第17話 時代

「新聞なんて昨日のネタでしょ? ネットニュースの方が情報が早いじゃない!」

 麗奈は豪語した。

 きっと現代社会の授業の件だろう。

 今日、現代社会の授業で教師が新聞を読まない生徒達に対して、新聞を読んで最新の時事ネタを知るようにと言っていた。

「それにニュースならテレビでも充分じゃない。なんで活字でなのよ。古いのよ。新聞なんて」

「でも、それは三面記事でしょ? 他のネタは前から念入りに調べてから載せたからちゃんとしてない?」

「それもテレビで結構。ニュースでやってくれてるわ。新聞なんてデカいから読みづらいし。1日で資源ごみになるだけよ」

「テレビ欄は必要じゃない?」

「テレビ全く見ないし。それにテレビに番組一覧表があるでしょ? dボタンならお天気情報もあるし」

「今はなんでもスマホでできるからね」

 スマホならニュース以外にも天気、辞書、情報検索、はてには勉強アプリまである。

「百歩譲ってペンを使った勉強を勧めるのは良しとしても、新聞を読めというのは勘弁してほしい」

「麗奈はそこまで新聞嫌い?」

「嫌いではないけど、ああいう昔の価値観を押し付けてくるのが嫌」

 時間は時代を伴って歩いて行く。

 そして私達はその時代を生きて、新しいことに順応していかなくてはいかない。

 システムに慣れた大人達は新しいことに対して余計なことみたいに感じ、子供達はスムーズ化したシステムを喜び、古いシステムを毛嫌う。

「そもそも縦読みが苦手なのよね?」

「え? そうなの?」

「一条は平気?」

「普通に小説とか読んでるよ」

 私は読んでいた文庫本の中身を麗奈に見せる。

「へえ」

 麗奈は文庫本をじっと見る。

「シャーロックホームズ?」

「うん」

 今読んでたのはシャーロックホームズの『赤髪同盟』という話。

「時代がかなり昔だから違和感とかない?」

「違和感?」

「今だったら、指紋とかゲソコン、毛髪、監視カメラとかの科学捜査があって、証言より物証第一でしょ? 昔の捜査って違和感あるような気がしない? ぶっちゃけシラをきれば逃げきれそうな気がしない?」

「う〜ん? そうかな?」

 でも麗奈の言うことには一理あるかもしれない。昔の推理は今でいうところの憶測か妄想に近い。証拠がなければ、麗奈の言う通りシラをきって逃げきれそう。

「どんな解決するの?」

「基本的には次の現場を押さえて、犯人逮捕みたいな」

 赤髪同盟もそうだ。ホームズが依頼人から話を聞いて、その後に調査をする。そして悪人の目的を推理して先回り。最後はやって来た彼らを捕まえておわりだ。

「なるほどね。現行犯なら問題ないわけだ」

「そうそう」

「しかし、科学捜査も進歩しているけど、犯罪は減らないわよね」

 科学捜査も進歩する分、犯罪も巧妙化している。

 まさにイタチごっこだ。

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