第13話

朝起きると、既に2人は起きていた。


「ん、おはよう」


「おはようございます……って目にクマができてますけど昨日眠れなかったのですか?」


(眠れるわけないだろ……)


2人が一緒のベットにいる状態でまともに睡眠を取れるわけない、落ち着かない状態で無理やり意識をぼんやりさせ眠りについたぐらいだ。


「いや別に大丈夫だよ、ちゃんと十分な睡眠時間は取ったから。母さんがリビングで待ってるだろうし、早く向かおうか」


これ以上追求されないためにも奏介は話題を変えて真っ先にリビングに向かっていった。


真冬と真夏の頭には?が浮かんでいたがそれを気にする必要は奏介には無い。


「おはよう3人とも、ご飯はもうできてるから食べて置いてね。私はちょっと買い出しに出かけてくるから、あっちに帰るとしたら私が帰ってきたからでお願いね。それと……」


母さんはそう言って俺の方を睨んできたのでゆっくりと俺は頷いた。


そうすると母さんは家から出ていった。


「え、どういうこと? 今の一瞬の無言の間にどんな会話が親この間でされたの!?」


「そりゃまぁ色々と言われたよ」


あの睨みつけは絶対に真夏ちゃんと真冬ちゃんに手を出すなということだろう、心配されなくても2人が嫌がることは絶対しないと誓ってるのだが、まぁ念の為だろう。


とりあえず3人は用意されていた朝ごはんを食べた後、テレビを見ていた。


「そういえば、もうすぐ夏休みですね」


「確かにそうだな、といっても特にやることもないしなぁ」


今は7月の中旬、あと数日間だったら夏休みの始まりだ。


「いつも出された宿題を早いうちに終わらせて、それからずっと勉強だけしかしてこなかったし。まぁその時は遊んでくれるような友達がいなかったってもあるけど」


「今は私たちがいるからいいじゃん! 奏介くんも勉強ばかりじゃなくてたまには遊ばないと」


「でもなぁテストの結果的にも俺はあの結果を取り続けないといけないっていうプレッシャーがあるからなぁ。でもそれは真夏さんたちも同じことじゃない?」


テストの結果は1位が奏介、2位が真冬、3位が真夏だった。ちなみに雨ケ谷は49位だった。


真夏も真冬も高得点を取らないといけないというプレッシャーを感じていると言っていたので勉強を怠るということはないだろう。


「確かにそうだけどずっと勉強だけじゃ疲れるからねー、たまにはリラックスもした方が私は勉強も捗ると思うけど」


「あの時はやることが勉強しか無かったからずっと勉強してたけど今は真冬さんも真夏さんもいるし雨ケ谷もいるからリラックスもいいかもな。それじゃあ夏休みに5人でどこかに行くのか?」


「どこに行くかは決めてないけど、もう誘ってはあるから5人で考えていこうよ」


もう雨ケ谷と立花さんに声をかけてることも初耳だし、もう既に5人で会話する用のグループが作られたことも初耳だった。


でも既に話が伝わってるのならあとは行く場所を決めるだけなので、当日に誰かが欠けるということは無いだろう。


「俺は別にどこでもいいから、あと雨ケ谷も立花さんが行きたいところでいいって言うと思うから女子3人で決めておきなよ。俺はどこになっても文句は言わないし、雨ケ谷も多分文句は言わないだろうし」


