第32話
俺がやっているメニューを隣で雨ケ谷も同じようにやっているが、俺に指摘しながらする余裕もあってまだまだ大丈夫そうだった。
今やっているのは「まずは体力作り」と雨ケ谷が言うのでランニングマシーンだ。
ランニングマシーンのスピードの調節の仕方がわからないので設定は初期のままだが、このままでも充分運動になる。
そんなことを考えていたら横から手が伸びてきてボタンを数回押した後に手は引っ込んでいった。そして俺の走っているランニングマシーンのスピードが早くなった。
「ちょちょ、急にスピードをあげるなって!」
「悪い悪い、でもこれくらいは平然としてもらわないと困るからさ」
一瞬こけかけたが、バランスを取り直して走り出した。
まだ余裕があるので、雨ケ谷と話しながら走っていると「終わり」と言ってランニングマシーンの電源を落としたので、俺も続いて電源を落とした。
「ランニングマシーンはまだまだ余裕そうだったな。ええと次はこのマニュアル通りに行けばあれだな」
雨ケ谷が指さした方向を見るとペンチプレスが置いてあった。
「んーまずは何キロぐらいがいいだろうな……。なぁ神楽、どんぐらいなら大丈夫そう?」
「いやジムに来たのも初めてだから、自分がどのくらいまで持てるかなんて分からないって。とりあえずいちばん軽いやつからやっていって段々重さを増やせばいいんじゃないの?」
とりあえず俺は1番左にあったペンチプレスに寝転がり、しっかりと握って持ち上げようとしたのだが……。
「ちょっと待て神楽、それはいちばん重いヤツ……」
「うああああああああぁぁぁ……」
雨ケ谷の注意は遅く、既に奏介は持ち上げようとして力を加えた後だった。
その後奏介は直ぐにその場から離れていちばん軽いやつのところに移動して、バーベルを上に持ち上げては下げてを繰り返していた。
「んー案外、神楽って力あるんだな。そのバーベル60kgなんだけど」
「結構きついけど、無理ってわけではないかな。これより重くなったら無理かもしれないけど、今の状態なら大丈夫」
あとから雨ケ谷から聞いた話だが筋トレ経験のない男子のバーベルの平均重量は40kgらしいので、案外自分に力があったということが理解できた。
「真夏さんを守るだけなら今の状態でも十分務まりそうだけどな」
「まぁ警備員としての仕事で守らないといけないのは1人じゃないからさ、ちょっとぐらいは多く守れるために力をつけておきたいんだよ」
「それじゃあ俺も明日先生に言って警備員になろうかなぁ、出し物を回っても人だらけで並ぶことになりそうだし。俺は働いてた方が楽しい」
雨ケ谷も警備員になってくれるのなら心強い話だ。
雨ケ谷は普段からジムに通ってることを示すかのようにかなり引き締まったからだをしていて筋肉もとてもあることが服越しでもわかる。
それでもゴリマッチョってわけではなく言うならスレンダーマッスルだろう。
「一旦休憩でもするか。ひとつ聞くけどプロテインの味が嫌いとかないよな?」
「飲んだことないけど多分大丈夫だと思う」
俺は雨ケ谷が持ってきたコップ? みたいな容器を受け取って、ゆっくりと中に入っている薄茶色の液体を飲んだ。
味は普通のココアとさほど変わりはなく、強いて言うなら少し口触りが違うということぐらいだろう。
「プロテインって美味しいんだな。昔プロテインをジュース替わりに飲んでたやつの気持ちが少しわかった気がするわ」
「確かに美味しいけど、飲みすぎるのは身体に良くないから程々にしておけよ。よーし休憩も終わったし次に行くか!」
俺が次に連れてこられたのは小さな小部屋で棚の上に色んなダンベルが置いてあった。
「ええと1kgから60kgまでのダンベルがあるから好きな重さのダンベルを選んで、その後はダンベルを持ったままバービージャンプ30回かな」
「ジャンプするんだったら少し軽めの方がいいかなぁ。20kgぐらいでまず試してみてそこから調整していこうかな」
バービージャンプを始めたが、今までやってきた筋トレの中で1番キツかった。
隣を見ると俺より素早い動きでバービージャンプをしている雨ケ谷の姿があったので、それに追いつくためにも少しスピードをあげた。
雨ケ谷は今まで俺と同じメニューをしていたのだが、疲れているような様子は伺えなかった。
「お前のことだし真夏さんが真冬さんに、晩御飯前に帰ってきてと言われてるだろ? もう18時だし今日は終わりにしよう」
「ん、それじゃあ明日も同じ時間に来るから。あと毎回雨ケ谷のプロテインを飲む訳にはいかないし、家でもするためにプロテインを買いたいんだけど売ってる場所知らない?」
「それなら受付の前のところにショップがあるから」
俺はそのショップに向かってプロテインを買ったのだが、案外値段が張ることに少し驚いてしまった。
外は少し冷えていたので上着を羽織って家に戻った。
筋トレ後で少し汗をかいていたので、帰って直ぐに風呂に入った。
「奏介くーん、筋トレどうだったの?」
風呂から上がってリビングに向かうと早速筋トレについて聞かれた。
「結構、楽しかったよ。雨ケ谷も付き合ってくれてるから、警備員に見合うように頑張るから。あ、そういや尼崎も警備員になりたいって言ってたぞ」
「2人が警備員になってくれるなら、すごい安心できるかなぁ。雨ケ谷さんってすごい引き締まってるじゃん?」
今回まじかで見たが、本当に引き締まってる身体だったということは鮮明に覚えている。
ご飯を食べ終わったあとに少しストレッチをしてから眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます