一条舞香(4)
第25話 起源
この前、小説について聞かれたから、今度はこちらが少し天文について聞いてみようとした。
「探査機のはやぶさって、結局何をしたかったの?」
「何って、小惑星からサンプル採集したのよ」
「何で?」
「生命の起源のためよ」
「生命の起源? それがなんで小惑星?」
「約46億年頃に地球が誕生。その約3億年後に原始の海ができたの。さらに約3億年後に単細胞生物の誕生」
「うん」
「コップに鉄や塩など、その他化学物質が含まれた炭酸水をいれて3億年経てば新種の単細胞が生まれる?」
「ん? ううん?」
化学物質と炭酸水から有機生命体が生まれるとは考え
けど3億年経てばもしくは。
生まれるのか?
「想像できない。まずリンが関係していると言われているのや
「リン?」
「リンの化学反応でDNAとかが生まれるわけ。それゆえリンは生命の必須元素と言われているの」
「へえ」
「目を瞑って想像してみて」
言われて私は目を瞑る。
「たくさんの原子。それがくっつき、
「遺伝子じゃないの?」
「遺伝子はDNA内の情報のこと。ちなみにゲノムは情報のすべてのいうこと」
「なるほど」
なんか生物の授業が始まってない?
「DNAが登場して、単細胞生物が生まれるの。その単細胞生物から多細胞生物。そして微生物へと進化していく」
「で、海の生物だね」
「それが教科書とかで載っている生命の起源説の一つ」
「一つ?」
「はやぶさの話をしたでしょ?」
「そうだった」
てか、なんではやぶさから生命の起源についめの話に? いや、はやぶさの目的は生命の起源と言っていた。
「今の話が関わっているの?」
「生命の起源について様々な説があって、小惑星説というのもあるの」
「小惑星説?」
「小惑星についていた微生物が生命の起源に深く関わっているという説よ」
「ええ!?」
「信じられない? ま、そうよね。あくまで説の一つだから」
うーん? なんかエ◯ァみたいな話? 黒い月とかでてきそう。
「地球はね元はたくさんの微惑星だったの。それらが衝突し合って地球という惑星になったの」
「それは知ってるけど」
「その衝突の原因が小惑星説というのもあるの。さらに地球はその後、隕石がたくさん落ちてるの」
「それとはやぶさが関係あるの?」
「はやぶさが調査したのはアポロ群の小惑星イトカワなの。アポロ群は地球に接近する危険な小惑星の総称」
「つまり微惑星の集まりが外からの小惑星により、衝突が発生して、周りの微惑星を巻き込んで今の地球にと?」
「一説にはね。小惑星にはたくさん微生物がいて、それが起因として単細胞生物が生まれたと言われているの。もしくは地球に隕石として落下して、地球の生命に大きな変化を与えた可能性があるってね」
「……ええと、待って、整理するね」
私は麗奈が説明したことを頭の中でもう一度反芻する。
微惑星が小惑星と衝突。そして周りの微惑星を巻き込んで今の地球に。そして小惑星が隕石として落下。小惑星には微生物がいて、地球の生命に大きな影響を与えた。
「……まじで?」
「あくまで説よ。地球誕生について小惑星は関係なく、微惑星同士がぶつかった説が濃厚だし。そもそも46億年も昔のことなんてはっきりとは分からないし。所詮は確証の高い仮説どまり。……でも、イトカワからの調査で生命の起源を調べようとしたのよね」
「で、イトカワから何が分かったの?」
「水があると分かった」
「で?」
「それだけ」
麗奈は肩を竦めた。
「なんだ。結局、微生物なんていないのか」
「けれど1996年、火星由来の隕石に微生物の化石があったとNASAは発表している」
「え? あったの?」
「今は否定されてるけどね。でも、火星と木星の間にある小惑星群には微生物はあると考えられている。そして地球に降り注ぐ隕石の大抵はその小惑星群のものと言われている」
「何それ? 隕石ってやばいものなの?」
微生物がついているんなら危険じゃん。菌とかウイルスもありそう。
「もしかしたら極彩色の煙が出るかもね」
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