第22話 朝の読書タイム

 早朝テストか終わって、次は朝の読書タイムが始まった。

 朝の読書タイムは10分のため早朝テストに比べると、比較的影響はない。けど10分はきつい。というか朝早く登校させるのは勘弁願いたい。

「ねえ、朝の読書タイムって、何読めばいい?」

 私は一条に聞いた。

「学校がお勧めしている参考図書は?」

「嫌。あれって古臭かったり、説教くさい物語ばっかなんでしょ?」

 読んではいないが、周りからの評価は悪い。

「5分ミステリーは?」

「無理。朝に頭を働かせたくない」

「短編小説は?」

「短編小説か……オススメは?」

「芥川龍之介とか太宰治」

「だから古いのは嫌だって」

「ん〜? それじゃあ、ネットや通販サイトとかで人気の短編小説は?」

「なるほど」

「ちなみに今朝は何を読んだの?」

「子供の時に夏休みの読書感想文で読まされた十五少年漂流記」

 私はカバンから十五少年漂流記の本を取り出す。子供向けのため、表紙は漫画。ページにもルビが振られている。

「久々に読んでみて面白かった?」

「別に。名前が外国人だからキャラ忘れたわ。もう誰が誰か分からない」

「ストーリーは覚えてた?」

「そりゃあね。子供達が遭難して無人島に辿り着くのよ」

「うんうん。なら、それでいいんじゃない?」

「え?」

「読んでるフリができるじゃない」

「ああ、なるほどね」

 つまり読書タイムの時間は読んでるフリをしてボケーとしておけばいいと一条は言ってるわけか。

「フリ。いいわね。もし怪しまれて感想を聞かれても一度読んだからだいたいは知ってるし。もしかして一条もフリをしての?」

「してるよ」

 一条はあっさりと認めた。

「おいおい、文芸部でしょうに」

「文芸部だって、朝の読書はきついよ」

「てかさ、読書タイムをしても若者の読書離れが止まるとは思わないのよね」

「どうして?」

「だって、眠いのに文字なんて読めない」

 朝にするのはやめてほしい。せめて昼だ。

「それに10分だよ。ちょっとしか読めないじゃん」

「まあ、10分って変な時間だよね。数ページしか読めないし」

「それにああいう押し付けって逆効果のような気がする」

「確かにね。押し付けって嫌だよね。それで嫌な思い出なら、より一層読書離れするよね」

「そもそもスマホで読書はなぜ駄目なの?」

 うちの学校ではスマホで読書は駄目となっている。

「小説でない場合があるからじゃない?」

「あー、そうか。読んでようで漫画を読んでるかもしれなくて、教師が来たら小説に画面を変えるとかね」

「うん。だから本じゃないといけないんだよ」


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