騒ぐだろう。


そもそも俺は付き合うつもりは無い、口には出さないが俺は2人に釣り合ってないと思う。


「雨ケ谷さんは欲望を言ってるけど奏介くんは全然言ってくれないから見習った方がいいんじゃない?」


「俺からは何も言わないよ、ただそっち後なにかお願いしてきてくれたなら俺は叶えるよ? この前だって真夏さんは頭撫で……」


「その話はみんなの前でしないでね……その、恥ずかしいから」


(膝枕とかは自分からやっているのに……なんで膝枕は平然と自分からやっているのに俺に頭を撫でられるのは恥ずかしいんだろ?)


真夏は自分から何かするのは大丈夫なのだが相手から何かされるのには耐性がないのに奏介は少し不思議に思っていた。


「神楽も裏では案外いちゃついてんだな〜、もしかして付き合っちゃてる?」


「付き合ってないし、いちゃついてもいない。お願いされたことをやってるだけだ」


「ほんとかなぁ?」


少し言い方がウザかったのでこいつ後で殴ろうと決めてこの会話は終了した。


ただ放課後に叶に呼び出されたので真夏さんは先に帰ってもらって、俺は叶について言った。


「呼び出すってことは何か話でもあるんでしょ?」


「まぁその通りですけど……変に思わないでくださいね?」


変に思われるような話でもするのかと困惑したがとりあえず話を聞くことにした。


「そーくんと幼馴染で、その関係を私は崩したくないので告白したりはしたいとは思ってないんですよ」


「それでいいの?」


あれだけ真夏さんに対抗していたのに、告白したくないつまり付き合わなくてもいいということに驚いた。


「でも真夏さんと付き合っちゃったら私に構ってくれる時間が減るじゃないですか?」


まぁたしかに付き合ったのなら幼馴染より彼女を優先してしまうだろう。そうなるからこそ俺はどちらとも付き合わないのだ。


「だから甘えたり甘やかしたりはします……けど絶対に惚れないでください。幼馴染のままでいてください」


「甘えたりしてきて可愛い姿を見せられたら普通に惚れる可能性は0ではないんだけど?」


「そこは惚れないように頑張ってください」


惚れさせに来るのに惚れてはいけないという意味がわからない状況だが幼馴染として接するのであればいつも通りだ。


叶は付き合わないけど、真夏と奏介を付き合わせるつもりもないということだ。


叶が1歩、身を引いたのなら真夏に恋敵はもう居なくなったのだが、真夏はその事を知らないし何より奏介が付き合おうとしてない。


奏介は友達のままでいたいと思っているから、真夏の恋は奏介の気持ちが変わるまで実ることは無いだろう。


「奏介くん、叶さんとどんな話をしてきたの?」


「叶が俺と付き合う気はないけど甘えたり甘やかしたりはするって話」


「それじゃあ……!」


「告白はまだしないで、俺はまだ付き合う気は無いから。もっと先、いや案外近い未来かもしれないけどもし真夏さんと付き合うのなら俺から告白したいから待っててくれるかな」


俺の気持ちがいつ変わるかなんんで分からないけど、付き合うのなら男として告白したいと思っている。


「真夏さんには我慢をしてもらわないといけないけど……いつでも甘えに来ていいよ、俺も甘える時はあるかもしれないけど」


俺だって男であり、そういう欲求がない訳では無いので甘えたいという感情は少なからずある。


ただ、俺は住まわせてもらってる側で真夏さんと付き合うのならまず真冬さんの許可がいるし後々に親の許可も必要になってくるだろう。


でも甘えるだけなら限度を考えれば許可なんて必要ない。


「気持ちが変わるまで数日か数週間か数ヶ月、もしかしたらもっと長い期間かかるかもしれない、それでも真夏さんがその時まで俺のことを好きでいてくれるのなら……」


俺は数歩、進んで真夏さんの隣に立って言いたかった言葉を口にする。


「いつかは俺から告白するよ」


そして俺はさらに歩き出して、真夏さんから離れていった。


「いつか……か。私のこの気持ちはずっと変わることがないから、いつまででも好きで居続けるよ」

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