第18話 最近の様子

 ここ最近、麗奈は荒ぶっているようだった。

 以前は私との間で会話というものが少なかった。

 それが今では放課後、部室で話すようになった。

 それはあの遅刻からではないだろうか。

 あの日から麗奈は鬱憤したものをぶちまけるかのように口を開く。

 でも今日は穏やかで、会話もファミレスの話だった。

「全部セルフになったのは驚きよね」

「店員は1人も見かけなかったの?」

「テーブル拭いてる店員がいた。それ以外は見てない」

「ファミレスだけでなく、このまま人のいないお店が増えていくのかな?」

「最低賃金あがってもバイトも出来なくなるよね」

「麗奈はバイト経験は?」

「ない。一条は?」

「去年の年末に郵便局のバイトした」

「すごいじゃん」

「いやいや、バイトというよりも職業経験みたいなやつだよ。1日2時間程度だし。やってることも年賀はがきの差立と区分だし」

「何その差立と区分って?」

「市外もしくは県外に送るのが差立。市内の町村別けするのが区分」

「へえ」

「最近は年賀はがきを送るという習慣も減ったから、年賀はがきが少なくて暇な時間が多かった。なんか時給貰うのが申し訳ないくらい」

 うちの家でも年賀はがきは親戚にしか送らない程度になった。

「年賀はがきか。私も最後に送ったの小4の頃だよ」

「私もそれくらいだった」

 キッズケータイを与えられてから、年賀はがきは送らなくなった。

「郵便局も大変なんじゃない?」

「ゆうパックがあるからまだ大丈夫だと思うよ」

 今でははがきや封筒系の仕事は少なく、配送系が主流みたいだ。

 確か私と同じように年末バイトに募集した男性が年賀はがきではなく、配送に回されていた。

「どんどん変わっていくわね。時代って恐ろしいわ」

「そうだね。取り残されないよう頑張らないと」

 本当に私達の社会はどこへ向かうのか。

 多様化の優しい世界。でも、窮屈で寂しくて、建前臭い道化の世界。

「何年寄り臭いこと言ってるのよ。私達はまだ10代よ」

「そうだね」

 麗奈は頬杖をつき、窓の向こうを眺める。

 もうそろそろ陽が落ちて、夜が現れる。

 太陽は今日最後の煌めきをふんばって残そうとあがく。

 オレンジ色の夕陽が部室を照らす。

「どうして夕陽って眩しいのかな? どうして空は赤くなるのかな?」

 私はポツリと呟いた。

「太陽が遠いからよ」

「遠い?」

「光は全ての色を持ってるの。イメージは色が重なっている感じ。虹を想像して。太陽が遠くなると下から色が削られて残された赤が現れるのよ」

「へえ」

 虹は上が赤で下が青だったはず。下から削られて赤が残るか。

 そして赤がなくなれば後は黒のみとなり夜となるのか。

「ん? それって緑の空とか紫の空もあるってこと?」

「あるよ。朝焼けとかピンク色だよ」

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