第8話 映画
「なんでアメリカではヒーローモノが流行ってるの?」
「逆になんで日本はアニメ映画が興行収入トップなの?」
麗奈の質問を私は質問で返した。
今日の麗奈は少しおかしい。
キーは強く叩くし、マウスを動かす音も
そして急にパソコンの電源を切って、部室中央に並べられた席に座ってきた。
「アニメには恋愛モノがあるけど、ハリウッドにはない!」
「少しはあるでしょ?」
「少しよ! 少しだけ! もっと増やすべきじゃない? なんで子供向けのヒーローモノばっかなの? 需要はどこ?」
「いや、あれはあれで善悪とか社会風刺とかあって奥が深いよ」
「善悪とか社会風刺みたいな説教臭い映画なんていらないわよ! エンターテイメントが欲しいの。現実を忘れてくれるような!」
「それこそヒーローモノがいいんじゃない? あんなの実際にはありえないし」
「戦いなんてい・ら・な・い!」
「ねえ? どうしたの?」
「たまたま男と映画を観ることになったんだけどヒーローモノでさ」
「デート?」
「違う。複数人と行った」
「グループ交際?」
「グループ交際? よくわからないけどたぶん違う」
「で、映画を観たんだ」
「そうなの!」
麗奈は意気込んで身を乗り出す。
「聞いて! それで観る映画がヒーローモノだったんだよ。でも、ストーリーがさっぱり。シリーズを知らなくても大丈夫というけど意味不明」
「嫌って言わなかったの?」
「
そう言って麗奈は溜め息をつき、机に頬杖をつく。
「ふうん。それでどんな内容だったの?」
「えーと、なんか科学者がカーブラックホールを発生させる爆弾を開発して、それを敵が強奪。主人公達はそれを奪いに行くんだけど、味方が裏切ったり、敵が仲間になったりして、なんとか奪い返すんだけど、科学者がそれを悪の組織に売っちゃうの。最後は敵味方が結束して悪の組織を倒すの」
「…………ええと、最初の敵はなぜ兵器を盗んだの?」
「確か……そう! 科学者が悪の組織と繋がっているから盗んだんだよ」
「あー、敵が正義だったというパターンか」
「そうなのよね。なんか最初から味方でいろよと思ったよ。まずは話し合いでしょ? なによ拳で語るって。意味不明」
そしてまた麗奈は溜め息をつく。
「男ってそういうのが好きなのよ。男の戦い的な?」
「いや、戦ってたのはLGBTの人だった」
「……さ、最近は多様性だからね」
「デブス、黒人、LGBTのワゴンセールかってくらいに多様性のうるさい映画だった」
「最近は有名な賞にもLGBTキャラを出す決まりがあるからね」
「あれってLGBTをキャラで演じているのかしら? それとも本当にLGBTの人なのかな?」
「どうだろう?」
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