第21話 早朝テスト
放課後、私は何もすることなく腕枕してじっとしていた。
疲れているわけではない。眠かったのだ。
我が校では今週から早朝テストが始まったのだ。
早朝テスト。それは文字通り、朝のホームルーム前に行われるテスト。
科目は月曜日に国語、火曜日は英語、水曜日は数学、木曜日は日本史、金曜日は生物。8時10分から30分までの回答時間20分の小テスト。8時には着席しないといけないため生徒はいつもより早く登校しないといけない。
本当にふざけるなって感じ。
これならまだ抜き打ちテストの方が百倍マシだ。
遅刻したら受けられないし、周りからは「0点! 0点!」と馬鹿にされる。特に馬鹿から馬鹿にされるのは本当にむかつく。
だから余裕を持って、間に合うようにしないといけないため、私は7時起きが早朝テストのせいで6時15分起きになった。
だから今日は眠かった。
いつもは昼食後に眠くなるが、今日は朝から眠かった。
授業中は眠かったが、私は座りながら寝るということができないため、眠くても眠れなかった。
そのため今日はずっと眠気で頭が働かなかった。そして私は眠れないが人と話す気力があるわけではないので、放課後の今は狸寝入りをしていた。
◯
部室には天文部の私以外にもう1人いる。
文芸部の一条だ。
彼女は先程までは文庫本を読んでいたが、本を閉じて私と同じように眠り始めた。
ただ私とは違い、本当に眠り始めたようだ。
小さく寝息を立てている。
よくもまあ、座りながら眠れるものだ。
……暇だ。
こっちは眠れないため、じっとこの体勢のままなのに。
よく羊を数えたら眠れるというが、あれは英語で羊は「sheep」で眠りが「sleep」、発音が似ているから暗示にかかりやすいというやつ。
だから日本人には効果がないのだ。
私は狸寝入りをやめる。
後ろ首、肩の順で揉み、席を立つ。
背を伸ばし、肩を回す。窓際に立ち、外を眺める。
ここからでは校舎の外しか見えず、学校は丘の上にあるため街並みが眺望できる。
オフホワイトのビルはまるで大地のニキビのように見える。
「どうしたの?」
「あら? 目が覚めたの?」
「うん。音がして」
「ごめん。起こしちゃった?」
「いいよ。もうそろそろ起きないといけなかったし」
スマホで時間を確かめると下校時間まであと少しだった。
「帰ろうか」
「そうだね」
一条は腕を伸ばして、屈伸をする。
「よく寝てたわね」
「そっちも寝てたじゃん」
「……朝早かったからよ」
「それ私も。早朝テストなんてやめて欲しいよね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます