第25話 私と悠人㉕
悠人は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに優しい笑みを浮かべてこう言った。
「そうか、心配してくれてありがとう、でも本当に大丈夫だから安心してくれ」
(違う、私が聞きたいのはそういうことじゃないんだよ!)
美咲の中で何かが音を立てて崩れていったような気がした。
そして、それと同時に一つの疑問が浮かんだのである。
(どうしてこの人はこんなにも平然としていられるんだろう?)
そんなことを考えているうちに、だんだんイライラしてきた私は思わず叫んでしまったのだった。
しかし、悠人は優しく微笑むだけで何も答えなかった。
その様子を見て、私はますます悲しくなってしまったわ。
その後、しばらくの間沈黙が続いた後、ようやく彼が口を開いたの。
「どうして何も言わないの? 本当は何か知ってるんでしょ!?」
ついに耐えきれなくなった私は、思わず声を荒げてしまったわ。
それでも彼は黙ったままだったんだけど、やがてゆっくりと口を開いたの。
でも、そこから発せられた言葉は意外なものだったわ。
「だけど、美咲は何も悪くないんだよ?だから気にしないでほしいんだ」
そう言われても納得できなかったから反論しようとしたんだけど、その前に彼が続けてこう言ったのよ。
「え、どういう意味? 私にはわからないよ」
不安に駆られた私は、恐る恐る聞き返したわ。
すると、彼は優しい笑みを浮かべながらこう答えたの。
「いや、美咲は何も悪くないってことだよ」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になってしまったわ。
まさか、自分が嫌われていたなんて思いもしなかったから……ショックのあまり言葉を失ってしまった私を見て、彼はさらに続けたの。
彼の口から語られた話は衝撃的なものばかりだったわ。
(じゃあ、やっぱり悠人は私のことを好きじゃなかったってことだよね……?)
そんなことを考えているうちに涙が溢れてきたんだけど、それでも必死に堪えたわ。
ここで泣いたら余計に惨めになると思ったからね……だけど、それでも抑えきれなかったのよ……。
そして、ついに耐えきれなくなった私はその場で泣き崩れてしまったの。
結局、その日は何も話さずに帰宅したんだけど、家に帰ってからもずっと考え込んでいたわ。
悠人に言われた言葉を思い出しては落ち込む毎日が続いたんだけど、そんなある日のこと、
偶然公園で出会った女の子からこんな話を聞いたのよね。
その話というのがまた驚きの内容だったわけなんだけど、その内容とは……?
それはある日の午後のことだった。
その日もいつものように公園を通りかかった時、小さな女の子が一人で遊んでいるのが見えたのね。
それで、その子が気になって声をかけたら、急に泣き出しちゃったものだから慌ててしまったわ。
その時はまだ状況を理解できていなかったから少し戸惑ったけど、なんとか落ち着かせて話を聞いてあげることにしたの。
そして、その子が泣き止んだ後、話を聞いたんだけど、その内容というのがちょっと驚きだったのよね……というのも、
その女の子は最近お母さんを亡くしてしまったらしくて、ずっと塞ぎ込んでいたみたいなのよ。
それで、そんな時に公園で遊んでいた時に私と出会ったというわけなの。
だから最初はすごく落ち込んでいたけど、私と話しているうちに少しずつ元気を取り戻していったみたいで、最後には笑顔を見せてくれたわ。
私はそれが嬉しかったし、何よりほっとしていたわ。
でもそれからしばらく経ったある日のこと、いつものように公園を通りかかった時、一人の女性が目に留まったのね。
彼女はベンチに座って泣いていたんだけど、よく見るとそれが知り合いだったことに気づいたの。
その女性は確か同じ会社の人だったはずだけど、一体どうしたんだろうと思って声をかけようとしたら、私よりも先に彼女に声をかけた人がいたのよね。
その人物こそ、私の夫である悠人だったというわけよ。
(もしかしてまた何かあったのかな?)
