第7話
勉強を始めた最初らへんは3人ともただひたすら黙って宿題などテスト勉強をしていたのだがちょくちょくと会話が増えてきていた。
「神楽さんって頭いいんですね……。あっ別に頭悪そうに見えてたわけではないですから……ね?」
「それは分かってるよ、あの時から俺に残されたやることと言えば勉強ぐらいだったからな、遊ぶ相手がいない……ずっと独りで部屋にこもって勉強し続けた。そのおかげでこの学園に入れたし真夏さんたちとも出会えたんだと思う」
「ずっと独りで……寂しかったでしょうに。でももう大丈夫です、神楽さんには私たちがいますから」
そうだ今はもう独りじゃない、叶と離れてしまったが茅森もいるし真夏さんも真冬さんも居る、奏介は独りじゃないんだ。
独りじゃなくなってもまた叶に会いたいという気持ちは変わらず今まで生きてきた、それで夕凪姉妹と出会い叶に会ったことがかもしれないということが判明して小さな光が見えた。
今は小さな光でもいずれ大きく、光り輝く。
「真夏さんと真冬さんは噂通り頭がいいんだね。今回のテスト、ぶっちゃけ余裕だよね?」
「いやーでもそれを言ったら神楽さんも余裕でしょ? テストの結果って張り出されるんだよね、それだったら3人で順位でも競おうよ! それの方が勉強が
「いいアイデアだね、俺は賛成するよ」
何事も
「私も別にいいですよ、真夏には負けませんから」
「むー、今度こそお姉ちゃんに勝つもん!」
その真夏の仕草はどことなく子どもらしくて微笑ましかった。
「俺も忘れないでね、夕凪さん達は天才とか色々言われているけど、
「神楽さんが頭いいことは今把握出来ましたし、私も負けないように勉強しますから」
その後もちょくちょく会話しながら勉強を進めていくといつの間にか時間がすぎていて、すっかり夜になっていた。
そのことに気づいた真冬と真夏が急いで勉強道具を片付けてキッチンに向かって行った。
奏介は自分の勉強道具を部屋に戻して、リビングに戻ってくると美味しそうな匂いが香ってきた。
「いつも俺の分まで作ってもらって悪いね、3人分作るのも大変でしょ?」
「いえ、料理を作るのは好きなので苦だとは思ってないですよ。それに2人で作ってるので何も問題ないです」
「そうそう。私たちは助けてもらった恩返しをしてるだけだから。神楽さんは遠慮しなくていいんだよ!」
「ありがとう、それじゃあ俺は待っておくから」
奏介はそう言ってテーブルの前で単語帳を見ていた。
この単語帳は叶から貰ったもので中学生の時から使っていて、学年が上がるごとに単語を書いた紙を付け足していって今の単語帳の分厚さになっている。
晩御飯が運ばれてきたので俺は単語帳をポケット中にしまって、手を合わせた。
「「「いただきます」」」
3人でご飯を食べて片付けが終わったあと、俺は真夏さんに呼び出されていた。
女の子の部屋になんか入ったことがないので少し緊張してしまっていたが部屋の中から手招きが見えたので気持ちを切り替えて中に入った。
「わざわざ部屋の中に呼んで何の用ですか?」
「神楽さんの幼馴染のことなんだけどさ、なにか写真とか持ってない? 見た目を見たらなにか思い出せるかもしれないから」
真夏さんがそういうので俺はスマホに保存したある叶との写真を数枚見せた。
「なにか見覚えでもあるの?」
「えぇとね神楽さんが私を守ってくれた日より前のことなんだけどさ……今日行ったショッピングモールで見たことがあるんだよ」
それが見間違いでなければ奏介にとっては嬉しい話だ。
「それで止まってスマホを見てたんだけどその時に私の横をその人が通ってその時にちらっと見えた写真に写ってた人が神楽さんに似ていたんだよね」
「背景とか、髪の色とかは覚えてる?」
「多分森の中で……背の高い人の方は少し青みがかった髪色をしてたかな」
奏介はそれを聞いて確信した。
背が高くて髪が青みがかった女の子……叶の特徴と一致しているのだ。つまりその女の子は叶である可能性が高いと。
「情報ありがとう真夏さん。これでまた叶に合えるもっていう希望が大きくなったよ」
「それなら良かった、話はこれだけだから。おやすみ神楽さん」
「いやちょっと幼馴染のことで考えたいことがあるからまだ寝ないかな。真夏さん、おやすみ」
俺はそう言って部屋を出て、客室に戻った。
(つまり叶はまだこの地域にいる……家が違う人のになっていたのは単純に引っ越していただけ。それならこのまま生活していればいずれ会えるかな……欲を言うなら同じ学園だといいな……)
奏介はあんまり学園の生徒と関わりがないとはいえ見かけることは普通にあるのでその中に叶がいたのなら絶対に見逃していない。
「それでも叶と会ってないということは桜樹学園に叶はいないのだろうか……でもこの地域にある学園の数なんて限られてる。それに真夏さんがあのショッピングモールで会ったのならさらに絞りこめる」
まず桜樹学園にいるかいないかの確認方法としてテストの結果の時に確認することに決めた。
(叶は頭が良かったし、同じ学園にいるならテストの時に張り出されるだろう。それにいなかったとしてもショッピングモールにいればいつか会えるはず……)
ふと時刻を見ると9時をすぎていたので、俺は急いで風呂に入ってベットの上に寝転んだ。
「うん、ちゃんと寝ていますね。おやすみなさい神楽さん」
真冬が寝てるか確認してきたので顔を背けてなんとか乗り越えた。
(明日は学園だし……寝るか)
奏介は叶のことを考え続けながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます