第12話

ゲームをするのが初めてらしい真夏と真冬がパーティーゲームとはいえポチポチとボタンを一生懸命押して、操作している姿は2人とも似ていて同じく可愛かった。


奏介は最近はやってないとはいえ、ちょっと前までは普通にゲームをしていたので慣れた手つきで操作している。


「奏介さん、操作に迷いがないですね」


「いやそんなに迷うものでもないし、何回もやったことがあるからなぁ。でも真冬さんはまだ上手い方じゃない?」


俺がそう言って真夏さんの方に目を向けると真夏さんはほっぺたをぷくりと膨らませてジト目でこちらを見つめてきた。


「むー、お姉ちゃんと奏介くんがおかしいだけだもん。私は下手じゃないもん!」


「確かに俺は昔からやってるし真冬さんも才能があると思うけどさすがに……」


真夏のゲームの実力はカバーできないほど低いものだった。


行動が意味不明だし、読めない。


「はいはいどーせ私は下手ですよーだ」


「悪かったって今ここでできる範囲で何でもしてあげるから機嫌直してくれって」


「なら頭撫でて欲しい……お姉ちゃんによくやってもらってたから」


頭を撫でてたのは姉妹だからであって、高校生にもなってしかも男が女の子の頭を撫でるなんてもはや付き合ってるやつみたいなことをしてるが、何でもと言ってしまったからには実行するしかないだろう。


そもそも自分に恋愛感情は無いし、あったとしても真夏さんなんかと付き合えるなんて思っていたないし、そもそも付き合えるかすら怪しい。


俺は「悪かったな」と言って真夏さんの頭を猫を撫でるように撫でた。


「ひゃう!?」


「あ、悪い」


俺が頭を撫でていると指先が真夏さんの耳の中に入ってしまった。


「気持ちよかったから大丈夫だよ……まぁびっくりしたけど」


「真夏が良かったのなら別にいいじゃないですか、奏介さんもそこで黙ってないでゲーム再開しますよ」


「あ、はい」


パーティーゲームが奏介1位、真冬2位、真夏3位で終了したと同時に母さんにご飯ができたと呼び出されたのでさっさとゲームを片付けてリビングに向かった。


テーブルにはいつも食べていた母さんの料理が並んでいた。


ただいつもは3人なのでテーブルの面積が足りなく、横にテーブルを付け足してある。


「2人はいつも自分たちで料理してるんでしょ? たまには違う味を食べてみて!」


「いただきますね」


パクっと1口食べると自分が作るのとは違って長年作ってきて、味の調節を行ってたどり着いた家庭的な味がした。


(大人が作る料理はやっぱり美味しいものですね、私たちが作るものとは別の美味しさがあります)


「美味しい?」


「とても美味しいです!」


5人は会話をしながらご飯を食べて、食べ終わった奏介、真冬、真夏はせめてもの手伝いとして、皿洗いをしていた。


「奏介さんのお母様は料理が上手なんだね、私たちが作ってるものより美味しかったよ。ちなみに奏介くんは料理作れるの?」


「一応作れるけど母さん並ではないかな、やっぱり経験が違うから」


皿洗いが終わったあと、俺が先にシャワーで風呂に入って俺が上がったあと真夏さんたちに声をかけた。


「俺はシャワーだけで済ましたから、安心して入っていいよ」


「別にそんなこと気にしませんよ? 奏介さんには下心もないですし、別に綺麗ですし」


「俺が気になるの! それじゃあ早く入っておいで」


という感じで2人の背中を押して風呂場に行かせた。


2人が風呂に入っている間、ずっとテストの復習をしていた。勉強机の横にある本棚にある参考書を数冊取り読み終わったあと、社会勉強の本などを手に取った。


(社会勉強はしても無駄じゃないからな、絶対の今後の人生で必ず問われる知識だから早めに詰め込んでおいた方がいい)


勉強しているとひとつの事に気がついた。それもだいぶ大きいことだ。


「誰がどこで寝ればいいんだ……?」


俺の家には真夏たちの家みたいに客人用の部屋なんかないし、どうやって寝るか困っていた。


「真夏さんと真冬さんを俺のベットで2人で寝かせて、俺がソファーで寝るしかないかな。まぁまだ夏だし風邪は引かないだろう」


そんなことを考えているとパジャマ姿の2人が部屋に戻ってきた。


いつも奏介が寝る時にはまだ2人とも風呂に入ってなかったのでパジャマ姿を見た事がなったのだが、今初めて見てやっぱり可愛いと思った。


真夏さんが黄色のパジャマで真冬さんが水色のパジャマを着ていて、美少女は何を着ても似合うんだなと思った。


「どうしたんですか? そんなに私たちのことを見つめて」


「いやぁパジャマ姿を初めて見たからさ、やっぱり何を着ても似合うんだなと思ってただけだよ」


「ありがとうございます」


真冬はフフっと微笑んだ。


「俺はリビングで寝てくるからおやすみ」


「リビングで寝ると風邪引きますよ? 別に私たちは一緒に寝てもどうも思いませんから、3人で寝ましょうよ。真夏もそれでいいよね?」


「了解ー! それじゃあ寝ようか」


話が進んでいくが真夏たちが良ければいいというわけではない。


奏介の理性が保てないのだ。


学年1の美少女双子と同じベットで3人で寝るなんて、心臓が跳ねまくって落ち着かないし、奏介としてはとても恥ずかしかった。


今までもそんなことはなかった。けど今回は真冬の風邪をひいてしまうっていう言い分もわかるし仕方ないことだと理解してるのだがやっぱり抵抗がある。


でも2人がベットをポンポンと叩きながら微笑んでこちらを見つめてくるので、俺は誘惑に負けてベットに寝転んだ。


寝転んで、真冬さんたちと一緒に寝てるという恥じらいを誤魔化すように俺は壁の方向を向いて掛け布団に顔を埋めていた。


時々「なんで顔を背けてるんですか?」と甘い声が聞こえるがそれを無視して壁の方を見続けた。


この状態で真冬さんたちと目を合わせてしまったら、俺が羞恥しゅうちで死んでしまうだろう。


(心臓に悪いんだよなぁ……)


早くこの恥じらいから逃げたいので俺は眠りについた。

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