第29話
俺は昨日、決意の表明になるかは分からないが一応目にかかっていた髪をかからないぐらいまで切ってから寝た。
もちろん2人には多少驚かれたが、目にかかって邪魔だったからという理由で誤魔化しておいた。
そして学園に行くといつもより色んな人に声をかけられるような気がする。
「印象が変わったねぇ」などのことを言われるが多少髪を切っただけでそこまで変わるものだろうか。
「やっぱ自分で切ったから多少乱れてしまってるか」
「まぁ少し違和感あるけど、そこは家に帰ってから真夏さんに調整してもらえばいいんじゃねぇの?」
「それは真夏さんに聞かないと分からないだろー。真夏さんがなんでもやってくれると思うなよ雨ケ谷」
「別に私はいいよー。奏介くんがいつもより可愛くできるのなら喜んでやるよ!」
男に可愛さなんていらないと思うが、俺はそこら辺のセンスというのか、とりあえずそこら辺が俺は疎いので知識のある真夏さんに反論する気にはなれない。
「こう言ったのもなんだけど、私よりお姉ちゃんの方が切るのは上手いと思うし、切るならお姉ちゃんに頼んでね、ついでに私も一緒に切ってもらおうかなぁ、だいぶ伸びてきちゃったし」
「今の髪型、可愛いのに勿体なくない?」
奏介は無意識に言っているのだが真夏の方は急に可愛いと言われて少し顔が赤くなっていた。
隣で聞いてた雨ケ谷に「無意識ならすごいな……」とちょっと驚き気味に言われたが、俺からしたら本音を言っただけなので理解できなかった。
「奏介くんは……好きな髪型とかあるの?」
ぶっちゃけどんな髪型でも真夏さんは可愛いと思うので、好きな髪型と言われると俺は少し悩んでしまう。
というかそんなに髪型について詳しくないので、定番の髪型ぐらいしか俺は知らなかった。
「好きな髪型って言われてもなぁ……うーん、今の髪型かな。可愛いし、逆にそれ以上に似合う髪型は俺から見たらないと思う。雨ケ谷から見たらどうかは分からないけど」
「そこで俺に振ってくるなよ。聞くなら雨恵の方が向いてるだろ、女子だし」
男子より女子の方がこういう髪型ついて詳しいのは当然の話だろう。
奏介は髪型なんてどんな見た目でもいいと思ってるが、真夏はそんなことは思ってないだろう。髪の手入れだって欠かせてない。
そして家に帰ったあと俺は、真冬さんに髪を切ってもらっているのだが、真夏さんにずっと見つめられていてなんだが落ち着かない。
俺は真夏さんの好みの髪型にしてもらってるので、真夏さんは早く好みの髪型になった俺を見たいだけなのだろう。
「まぁこんなものでしょう。次は真夏の番だから、早く来てねー」
「はーい。後でじっくり見せてね」
立花さんから個人的に色々髪型のことを聞いて、真夏さんに似合いそうだったのがショートヘアーのツーサイドアップ? という髪型だった。
なんでも似合うと思うのだが、俺的に似合うと思った髪型がこれだった。
「奏介くんも随分、特徴のある髪型を選んできたよね。多分雨恵ちゃんとかに聞いたんだろうけど」
「その通りだよ。立花さんに色々と髪型のことを聞いて、似合いそうな髪型を選んだ」
しばらくして真夏さんも髪を切り終わったので、2人で見せ合いというか一方的に俺が見られていた。
「やっぱりこの髪型にして正解だったなぁ、前の奏介くんは折角顔はいいのに髪で目が隠れてたからさ」
「はは、ありがと。真夏さんはやっぱりどの髪型でも似合ってるし可愛いよ。でも正直なことを言うとこの可愛さは俺だけの秘密にしておきたいところ……」
「あ、ありがとう……」
真夏は近くにあったクッションで顔を隠しながら奏介にそう言った。
想いを寄せてる相手にそう言われたら誰だって嬉しいものだ。
「お披露目会してるところ悪いですけど、とりあえず切った時に落ちた髪を掃除して貰えますか?」
「そうだった、あとは2人でやるから真夏さん達は休憩してていいよ。2人の髪を切って疲れてると思うし」
「疲れてるわけではないけどお言葉に甘えさせてもらうね」
そんなに髪を切ったわけではないし2人でしていたのですぐに掃除し終わった。
その後はお披露目会の続きと言えば違うのだが、とりあえず俺が膝枕(強制)されながら真夏さんが俺の髪を撫でていた。
「あのぉ……真夏さん?」
「ん、何? 触り心地凄い良いね」
「それなら良かった……じゃなくてなんで俺は膝枕されてるの?」
俺がそう聞くと「触りたかったから」と返答が返ってくるが触るだけなら膝枕をしなくてもいいじゃないかと思ってしまった。
何より、俺の心臓がバックバクだし普通に考えて膝枕されているのだから落ち着けるわけないのだ。極めつけには学園1の美少女に膝枕されているのだ、色々が重ね合って俺の理性は限界に達していた。
「ふあぁ〜……真夏さんが満足するなら俺はそれでいいんだけどさ……」
「なんか眠そうだね? 別に寝たかったらこのまま寝ていいよー、私は寝てる時も触り続けるだけだから」
俺はさすがに迷惑……と考えたが睡魔には勝てずに、膝枕されたまま寝てしまった。
「おやすみ、奏介くん」
───私は誰もいないことを確認して奏介くんの頬に甘い口付けをバレないようにした。
真冬にはバレなかっただろう、ただ奏介にはどうだろうか……。
「……」
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