夕暮れの教室
雨宮悠理
夕暮れの教室
様々な感情が交錯する夕暮れの教室。
陽介は張り詰めた様な緊張とややアドレナリンが出ている様な興奮を感じ、ぎゅっと手に汗を握りしめる。
どれくらい経っただろうか。五分が一時間にも感じるような待ち時間を経て、廊下の方から女生徒らしい足音が聞こえてくる。
教室のドアがゆっくりと開き、待ち望んだ女子生徒。綾音が優雅に姿を現した。夕暮れの光に照らされた彼女の美しさに、陽介は思わず息を呑む。
微かな笑顔を浮かべながら彼に近づいてくる綾音の瞳にも、何かを伝えたいという情熱が宿っているように感じた。
綾音は入口近くの席に腰を下ろし鞄を置いた。窓際に座る陽介とは五席ほどの距離があった。が、陽介には綾音がとても近くにいると感じていた。
二人は静寂に包まれた教室で、二人だけの空間に身を委ねる。しかし、陽介の心は一心に綾音へと向かっていた。言葉にしなければならないという使命感が彼の心を煩いほどに駆り立てていた。
そして迷いを振り切り、陽介は綾音に向き合い、熱い思いを伝えようと口を開く。
しかし、まるで言葉が言葉でなくなったかのように、陽介の口はもつれ、想いが、うまく言葉に乗って口から出て来ない。
焦る心とともに、陽介は内心で自分を責めた。
優雅に佇んでいるように見えた綾音も実は同じように陽介への想いを伝えようと必死になっていた。が、彼女も言葉が喉に詰まり、搾り出すことができない。
綾音の顔には、複雑な感情が交錯し、微かな切なさが浮かんでいた。
それでも、陽介と綾音はお互いに気持ちを伝えようとする努力を続けた。
しかし、時間は過ぎていくばかりで、言葉はなかなか飛び出さない。
まるで宇宙の中で二人だけが存在するかのような静寂が彼らを包む。言葉は無くとも、不思議と陽介には綾音と心が繋がっている様な、そんな感覚があった。
陽介は考え抜いた結果、迷いながらも、綾音の手に自らの手を差し伸べた。
綾音は驚きながらも、揺るがぬまなざしで陽介を見つめ、そして彼女もまた陽介の手を握り返した。
その一瞬、二人は言葉なくとも気持ちが通じることを知った。
彼らの心は風のように自由に舞い、まだ名前のない愛を紡ぎだしていく。
微笑みが顔を照らし、陽介と綾音は互いを見つめ合いながら、言葉を超えた愛の確かさを感じ取った。その瞬間、教室に満ちる夕暮れの光が、彼らの絆を輝かせた。
その後も、二人は触れ合いを通じて愛を深めていく。
手を握り、優しく抱きしめ、言葉にできない愛を伝え合っていった。
そして、夕暮れの教室で始まった二人の純粋な恋は、ほかの誰にも邪魔されることなく、ただ二人だけのものとして、淡く輝いた。
夕暮れの教室 雨宮悠理 @YuriAmemiya
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