第16話 テレビ論

「最近若者のテレビ離れが深刻化って言われてるけど、番組がつまらないのよ」

 と、麗奈は言った。

 いきなりのことで私はちょっとびっくりした。

「どうしたの?」

「ここにそういうことが書いてたから」

 麗奈は雑誌を反転させ、記事の箇所を指差す。

 そこには『若者のスマホ依存』とあり、スマホによってテレビ離れが深刻化と書いてある。

「スマホのせいにするっての。どう見てもテレビ番組でしょ?」

「なるほどね」

「一条もテレビ見ないでしょ?」

「バラエティは見るよ。あとドラマ」

 それとアニメも。

「私、全然。今のテレビ番組おかしくない?」

「おかしいかな?」

「おかしいよ。だって、クイズ番組は東大生クラスの難問クイズ。教養番組は家庭の医学と世界経済の勉強モノ。バラエティはゲストとおしゃべりだけのトーク番組。ドラマは刑事モノばっかで年寄りが好きなのばっか。それで若者のテレビ離れの深刻化って馬鹿じゃないの?」

 麗奈は一気に捲し立てる。

 なぜそんなに苛立っているのか。

「確かに最近のテレビ番組は体を張ったものが少ないよね」

 低予算のためかバラエティもスタジオでのトークばっかとなっている。

「私、スポーツはないけど、昔のバラエティとかであるアスレチック系や競技ゲーム系は見てたわよ」

「今は少ないよね。今はせいぜいドッキリやかくれんぼ、カラオケくらいだよね」

「ドッキリはまだ面白いけど、昔のように爆弾がドッカーンとするやつや、パイがいっぱい投げつけられるやつとか、バレーボールが豪速球で向かってくるとか、タライが落ちてくるやつ、そういうのってもう全然ないわね」

 麗奈は悲しそうに言う。

「痛みを伴う系は駄目になったんじゃない? 子供に悪影響を与えるから」

 今ではそういう年齢確認するやつはネット配信となっている。

「年末のケツバットもなくなったよね」

「それでテレビ番組がクソつまんなくなってるから誰も見ないのよ。なんでそれが分からないのかしら? 大人って馬鹿なの? 今ではネット配信の方が面白いじゃない」

「麗奈、ネット配信は見てるんだ」

「まあね。スマホでも見れるからね。テレビだと親の声がうるさくて邪魔なのよ」

 麗奈が困ったように言う。

「それ分かる。ニュースとかで聞いてくるのよ。『何があった?』って。テレビ見てよ。今からキャスターが説明するじゃんって。しかも説明後に『〜があったらしいぞ』って。いや、聞いたからそれって感じ」

「そうそう。他にも別のことを喋って邪魔するのよね。今、喋るなっつうの!」

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