「それじゃあ夏休みのその日まで楽しみにしておいてね! みんなが飛びったきり楽しめるような場所を選ぶから!」


「はしゃぎすぎですよ真夏……ここは私たちの家ではないんですよ?」


真夏さんはハッとしたような様子で謝ってきたが別に何も気にしてないので「気にしないで」と慰めておいた。


別に俺もそっちの家でいつも通り過ごしていたのだからこっちの家でも別にいつも通り過ごしていてもらって構わないと思ってる。


それにこれから長らく一緒に過ごすことになるんだからこんな細かいことで気にしていたらキリがない。


「真夏さんは元気があって微笑ましいからいつも通り過ごしてもらって構わないよ」


「奏介くんそれ、私のことを子どもだと思ってない? というか確実にその微笑ましいは子どもっぽくて可愛いって意味だよね?」


「実際真夏は子どもらしいと思いますよ? まぁそこが昔から可愛いんですけどね」


「もーお姉ちゃんまでそう言うこと言う……」


少し真夏がしょんぼりしまったが真冬がチョコを渡すとすぐに立ち直ってもらったチョコを口に運んでいた。


「扱い慣れてるんだな……」


「何年姉妹として一緒に過ごしてきたと思ってるんですか、真夏の扱いぐらい理解しています。甘いものが好きなのでだいたいしょんぼりしてる時は甘いものを渡せば立ち直りますから。ただ本気で拗ねてる時はなかなか口を聞いてくれませんが」


真冬さんはそういうところも含めて真夏は可愛いんですと、俺の耳元で力説してくれた。


「何2人でコソコソ喋ってるのぉ?」


「いやなんでもないよ。というか口にいっぱいチョコが付いてるよ、拭いてあげるからちょっとこっちに来て」


俺は真夏さんを手元に近ずけてウエットティッシュで真夏さんの口元を拭いた。


「これでよし」


「あ、ありがとう」


少し真夏の顔が赤くなってるのは抱き寄せるような形になっていたからだろう。


奏介はただ口に付いているチョコを拭き取っただけだと思ってるので赤くもなんともない。


「話変わるけど奏介くんってなんの部活に入ってるの?」


「卓球部かなぁ、そんなに忙しくないし勉強と両立できるから。テスト期間で全部活が停止してたけど、再開したから大会に向けてガチ練し始めたんだよねぇ」


「ひとつ聞きたいんだけど、大会って何日なの?」


「え、来週の土曜日」


俺が何事もないように言うと、2人は少し俺に迫ってきて「「応援に行くからね!」」と言われたので「どーも」と返しておいた。


(2人が見に来ると言うならよりいっそう気合いを入れないとな。エースとしても負けられないし、2人の前では尚更負けられないぁ)


俺がそんなことを考えていると母さんが帰ってきたので買ってきたものを片付けて、真夏さんたちの家に戻った。


「いやぁ奏介さんのお母様、楽しそうな方でしたね」


「母さんの前だから下の名前で呼んでたんだと思ってたけど違ったのか」


「戻した方がいいですか?」


「いや戻さなくていいよ。2人の好きなように呼べばいいよ」


俺はリビングの椅子に座って昼ごはんを持って、2人はキッチンで昼ごはんを作っている。


やっぱりこの生活に慣れてしまっている自分がいる。


しばらくして運ばれてきた昼ごはんを食べた終えた俺は、真夏さんと真冬さんに向かって言葉を紡いだ。


「これからも一緒に過ごしてく中で俺がなにかしでかすかもしれないけど、よろしく」


「「はい!」」


俺はもうすぐ大会があるからと、メンバーに卓球ができる施設を貸切にして練習するぞ! と呼ばれていた。


エースとして練習をサボる訳には行かないので俺はもちろん行くので、真夏さんと真冬さんに行ってくると伝えたら、2人がマネージャー的なことをしてみんなを手伝うから! と言って俺について行きたいと言ってきた。


「ちょっとメンバーに聞いてみる」


俺がグループにメールをすると、マネージャーが欲しかったんだよなぁと返信が来た。


「来て欲しいってさ。みんなもマネージャーが欲しかったらしいし、一緒においでよ。もし良かったらなんだけどさ部活とか入ってないのなら卓球部のマネージャーにならない? 今卓球部にはコーチと部員しかいなくてさ、マネージャーの席が空いてるんだ」


「それじゃあ私たち二人でそのコーチの先生にマネージャーになりたいって言ってこようか」


「うん、そうだねお姉ちゃん。ちょうど部活にも入ってなかったしちょうどいいね! 奏介くんもいるし」


ということで俺は2人を連れて練習所に向かって歩き始めた。

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