第11話

テストが終わりしばらく経ったあとの金曜日、奏介は病院に連れて行ってもらい、医者から治ったことを伝えてもらった。


「良かったですね、神楽さん! それじゃあ今日は1回家に帰るんですか?」


「その事なんだけどさ、さっき治ったから今日帰るねってメールしたら夕凪ちゃんたちも連れてきなさいって来たから」


俺はそう行って母さんとのメールのやり取りを真夏さんと真冬さんに見せる。


「私、神楽さんのお家行ってみたいです!」


「別に母さんたちが連れて来いって言ってるし、真夏さんたちがいいなら来て欲しいかな。とりあえず久しぶりに帰るから一応お土産でも買いに行くから着いてきてもらってもいいかな?」


「分かりました、早速行きましょう!」


という感じで奏介は母さんが好きなシュークリームを並んで人数分購入して、家に向かっていた。


「そういえば神楽さんのお父様にはあったことがありますが、お母様はどんな方なのでしょうか?」


「父さんとさほど変わらないよ、時々興奮しすぎて抑えが効かなくなるけど……真夏さんたちの前だから自重してもらいたいところだが、逆に興奮しちゃうかなぁ」


「賑やかでいいじゃないですか。私たちのところは親がほとんど帰ってこないで羨ましいです」


会話しながら道を歩いてると家の前でこちらに手を振る2人の大人の姿が視界に入った。


「ただいま」


と一言だけ言うと3人まとめて抱き寄せられて、家に入れられた。


「「「っ!?」」」


「おかえりなさい、それに真夏ちゃんと真冬ちゃんだったかしら? 奏介のお世話ありがとね」


「とりあえず離してくれない?」


俺がそう言うと「ごめんごめん」と慌てて手を離した。


「いえいえ当然のことをしたまでですから、神楽さんには助けてもらいましたし」


「神楽さんじゃ3人いるから分からないわよぉ? 名前で呼んでもらわないと」


母さんが少しにやりと笑う。


「え、えっと……奏介くんには助けてもらったので……それでお願いなんですけど、これからも奏介くんと一緒に過ごさしてくれませんか?」


「理由を聞いてもいいかな? 理由しだいでは僕は受け入れるよ」


「私たちの家には親が1年に1回しか帰ってこないんですよ、それでいつもお姉ちゃんと二人で代わり映えない日常を送ってた時に、奏介くんに助けてもらって……それから一緒に過ごして今までの生活より楽しかったんです、だからこれからも奏介くんと過ごしたいんですけど……いいですか?」


もはや告白とも受け取れるその言葉は俺と母さんの心を動かすのには十分だった。


俺は耳元で母さんに「手は出さないでね」と言われたので「出さんわ」と返した、会話的にはこれから一緒に過ごすことを許可するということだろう。


「別に私たちはいいわよ、ただたまに3人でこっちやってきてね。それと今日は真夏ちゃんと真冬ちゃんのことを知りたいからという理由で泊まってくれない?」


「わ、分かりました。1回家に帰って泊まるための荷物を持ってきますね」


真夏さんたちはそう言って1回家に戻っていった。


「許可してくれるんだね、本当は俺が言おうと思ってたんだけど真夏さんも同じ気持ちだとわかって安心したよ、この話は真冬さんにしかしてなかったから」


「初めて奏介が夢中になる相手なんだからこれくらいはね、2人ともいるなら奏介が手を出すこともないだろうし」


「1人でも2人でも出さないって。ご飯を作ってもらったりその他諸々してもらってる側だから……というか、どういう状況でも出さないから。そこら辺は弁えてるつもり、それと久しぶりのご飯楽しみにしてるよ」


母さんは腕をぽんと叩いて、「任せなさい!」と言ってリビングに戻って行った。


「父さん、いつも通り母さんが暴走したら頼むよ。今日は俺だけじゃないんだから」


父さんは頷いて部屋の中にパソコンを持って入っていった。


父さんは在宅ワークで、会社に行くことは1ヶ月に数回しかない。それでもちゃんと稼いではいるし、しっかり家庭を養ってくれていると俺も理解している。


玄関の方から物音が聞こえたので扉を開けて、入ってきた真夏さんと真冬さんを自分の部屋の中に招き入れた。


「ここが、かぐ……奏介くんの部屋かぁ、なんか想像していた部屋となんか違うなぁ」


「別に真夏さんの呼びたい方で呼んでくれればいいけど……というかどんな部屋を想像してたんだよ?」


「いやぁ本棚とかがいっぱいあって、本棚パンパンに勉強の本が入っている部屋を想像してたけど、実際はもっと男の子らしい部屋だったなぁって」


奏介の部屋は真夏が言っていた部屋とは一変していてグッズなどが結構多く飾ってあるし、それが壁にまで飾ってある。


真夏たちが思い浮かべてたものとは全然違う部屋だ。


「まぁ確かに想像と違いましたけど……それは私たちの価値観ですから」


「ご飯までしばらく時間があると思うし、好きに遊んでていいよ。ここに来ることは少ないと思うし満喫していってよ」


「それじゃあ私の家にないあれがやりたいです」


真冬さんが指さしたのは数年前のゲーム機で、俺が中学1年生の頃に買ってもらったものだ。


中学3年生になってから色々あってやることがなくなっていたが久しぶりにみんなとやるのも楽しいだろうと思い、電源をつけた。


プレイするゲームはみんなでプレイできるパーティーゲームを選択した。


「このゲーム? はどうすればいいんですか」


「いや別にそんなに難しい操作はないし、ミニゲームとかもあるけど事前にルール説明があるから大丈夫だと思うよ? 真冬さんと真夏さんならすぐ理解できると思うし」


特に問題はなくゲームは始まった。

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