第38話

雨ケ谷合流したのはいいのだが、クリスマスに何をすればいいかなんて全く知らない。


中2ぐらいまでなら叶と一緒に出かけることもあったのだが、奏介たちはもう高校生だし中学生の時と比べてしたい事は変わるだろう。


俺とより雨ケ谷の方がクリスマスに女性と何をするのがいいか詳しいだろう。


「こっちが雨ケ谷に声を掛けたんだし、2人が先に行きたいところに行っていいよ。俺たちはあとから行くから、それでいいよね?」


「それでいいよー、雨ケ谷さんが行きたい場所にも何か気になるものがあるかもしれないし」


奏介はとりあえず2人にクリスマスプレゼントという名目で日頃の感謝を渡そうと思っているのだが人が欲している物を知らない。


2人ならなんでも嬉しいと言ってくれそうだが、できるなら相手が欲している物を渡したい。


雨ケ谷と一緒に歩いていって着いたのはカフェ……と言っても普通のカフェではなさそうだった。


「和くん、ここだよ!」


「雨恵が行きたいって言ってた猫カフェなんだけどさ、せっかくなら2人も一緒に入るか?」


隣にいる真夏さんを見るとものすごい目を輝かせていたので入りたいということだろう。


「真夏さんが入りたそうにしてるからご一緒しようかな」


「え、そんなに入りたそうに見えた?」


「猫の画像を見つめる目が輝いていたからね〜。まぁ真夏さんが行きたい所に俺はついて行くから」


俺の認識では猫カフェという物は普通のカフェに猫が数匹いる程度と考えていたのだが中に入ってみると全然違う景色が広がっていた。


猫は数匹程度では無いし、テーブルよりキャットタワー等の猫の遊び道具などが多くあり、飲食スペースなど店の極わずかなスペースだけだった。


「猫カフェってこんな感じなんだ……。カフェというより猫と戯れる場って言った方が良いくらい猫いるけど」


「猫カフェはカフェとして楽しむより猫と戯れる方が目的ですから。それに猫に餌を上げたりすることもできるんですよ」


この様子じゃ立花さんは相当な猫好きだと思われる……というか確定である。


入ってすぐは普通のカフェと同じで席に案内された後メニューを見て頼むのだが、メニューの内容が猫カフェって感じがする。


「この猫のラテアート可愛い……それよりまずは猫と戯れることからだね!」


「はい!」


そう言うなり真夏さんと立花さんは猫の方へ飛んでいった。


「まぁ俺はそこまで猫と戯れたいってわけでもないしここで見守っておこうか、微笑ましいし」


「まぁそれもそうだな。可愛い姿は写真に収めて……っと」


雨ケ谷がすぐ隣で猫と戯れている2人の写真を撮ったので「後でくれ」と一言耳打ちした。


少し雨ケ谷と話していると膝の上に1匹の猫が飛び乗って来て、眠りの体制になってしまった。


「うーん、なんで俺の膝の上なのか……」


「まぁまぁ、可愛いんだからいいだろ」


「いや、何がする時に起こしてしまいそうだなって」


猫は俺の膝の上で気持ちよさそうに寝ているので、とりあえず頭を撫でているのだがいまいち猫の良さが理解できない。


そもそもとして奏介は動物が好きな方では無いのでいくら触っても理解はできないだろう。


「というかここに入ってずっと猫の話をしてるだけで、何も頼んでないからさすがに頼んだ方がいいんじゃないか?」


「まぁ確かに、2人のは後で聞くとして俺たちは先に頼んでおくか」


店員さんを呼んで2人分のコーヒーを頼もうとすると、2人が一瞬だけ戻ってきて注文を伝えた後にまた猫のところに戻って行った。


「2人が楽しんでるのならなんでもいいか」


しばらく注文したものが届くと2人が戻ってきて頼んだものを飲み始めた。


コーヒーを飲んでいる時も猫は俺の膝上ですやすやと眠っており、時間が来たので帰ろうにも帰れない。


「まぁ仕方ないから、猫を下ろしちゃおうか」


真夏さんが俺の膝の上にいた猫を床に下ろして、その猫に手を振った後に店を出た。


俺はやることがあるので雨ケ谷に真夏さんを任せて別の店に移動した。


日頃の感謝を伝えるために何か物を買いに来たが俺が思いついたのは‪花を贈ることだった。


俺は少しばかり花について調べて花言葉という物を理解した。


(2人に合う花……花言葉は感謝とか大切ない人。ピンクのカーネーション辺りを買うのがいいだろうか?)


とりあえず俺は花屋の前に立ってそのようなことを考えていると、店員さんが声をかけてきた。


「どんなお花をお探しですか?」


「大切な人……まぁそのような感じの人に感謝を伝えたい、そんなところですかね」


「それならカランコエがいいでしょう」


「花のことはよく分からないので店員さんがそう言うならそれを買います。2人分で」


「はい、わかりました。普通のカランコエだけではなくてカランコエを模した髪留めなども売っておりますけどどうしますか? 」


真夏さんたちが髪留めを欲しがっているかどうかは分からないが、そのままの花を渡すよりその花を模した役に立つものを買った方がいいだろう。


「それじゃあそのカランコエの髪留めを2つ買います」


「お買い上げありがとうございます! プレゼント用なんですよね? それじゃあラッピングしておきますね」


思い返してみたら久しぶりに自分のお金で物を買ったような気がする、今までなんでも買ってもらってばかりだったので自分で買った物をプレゼントできるということがなんだか嬉しかった。


俺は綺麗にラッピングされた髪留めを受け取ってカバンの中にしまい、真夏さんに連絡をして合流した。


「奏介くん、用事は終わった?」


「終わったよ、真夏さんも買いたいものは買えた?」


「うん買えたよ、それでなんだけどメリークリスマス!」


俺は真夏さんからとある白い箱を渡された。


「開けていい?」


「もちろんいいよ! 奏介くんが絶対喜ぶ物だと思う、だって雨ケ谷さんに聞いたんだもん!」


中を開けて入っていたのは前から欲しいと思っていたキーホルダーだった。


「雨ケ谷、よく俺がこれを欲しいとわかったな」


「どれだけお前の友達やってると思ってるんだ」


「まだ1年も経ってねぇよ。まぁそれはいいとして、2人ともありがとう」


俺は早速そのキーホルダーを鞄に付けた。


「それじゃあ雨ケ谷も立花さんもまた明日」


「おう、また明日」


雨ケ谷たちと別れて俺は家に戻って鞄から綺麗にラッピングされた髪留めを取りだした。


(渡しに行くか……)


「真夏さん、真冬さん、メリークリスマス。これクリスマスプレゼント、気に入ってもらえるか分からないけど俺なりに考えたつもりだから」


「「ありがとう!」ございます」


中に入っているのは2人とも同じカランコエの髪留め、そしてカランコエの花言葉は……。


───あなたを守る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る