第6話 13星座

「13星座占いって知ってる?」

 放課後。部室で雑誌を読んでいると一条が急にそんなことを聞いてきた。

「……蛇つかい座のこと?」

「そうそう。知ってる?」

「まあね」

 13星座占いとは昔に流行はやっていた占い。

 一般的には12星座占いだが、そこにもう一つの星座を足して13星座としたもの。足された星座がへびつかい座。さそり座と射手座の間にある。

「あれって、どうなの?」

「一時的な流行りでしょ?」

 実際2、3年で衰退したらしい。今では占い好きか天文部の人間くらいしか知らないだろう。

「秘密の占いって聞いたんだけど」

「30代半ばの女性に聞いたら、皆知ってるじゃない?」

 秘密の占いという崇高なものでもない。

 ちょっと昔の占いを調べたら出てくる。

「13星座になると私の今の星座も変わるのかな?」

「そうじゃない」

「麗奈は何座?」

「獅子座」

「獅子座……何月?」

「8月2日生まれ。13星座だとかに座」

「私は12月17日の射手座」

「13星座だとギリ蛇つかい座よ。あと1日遅れてたら射手座だったわね」

「おお! 蛇つかい座か。蛇つかい座って何かあるの?」

 一条が期待の目を向けてくる。

「特に何もないわよ。どっかのサイトで今月の13星座占いの結果を出してるんじゃない」

「ええ!? 何もないの? スピリチュアルな何かとか」

「このご時世だから血液型やら星座で人格をはかるのは良くないのよ」

「そうなの? でも出身地とかでこういう人ああいう人ってあるじゃん」

「例えば?」

「大阪府民はうるさい、奈良県民はヤンキー、神戸人は意識高い系、京都府民は陰険みたいな」

「近畿限定なの? てか、なんで兵庫県民は神戸人なのよ。それに和歌山と滋賀はどうしたの?」

「他は忘れちゃった。でも、そういうのってあるじゃない?」

「偏見よ。偏見」

 大阪府民でもおとなしい人はいるだろうし、奈良県民にもヤンキーの正反対としての陰キャがいるだろう。てか、なんで兵庫だけ神戸なの? 神奈川ではなく横浜と言いたいような感じ?

「でもテレビ番組で県民あるあるを紹介しているよ」

「……ああ、あの長寿番組ね。あれは文化であって、性格とかではないはずよ」

「そっかな?」

「そうよ。というか13星座から離れてない? あんた達のグループで13星座流行ってるの?」

「ううん。この前、新古書店に行ったら13星座占いという本を見つけたの」

「買ったの?」

「買ってないよ。立ち読みもしてない。ただ急にふと思い出してさ」

「そう」

 私は視線を雑誌に戻した。そして一条に今日は名前呼びされたことを知った。

(ま、いっか)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る