第26話 私と悠人㉖
それなのに、どうしてこんなことを考えてしまったのかしら……?
ああ、いけないわ、こんなことではダメよね。
ちゃんと切り替えないと……でも、どうしたらよいのだろうかしら……?
そうだ、こういう時は気分転換するのが一番ね!そうと決まれば早速出かけることにしようかしら。
ちょうど近くにショッピングモールができたことだし、そこなら何かしら欲しいものが見つかるかもしれないし、
何より一人でいる時間も必要だからね。
よし、そうと決まったら出発しようっと。そう思いながら準備をしている時だったわ、
玄関のチャイムが鳴ったのは。
一体誰だろうと思いながら扉を開けると、そこにいたのは悠人だった。
彼の姿を見た途端、心臓が止まるかと思ったわよ。
というのも、実は私たちの間には深い溝ができてしまっているから、
ここしばらくはまともに会話をしていなかったのよねぇ……まぁ仕方ないわよね、
あんなことがあったら私だって怒るだろうし、悠人も気まずいと思っているだろうから顔を合わせることすらできなかったわけよ。
ところが今回はどういう風の吹き回しなのか、突然家にやって来たものだからびっくりしちゃったわ!
一体何の用なのかしらと思っていたのだけれど、
とりあえず中に招き入れることにしたわ。それにしても久しぶりに二人きりになったわけなんだけど、
やっぱり緊張しちゃうわね……だってこの前の件以来だし、ちょっと気まずい感じはあるかなと思ってたら案の定向こうから話しかけてきたわけよ、
それも大きな声でね……!
(どうしよう、なんか怒られそうな予感しかしないんだけどぉ!?
いや待て、落ち着け、冷静になれあたしっ!!)
そう思いつつも私は彼のことを無視することができなかったわ。
まあ、仕方ないわよね、一応私たちの関係を改善するために話をしにきたんだしね。
というわけでとりあえず話を聞いてみることにしたの、そしたらさ、なんとアイツってばいきなりこう言ったのよ!
「実はさ、僕、海外に転勤することになったんだ」
ってね、いや、いきなりそんなこと言われてもわけわかんないしさぁ、
なんかあまりにも突然すぎる展開すぎて頭が追いつかないっていうかなんていうか……
まぁとりあえず続きを聞いてみることにしたんだけどね、すると彼が続けてこう言ったのよ。
それでその後いろいろ話をしてたんだけど、やっぱり全然理解できなかったわ。
「ねえ、ちょっと待ってよ、それどういうこと?」
って聞くと、 悠人は申し訳なさそうにしながらこう言ったの。
「実は、急なんだけど転勤が決まったんだよ。だから明日、日本を離れることになったんだ」
(え、明日!? ちょっと待って、急すぎるんだけど!?)
驚きのあまり声も出なかったわ。
まさか、こんなことが起こるなんて夢にも思わなかったし、やっぱり突然の別れって悲しいわよね。
(どうしよう、このままお別れなんて嫌だよ……)
そんなことを考えているうちに涙が出そうになったんだけど、必死で堪えたわ。
だって、ここで泣いたらカッコ悪いじゃない?
だから私は精一杯強がってみせたの、そしたら悠人が心配そうに話しかけてきたのよ、 それに対して私ったらこう答えたわ。
「べ、別に寂しくなんかないしっ! あんたと別れることになっても平気なんだからねっ!」
本当は寂しくて仕方がないくせにこんなことを言ってしまうあたり、私も素直じゃないなと思ったけれど仕方ないよね。
でもその直後だったわ、彼がこんなことを言い出したのよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます