第44話

レアと戯れている美少女3人の中に俺が1人だけ混ざっていてなんかいたたまれなかったので外に出たのだが、財布も置いてきたしやることが無い。


「財布とスマホ置いてきたのは間違いだったな……今から取りに帰るものあれだし、適当に街中を歩くか」


奏介は普段行かない遠目のところまで歩いて向かった。


奏介の方向感覚はいい方なので多少知らない場所にまで行っても帰っては来れるだろう。


「昔は公園でよく遊んでいたな〜」


奏介は小さな子供たちが遊んでいる公園を見つめながらそう呟く。


奏介は昔ら叶とブランコに座りながらよく雑談していた時の情景が頭によぎった。


今はもう公園で遊ぶような歳ではないが、こうして楽しそうな子どもたちを見てると遊び心がくすぐられる。



※※※



「奏介くん、どこかに出かけちゃったけどなんで急に外に出たんだろ?」


「私たち3人が猫と触れ合ってるのを見て空気を読んでくれたんでしょう。それなら今のうちにレアくんを堪能しないと奏介くんに悪いですね」


「え〜? 奏介くんも一緒にレアくんと触れ合えばいいのに」


「いやいやらそれは無理だと思うよ真夏ちゃん……? 私たちが占領しちゃってるんだから……さ?」


レアは真夏、真冬、叶に囲まれていたのでそこに奏介の入る場所など少なくともさっきまではなかった。


今は真冬が少し離れているが、さっきの光景なら奏介が空気を読んで外出するのもわかる。


そして今、奏介は公園で懐かしい気持ちも味わっていた最中だった。


「せっかくそーくんが空気を読んでくれたんですからレアくんは今のうちに堪能しておいてそーくんが帰ってきたらそーくんに堪能させてあげましょう」


レアも最初は奏介にしか触ることを許してなかったのだがこの短い期間でダイブ心を許していた。


ただやっぱり1番懐かれているのは奏介であり、真夏と奏介がこっちおいでというポーズを同時に取れば真っ先に奏介の方に向かうだろう。


真冬にも奏介と同じくらいレアは懐いているので、やっぱり最初に関わっていたというのがある。


真冬は一番最初にレアと関わっていたし、奏介は二番目とはいえ1体1でしばらく過ごしていたのもあると思う。


「レアくんって小柄ですよね? ちなみに何歳なんですか?」


「野良猫だからわからないですね……動物病院に1回行ってみますか」


「なんか猫って病院に行く時はものすごい暴れるって聞いたことあるんだけど」


「その時は1番懐かれてる奏介さんに任せればなんとかなるでしょう」


奏介は病院に行かされることになったが本人はもちろんその事を知らないのだが、真夏たちがお願いするなら奏介はいきなり行ってと言われても普通に行くだろう。


まぁさすがに真夏たちも今日行けと言う気は無い。


「とりあえず動物病院に行くのはしばらく後でいいとして、奏介くんは財布を置いて外に出ちゃったけど何してるんだろ」


「え、財布なしてま外出して行ったんですか!?」


「だってここに置いてあるし〜。届けた方がいいかな?」


「いや向こう側にスマホも置いてありましたし、今どこに奏介さんがいるか分からないので届けるのは無理ですね」


奏介は財布とスマホ無しで、ただ街をぶらぶらと歩いているだけでなのだが別に暇そうにはしていない。


逆に街を歩いて景色を眺めたりできて楽しんでいた。



※※※



(もう分からない場所まで来ちゃったな、ここら辺で進むのをやめないと晩御飯の時間に帰れないからな)


奏介はずっと街を歩き続けて、家から相当離れた場所まで来ていた。


ここまで来ると奏介も見た事ない街並みだったので、スマホと財布が無くても子どもたちを見てだいぶ楽しんでいた。


いやちょっと待て子どもたちを見て楽しんでたって普通にヤバいやつじゃないか。


世間ではこのような人のことをロリコン、ショタコンと言うらしいがさすがの奏介も悪評が着くのは避けたいだろう。


(離れの場所に来ていてよかった〜)


近くの公園などでこんな風に子どもたちを見ていたのなら知り合いとかにばったり出会ってなんか噂されていたかもしれない。


ただ今奏介が居るのはだいぶ離れた、知らない場所で奏介のことを知っている人は居ないのでセーフだった。


「そろそろ帰るか」


俺はくるりと後ろを向いて、歩いてきた道を戻り始めた。


ただ案外遠くまで来ていて時間が結構すぎていることをスマホがなくて気づかなかったが、さっきの公園の時計を見ると午後5時だったので奏介は少しスピードを上げて道を進み始めた。


そして奏介が家に着くと叶を帰っていて、真夏とレアが奏介を出迎えた。


「あ、真夏さんと……レアはいつも通りかな」


「やっぱり私より奏介くんの方に懐いているだよね〜」


「あはは、それは俺にも分からないからどうにも出来ないかなぁ。それじゃあレアにご飯あげてくるね」


俺はレアを抱えながら部屋に入った。


キャットフードの裏に書いてある説明を読みながらお皿に入れてもいい量だけ入れて、レアの前に差し出す。


俺はレアが食事している姿をすぐ隣で眺めている。そうでもしないとレアが俺のところにまで来てご飯を食べないからだ。


そしてレアがご飯を食べ終えると、奏介はレアを抱えてリビングに移動してレアを膝に乗せたまま今度は奏介がご飯を食べ始める。


「昨日もそうでしたけど、レアくんはやっぱり奏介さんの膝の上が1番落ち着くのでしょうか?」


「さぁ? ただレアがここに居たくて居るんだからそうなんじゃない?」


レアがここに居たいのなら奏介たちはそのままにしておく。


そして布団を移動させたのでレアと奏介は今日も一緒に眠りについた。

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