第30話
10月になり、もうすぐ文化祭の時期だ。
学年によって日にちは違うらしいのだが、その前に何より重要なことがある。
「それじゃあ俺らのクラスの出し物は何にする? 言っておくが在り来りなやつだと他のクラスと被って抽選になることだけは理解しろよー」
文化祭の出し物の定番と言えば喫茶店とかお化け屋敷とかだと思うが、クラス内では定番にちょっと付け足しをしようって話になっている。
話として上がったのはメイド喫茶……だったのだがそもそも誰がメイド服を着るんだという疑問が俺の頭の中で駆け巡っていた。
「メイド喫茶……いいかもしれないが予算の問題とかで凝ったメニューは提供できないし、何より服をどうやって用意するんだよ」
「服は大丈夫だよ、お母さんがコスプレイヤーだったから家に何着があるよ。それを持ってくる」
「んー茅森の母親に興味が湧いてきたが、そこは一旦置いとこう。まぁ服はいいとしてメニューはどうするんだ?」
「それはまぁ料理が上手な人に簡単なお菓子を作ってもらいたいところだが……」
クラスの実行委員はそう言って周りを見渡し始めた。
その時に手を挙げたのは真夏さんで「料理なら任せてください」と自信満々に手を挙げたのでキッチン担当はこれで決まった。
「料理は任せてって言ったんですけど、正直メイド服を着て接客したいってのも少しあるので、そこは考えてもらっていいですか?」
「夕凪さんがそう言うなら考えるよ。それじゃあ俺らのクラスの出し物はメイド喫茶ってことでいいかな?」
メイド服姿を見たいっていう人とメイド服を着てみたいって言う人が多くいたのでクラスの出し物は確定した。あとは他のクラスと被っていないかだ。
俺も真夏さんのメイド服姿を見たいとは思っている。
(あの時から髪型は俺の好みに合わせてくれてるし、メイド服を着たら可愛すぎて倒れるやつがいっぱい出る気がするなぁ……まぁ俺を含めだが)
「ええっと、それじゃあ服の件に関してだけど誰か女子でメイド服を着る人は、立花さんに採寸してもらってそれを茅森に伝えてくれ」
「メイド喫茶だから接客は女子だけになるけど、男で裏方に行きたい奴とかいるか?」
俺は普段お世話になってるし、真夏さんのことを出来るだけ手助けしたいので裏方として立候補していた。
「回る時間が減るけどいいのか?」と聞かれたがそもそも回ること自体俺の柄じゃない。俺は裏方にいるのが合っている。
「それじゃあこの後の集会で俺たちはメイド喫茶ってことで話を進める。まぁ他クラスと被った場合は運ゲーになってしまうが、できるだけ話し合いの方で勝つようにするよ」
実行委員のクラスメイトはそう言って別の教室に移動して行った。
そして帰り道、真冬さんと文化祭の話をしていたが当日のお楽しみということで内容を言うことは禁じられてたのでそこまで深い話はできなかったが、帰ってから真夏さんと二人で話していた。
「真夏さんはメイド服を着たかったの?」
「着たかったってのもあるけど、1番は……奏介くんに見てもらいたいからかな。見た目だけで私に近づく男子たちはいっぱい居るけど、内面まで見てくれたのは雨ケ谷さんと奏介くんぐらいだから」
「俺とかに見せたいってのはわかったけど、接客をしないといけないから色んな人に見せることになるけど?」
「それは仕方ないけど、できるだけキッチンに居て奏介くんにだけ見せるっても逆にいいかな」
真夏の容姿ならキッチンに留まるということは出来ないだろう。必ずどこかのタイミングで接客を求められてしまうだろう。
逆に真夏が接客をしたのならば真夏目当てで客足が伸びて売上1位ってことも有り得る。
「真夏さんには悪いんだけどさ、料理は俺に全て任せて、接客に当たってくれないかな? その方が売上1位を狙えると思うし」
「売り上げ1位になったクラスは何かが貰えるんだったねー。私は別にいいけど奏介くん、普通の料理は作れるけどお菓子は作れるの?」
確かに盲点だった。
俺は並の料理はできるが、お菓子とかの凝ったものを作ることが出来ない。
「もう、仕方ないなぁ。文化祭までもうしばらく日数はあるしそれまでの間に私が奏介くんにお菓子作りを教えてあげるよ」
「本当に! それならものすごい助かる。
文化祭が終わったあとに何かお礼するよ」
早速、真夏さんとキッチンに向かうと、いつも通り真冬さんもいたのだが、真夏さんが文化祭の為と説明してくれて、俺のお菓子作りを真冬さんも手伝ってくれることになった。
お菓子作りをするのは初めてなので、ダークマターを生み出して、材料を無駄にしないかとても不安だったが、今回の先生2人がとても優秀なので少し異変があればすぐに指摘してくれるだろう。
別に奏介は絶望的に料理が下手っていうわけではないので双子に0からしっかりと教えてもらえば、まともな物を作れるようになる。
これから教えてもらうことになってるのはメニュー案に出てきたクッキーだ。
「それじゃあ今から料理教室を始めます!」
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