第6話
大型ショッピングモールに着いた奏介たちは早速中に入り店を回っていた。
買おうとしているのは服だが他にもなにかいいものが無いかと真夏と真冬はキョロキョロしていた。
「案外人が居ないな、大型ショッピングモールだからもっと人で溢れてると思ってたのに」
「今日は何故か人が少ないですけど、いつもはもっと多いですよ。まぁでも車椅子なんですから人が少ない方が都合がいいじゃないですか」
一応車椅子なので人の邪魔にならないように道の端を歩いているのだが、人が少ないので道の端を歩く必要がなさそうなので両端の店が確認できるように道の真ん中に移動した。
「それで何かほしいものでもあったか? ずっと色んな店を見つめていたけど」
「ううん、特に何もなかったかな。服屋に着いたから早く入ろう?」
真夏に車椅子を押され服屋の中に入っていた。
真夏と真冬が仲良く買い物をしている姿とは裏腹に奏介はただ座ってるてて真夏に押してもらってる。
「ねぇねぇ神楽さん! 私この服絶対に神楽さんに似合うと思うんだけど! 大丈夫、お姉ちゃんも似合うって言ってくれてるから」
俺は真夏さんにひとつの服を手渡されたのでそれを広げてみるとそのパーカーはかつて俺が着ていたものだった。
それなら似合うと思うのもにも納得だ。だって昔……叶と遊んでた時にこの服を着ていたんだから。
奏介はこの服を持っているがサイズの関係でもう着れなくなってしまっていたので奏介はこの服を買うことにした。
「ありがとう真夏、真冬。俺この服を買うよ、あとは真夏たちが好きに見てていいよ。俺はこの服だけで十分だからさ」
「それでいいの? 神楽さんがずっと暇になっちゃうけど」
「問題ないよ、俺はのんびりとしてる方が好きだから。真夏さんたちが仲良くしてる姿を見てるだけで楽しめるよ、俺には兄弟がいないからさ」
奏介たちはさらに店の奥へと入っていき、良さそうなものを見つけレジに持って行った。
俺の中では男が払うべきだと思ってるので財布を取り出そうとすると真夏にポケットを抑えられた。
私たちが払うよと言いたげにウィンクをして財布を取りだして払ってくれた。
「払ってもらって悪いな……普通男が払うべきなのに」
「大丈夫ですよ、私たちはお金が有り余ってるので。それに誰かにこうやってプレゼントすることは好きなので」
やっぱり俺の家と夕凪姉妹の家では裕福度が違うと改めて思い知らされる。
俺の家は生活に余裕があるというだけだが、夕凪姉妹の家はお金が有り余ってるなどと大富豪のようなことを言っている……まぁ実際大富豪なのだろうが。
(改めて考えてみるとこの状況をクラスの男子たちというか学園の生徒に見られたら相当まずいよな……一応顔だけでも隠しておくか)
真夏たちが聞かれたら別に答えると思うし学園で真夏が奏介の乗ってる車椅子を押してる姿を見られてるのでほとんど意味ないと思うが……。
奏介が生徒達に出会わないかとビクビクしながら周りを見てるとフードで横が見えないので分からなかったが来た道を戻っていた。
「それじゃあ帰りましょうか。申し訳ないですけど買った荷物を抱えておいて貰えますか?」
「わかった。というか帰りは真夏さんじゃなくて真冬さんが押すんですね」
「ほんとは私がずっとお世話していたかったけどそういう約束だったからね。でも2人で神楽さんの怪我が治るまで交代ごうたいで世話するから、親御さんにも治るまで家に住ませる許可も取ってあるし!」
「だからあんなに荷物が多かったのか……財布の中に見覚えのないお金も入ってたし。母さんと父さんはいつも人の好意には甘えとけって言ってたから、これからしばらくよろしく」
怪我が治るまであとどれ位掛かるかは分からないが少なくともしばらくは夕凪姉妹にお世話になるだろう。
奏介にできることは夕凪姉妹の言うことを聞いて、無理をしないことだ。
家に戻って買ったものを片付けたあと奏介はスマホを眺めていた。
「また会える日は来るんだろうか……」
今奏介が見ているのは昔叶と一緒に撮った写真でそれも何枚も撮ってありそれを見返していた。
改めて見てみると今の自分と姿が全然違うし、隣にいる叶の身長は自分より相当高いことが分かる。
懐かしい気持ちになりより叶に会いたいと願った奏介だがひとまず昼ごはんができたと呼ばれていたのでスマホをベットの上に置いてリビングに向かった。
「神楽さんも一緒に食べましょうよ! 部屋の隅で一人で食べるよりみんなで食べた方が絶対に美味しいですから」
「真冬さんがそう言ってくれるのは嬉しいけど車椅子って邪魔じゃないか?」
「邪魔か邪魔じゃないかじゃなくて、単純に私は神楽さんと一緒にご飯を食べたいんですよ」
そう言われたので俺は小さな机に置いてあったお盆を膝の上に乗せて真夏さんたちが食事をとっている机にお盆を置き、残りのご飯を食べ始めた。
「うんうん、やっぱりご飯はみんなで食べた方が美味しいね。神楽さんもこれからは遠慮しなくていいからね!」
「うん、ありがとう」
ご飯を食べ終えた奏介たちはテストがもうじき近づいているので食器を片付けて勉強を始めた。
奏介は叶との1件の時から現実から逃げるためにずっと何も感じずただ無心で勉強をしていたので中3の時点で高一の内容をだいたい把握していた。
夕凪姉妹はさすが天才と呼ばれてるだけある。理解がものすごく早く詰まることなどなさそうだった。
そんな姿を見て俺はもう一度気合いを入れ直した。
(今は過去の事じゃなくて目先のことに集中しないとな)
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