第15話 スポーツ観戦

「スポーツ観戦って何が面白いの?」

 ふと麗奈が頬杖をつきながら呟いた。

 今日、私は文庫本ではなく雑誌を読んでいた。雑誌といっても麗奈が読むようなファッション雑誌ではなくて少女漫画の雑誌。

 麗奈の問いは私が連載漫画を読み終えた頃であった。

「やはり応援しているチームには勝って欲しいからとか? あとは選手のファンだとかかな?」

「一条は好きな野球もしくはサッカーチームってある?」

「ない」

「好きな推しは?」

「ないよ」

 そもそも推しはアイドルに当てはめるのであってスポーツ選手ではないはず。まあ、人によってはスポーツ選手を推す人もいるんだろう。

「だったらつまんなくない。どっちが勝ってもいいし。選手の顔と名前なんて知らないし、推しもいないから観る気持ちもないでしょ?」

「けど世界大会とかだったら日本応援しない? ワールドカップとかすごく盛り上がるよね」

 ワールドカップの時は普段はサッカーなんて観ない私だって観るくらいだ。それだけ日本国民はワールドカップには大注目している。

「あれが1番わからないのよ」

 麗奈は語気を強めた。

「どうして普段はサッカーなんて興味もない奴が急にワールドカップになるとはしゃぐの?」

「お祭りだから? 皆が観てるから?」

「サッカーなんてなかなか点が入らないし、クソつまらないと思わない? 野球だって守備の時はつまらないし。バレーボールなんてほとんどが交互に点を入れているだけじゃない?」

「まあ、そうかも……ね」

 どう思うかは人それぞれ。麗奈はスポーツ観戦が相当嫌いなんだ。

 でも、どうして急にスポーツの話なんか?

「もしかして何かスポーツの試合観戦するの?」

「そうなの。皆で行くことになってさ。サリーがサッカーの……どこだっけ? まあ、どっかのチームの試合観戦チケットを持っててさ。無料の」

 サリーとは同じクラスの麗奈グループの青山沙里。私はあまり話したことがない。

「それって映画の時と同じメンツ?」

「そう。男女合わせて6人。男はチケットないから有料。有料でも観に行くって異常よね」

 スポーツ観戦する人に失礼だよ。

 それに男子達はたぶん麗奈達目当てだよ。付き合うのは仲良くなりたいからじゃないのかな。でも、男子はスポーツ観戦好きだから、純粋なスポーツ観戦も含まれているのかもしれない。

「生で観るのは大変よ。人は小さいし、ボールも小さい。何が何かさっぱりわからない」

「前に観に行ったことある?」

「子供の時に家族でね。あれって、ただわめいているだけよ」

 麗奈は呆れたように言う。

「へえ」

「テレビ観戦とは天と地ほど差があるわよ」

「でも、周りの熱に同調されて応援するとか?」

「ない」

 麗奈はきっぱり言い切った。

「生の観戦は本当に分からない」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る