第45話
学年末テストという成績が悪ければ留年という魔のシステムを突破した奏介たちは、新学年になる上で1番大事とも言えるクラス割り当てを見に、学園に向かっていた。
運が悪ければ、仲のいい人が0人ということもあるのかもしれないので、仲のいい友達が少ない奏介は少しビクビクしていた。
1年の時は真夏さん、雨ケ谷、立花さんとクラスが一緒で、仲良かったのでそのうちの誰かは1人は同じクラスになりたいところだった。
もちろん真冬さんでも叶でも、一緒になれるのなら嬉しい。
そんなことを思いながらクラス割り当てを見に行くと、自分が仲良くしていた人全員が同じクラスという奇跡が起きた。
「あ、奏介くん今年も同じクラスだね。よろしく」
「今年は仲間外れではなさそうですね」
奏介のクラスは7組で、真夏、真冬、雨ケ谷、雨恵、叶の比較的仲がいい全員が同じクラスなのだ。
ただみんなが同じクラスというのはもちろん嬉しいのだが、同時に騒がしくなりそうだなとも思った。
教室に入ると、叶と雨ケ谷たちは既に居て、鞄を置いてすぐに雨ケ谷たちのほうに向かった。
「雨ケ谷、今年も同じクラスだな。他の人も全員だけど」
「確かに、すごいよな。仲良くしていた人全員が同じクラスになるなんて、まぁ叶さんはそこまで関わってなかったけど神楽の幼馴染だったら仲良くできる」
「昔のそーくんからは考えられませんけどね、私以外に話せる人が居な……」
「ちょっと黙ってくれると嬉しいかな?」
危うく叶に黒歴史をみんなの前で暴露されるところだった。
奏介にとってこの事を思い出すのも今となっては苦痛だ。
案の定仲のいいみんなが集まっているのでいつもより騒がしいというか盛り上がっている。
「今年も……和くんと同じクラスで嬉しい……」
「あはは、俺も嬉しいよ雨恵」
「イチャつくのなら
そんな会話をしていると担任の先生が入ってきたので奏介たちは各々の席に座って先生の話を聞き始めた。
話と言っても先生の自己紹介以外は一年の時と話の内容が変わらなかったので、はっきり言って早く終わってほしかった。
だいたい早く終わって欲しい時に限って話は長く続くもので、そして今回も例外ではなかった。
それから数十分くらい話を聞いただろうか? ようやく先生の話が終わって開放された。
「学園に長居しても意味ないし、早く帰ろうよ奏介くん」
「一緒に帰るのはいいんだけどさ、真冬さんたちが居なくない?」
ちなみにいない理由は2人きりで帰るために真夏が他の人達に頼んで先に帰ってもらったからである。
「そうだね〜先に帰っちゃったんじゃない?」
「ん〜それならいいけど……。とりあえず帰ろうか、真夏さん」
一緒に帰るのは良かったのだが帰ってる途中、何故か真夏さんが手を絡ませてきたが気にせずそのまま家に帰った。
(手を繋ぎたいなら言ってくれればいいのに……)
俺もお願いされたら手を繋いだり、頭を撫でたりぐらいなら悩まずにしてあげるつもりではいた。
「真夏さんが俺に好意を持ってるのは知ってるからさ、手を繋ぎたいのなら言って欲しいかな。言ってくれれば真冬さんに怒られない範囲のことならやってあげるから」
「そ、それじゃあ頭を撫でて欲しい……かな」
結構前の話にはなるが、2人が奏介の家に泊まりに来た時に真冬の前で真夏を撫でたことがあったのだが、その時は何も言われなかったので今回もセーフだろう。
俺が頭を撫でると、真夏さんの頬がみるみる赤くなっていくのが見えた。
恥ずかしくなるのなら、言わなければよかったのに……。
「これで満足かな、真夏さん……?」
「はい……」
自分からお願いしたのにさすがに耐性が無さすぎると思うがそういうところが可愛いと思う。
叶にもしてあげたいところだが身長差のせいで奏介がされる側になってしまう。
実際何回もなでなでされた経験がある。
まぁ叶本人は撫でられるより撫でたいと言っていたのでこれでいいのだろう。
「真夏さーん、そんな離れたところに居ないでこっち来て話そうよー」
部屋の隅でうずくまってる真夏さんに声をかけるが、いつまでたってもこちらに来る様子がないので自分から真夏さんの隣に座った。
「撫でたことなら前に1回あったんだから、そんなに恥ずかしがらなくても……」
「昔と今じゃ状況が違うじゃん? 奏介くんがより積極的で見た目もかっこよくなってるからさ……」
奏介は真夏の好みの髪型になっているので昔よりかっこよくなっていたのだが本人は自覚していない。
「でもさ、海水浴のことに比べたら全然マシじゃない? だってキ……」
そして俺は続きを述べようとしたのだが口を塞がれて「バカ……」と可愛らしく怒られた。
真夏さんの可愛い姿を見る度に頭の中をよぎるのは必ず叶の姿……。
俺は優柔不断な男だ、難しいとはいえ2択さえも決められずにこんなに迷ってしまうのだから……。
これからも迷い続けるし、しばらくはどちらかを選ぶことなんて出来ないと思うが、2人とこれからも仲良くしたいというのは本心で言える。
(今の俺に出来ることは2人……いやみんなを悲しませないことぐらいか)
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