第42話
ホワイトデーになったのだが、チョコをくれた人の中にはあまり関わったことがない人もいるのでそのような人へのお返しは下駄箱に入れておいて、叶や真夏さんにはちゃんと手渡しをした。
そして帰りは叶と真夏さんと3人で帰っていたのだが、なんか言い争っている。
「このチョコタルトを作るのを手伝ったのは私だよー? 叶さんは私にも感謝した方がいいんじゃないのかな〜」
「たとえ作り方を教えたのが貴方だったとしても、このチョコタルトを作ったのはそーくんで渡してくれたのもそーくんなので、感謝する相手は貴方じゃないと思いますけどね」
「真夏さんがいなかったら2人にも渡すことは出来なかったし、俺は真夏さんに感謝しているけどね。あんなボロボロのお菓子をあげたくはなかったし」
奏介は以前、教えてもらったのにも関わらずクッキーとしての形を保っていない味だけクッキーを作ってしまったので、教えてもらって感謝していた。
渡される側もあんなボロボロのお菓子が返ってきたら微妙な反応になるだろうし、教えて貰ってまともな物を作れたことを奏介は喜んでいた。
叶と別れて家に着くと何故か真冬さんが家の目の前でしゃがみこんでいた。
「真冬さん、家の前でしゃがみこんでどうしたの? もしかして怪我でもしちゃった?」
「ふぇ!? 帰ってきてたんですか……」
こっちに振り向いた瞬間に真冬さんの近くに小さな猫の姿が見えた。
その猫は元気……とは言えない姿だったので、恐らく真冬さんはこの猫のお世話をしていたのだろう。
「この猫ちゃん、元気がないみたいですし……あ、あの私のわがままかもしれませんけど、この猫を飼いたいなぁ……って」
「家主は俺じゃないから俺に拒否する権利は無いと思うから真夏さんに聞いてね」
「猫は私も好きだから、飼うことに賛成ー! 飼うことが決まったのなら早速猫のご飯とか色々買いに行こう!」
ほんの一瞬で真夏は家の中に入って着替えて出てきた。
「真夏……? この子をまず家の中で誰かが見守らないといけないんですけど、というか私にも準備ってものが」
「それじゃあ姉妹で行ってきなよ、この猫は俺が帰ってくるまでお世話しておくから」
俺は以前の猫カフェの時から少し猫に興味を持っているので触れ合う時間を作りたかった。
とりあえず俺は猫を抱えながら家に入って二人が出て行くのを見送った。
「この猫……妙に落ち着いてるな。猫って警戒心が強いと思ってたんだけど……というかさっき元気に見えなかったのが嘘みたいだ」
俺が一旦ソファーに猫を下ろしたのだが直ぐに俺の膝に乗ってきた。というか猫カフェの時もこんな感じで乗って来て寝ていた気がする。
今はご飯も何も無いので、こんな感じで寝ていてくれていた方が俺としても助かる。
猫の寝ている姿を見ていると不思議とこちらも眠くなってきてしまい、奏介は猫を膝に乗せたまま寝てしまった。
※※※
「ペットショップとーちゃーく!」
「そんなはしゃがなくても……というか何を買えばいいかも分からないし店員さんに聞いて必要な物を買えばいいと思うけど」
真夏は猫が好きなので家で猫を飼えるということになってものすごいはしゃいでいる。
真冬も猫が好きで飼えることになって喜んでいるのだが、真夏との違いはそれを表に出しているかどうかの違いだ。
真夏たちは店員さんに色々聞いてご飯やトイレ、布団などを購入した。
「おっもい……重くて肩が外れそう……」
「真夏が持ってるのはご飯だけじゃん、私はトイレとか布団とか、その他の物を全て持ってるんですがー?」
「お姉ちゃん、頑張ってね〜。私はご飯を持つだけで精一杯だから」
ご飯はしばらく買いに行かないで済むように大容量の物を買ったので重いのには重い。
ただ真冬は重さこそご飯より軽いとは思うが両肩に抱えなければいけないほど一つ一つの物がでかいので大変だろう。
「こんなこと言っててもあれだし早く帰ろうよ、お姉ちゃん」
「言い出したのは真夏の方でしょう……まぁ早く帰ろうか」
2人は荷物を抱えながら家に帰ったのだが案の定、2人は奏介が猫と一緒に寝ているところを目撃した。
「私も猫ちゃんと一緒に寝てみたい!」
「それは後からだよ真夏、あとあまり騒ぐと起こしちゃうかもしれないし」
「はーい……」
「とりあえずさっさと買ってきたものを置いてトイレとか設置しなきゃ行けないものを設置するよ」
真夏たちは設置しないといけないものを設置して、ソファーに座って寝顔を眺めていた。
「んあ……おはよう2人とも……買いたいものは買えた……?」
「買えたよ! そういえば、奏介くんって猫カフェの時もそうだったけど猫に懐かれてるよね」
実際前の時も今も膝の上に乗ってきて寝られてるので奏介が猫に懐かれやすいのは間違いないだろう。
布団をわざわざ買ってきてもらったので俺は猫を抱えて布団の方に移動させたのだが、移動させた瞬間にこちらに飛びついてきた。
「えー完全に懐かれてるじゃん……。ほらこっちにおいで〜」
真夏がそう言うが猫は奏介の腕の中から移動する素振りを見せない。
「あはは、完全に俺に懐いちゃってるね。まぁ真夏さんにもゆっくり懐いていくと思うから大丈夫だって」
「そうだといいけどね」
それからご飯を食べている時も猫は奏介の近くで食べていて、食べ終わったあとは奏介の膝の上に移動していた。
奏介がご飯を食べている時も膝の上から移動しようとしなかった。というか奏介が近くにいないとこの猫はご飯を食べなかったほど、この猫は奏介に懐いている。
「これは布団とかトイレも奏介さんの部屋に置いておいてご飯は奏介さんにあげてもらったほうがいいかもしれまそんね」
「ん、俺はそれでいいけど真夏さんが……」
真夏は猫が好きなのでものすごい寂しそうな顔をしているが、寂しそうな顔をした真夏を見た猫は初めて真夏の膝の上に乗ってきた。
「ね! 見てみて、初めて乗ってきてくれたよ! 可愛い〜」
真夏さんは猫が自分に構ってきてくれたことが嬉しいのかまるで子どものように分かりやすくはしゃいでいた。
「良かったね、真夏さん」
しばらくすると猫は眠くなったのか奏介の部屋に移動させた布団の方に向かって寝てしまった。
「それじゃあそろそろ私たちも寝る準備をしましょうか」
「いや俺は寝ててまだ風呂入ってないし眠気が全然ないから少し勉強してから寝るよ、2人ともおやすみ」
俺はそう言って自分の部屋に戻って猫を撫でてから風呂に入った。
風呂から上がって奏介が眠ろうとすると、布団で寝ていた猫が奏介の布団にまで移動してきた。
「みゃあ~ん」
「可愛い……そうか、一緒に寝たいんだよな。それじゃあ入っていいぞ、おやすみ」
奏介は猫を再度撫でて眠りについたのだが1つの考えが頭によぎった。
(そういや名前、どうしようかな……いや明日休みだし真夏さんたちと3人で決めればいいか)
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