と思った私はこっそりと後をつけてみることにしたのね。
しばらく歩いたところで二人が立ち止まったから、物陰に隠れて様子を伺うことにしたのよ。
そしたら案の定、二人の間で揉め事が起きているみたいだったわ。
(どうしよう、これってまずいよね……? でも下手に出て行ったら迷惑かも……)
と悩んでいるうちに二人が口論を始めたんだけど、どうも様子がおかしかったのよね。
悠人が一方的に責め立てられているような感じで、とても見ていられなかったわ。
だけど、だからと言って放っておくわけにもいかなかったから、意を決して声をかけることにしたの。
声をかけると二人とも驚いた様子だったけど、特に何も言われなかったわ。
そこで、とりあえずこの場を離れようと提案したんだけど、その前に彼女が立ち去ってしまったのよ。
だから結局その後どうなったのかわからなかったんだけど、その日からしばらく経ったある日のこと、偶然街中で彼女を見かけたのね。
彼女は一人で歩いていたんだけど、どことなく元気がないように見えたから心配になって声をかけたら案の定何かあったみたいだったのよ。
その時の話の内容というのが、ちょっと信じられないものだったんだけどね。
それはある日の午後のことだったわ。
その日、私は会社帰りに駅の近くにある公園に立ち寄ったの。
そこでは子供たちが楽しそうに遊んでいる姿が見られたんだけど、その中でも一際目を引く子がいたのよね。
その子は赤い帽子を被っていたんだけど、とても可愛らしい女の子だったわ。
そんな彼女を見ていると何だか微笑ましく思えてきて、しばらく眺めていたのよ。
そして、そろそろ帰ろうかと思って歩き始めた時のことだったわ。
「お姉さん、こんにちは!」
突然、声をかけられた。
振り返るとそこには、先日助けた女の子が立っていたのよ。
突然のことに驚いた私は思わず叫んでしまったわ。
でも、その子は特に気にする様子もなく私に話しかけてきたのね。
「あら、あの時の女の子じゃない! 元気にしてた?」
私がそう聞くと、その子は笑顔で答えてくれたわ。
それを聞いて安心した私は、ふとある疑問が浮かんだの。
(そういえば、この子は一体どこから来たんだろう?)
私が考えていると、突然彼女がこんなことを言い出したのよ。
「ねえ、あなたはどこから来たの?」
そう尋ねると、彼女は少し困った表情を浮かべながらこう答えたわ。
「う、うん、あそこ」
と指差したのは駅の近くにあるビルの屋上だったわ。
それを聞いた私はすぐに察したわ。
(この子、もしかして家出少女なのかな?)
そう思って質問してみたんだけど、やっぱり違ったみたい。
彼女は自分のことを話すのがあまり好きではないみたいで、それ以上は何も話してくれなかったのよ……でもね、一つだけわかったことがあるの。
その女の子ってとっても可愛いんだよ。
まるで天使みたいな笑顔を向けてくれるんだ。
(あれ、これってどこかで聞いたようなセリフ……? まあいいか! それよりもっとこの光景を楽しもうっと)
それからしばらく経ったある日のこと、同じ職場の先輩から声をかけられたの。
それは、会社での出来事だったわ。
すると、先輩は私にこう言ったのよ。
それを聞きながら少し考えて、私は答えたわ。
だけどその後、彼が続けて言った言葉に耳を疑ったのよね。
そのとき、不意に彼がこちらに視線を向けてきたの。
私は思わず目を逸らしてしまったわ。
だって、彼の顔を見ると胸が苦しくなってしまうんだもの……ああ、どうして?
そんなはずはないのに、なんでこんなにもドキドキしてしまうんだろう……?
私は自分でもわけがわからなくなっていたわ。
それからというもの、気がつくと彼のことばかり考えてしまうようになっていたのよね。
そうしているうちにある日のこと、私が会社帰りに立ち寄ったお店で偶然彼に会ったのよ。
その時のことは今でも忘れられないわね。
いきなり話しかけられたときはすごく驚いたけど、それ以上に嬉しかったなぁ。
その後も何度か会う機会があってね、そのたびに少しずつ距離が縮まっていった気がするの。
そんなある日のこと、突然彼から告白されたんだけど、正直戸惑ったわね。
だって、私は彼のことをまだよく知らなかったし、何より同じ職場にいるわけだし、
そういう関係になるのも抵抗があったから……だけど、彼の熱意に負けて付き合うことになったのよ。
それからというもの、彼と過ごす時間が楽しくて仕方なかったわ。
でも同時に不安もあったのよね……彼は本当に私のことを好きでいてくれるのか?
私に何か不満があるんじゃないか?
そんなことを考えているうちに、ある出来事が起こったの。
なんと、彼が突然会社を辞めてしまったのよね。
しかも連絡も取れなくなってしまったから心配でたまらなかったんだけど、そんなある日のことよ。
私宛に手紙が届いたのね。
差出人は不明だったけど、中を開けてみるとそこには一枚の写真が入っていたわ。
そこに写っていたのはなんと彼だったのよ!
どうやら彼は海外で仕事をしていて、しばらくの間日本を離れていたということがわかったわ。
「久しぶり、元気にしてた?」
という書き出しから始まって、彼は自分がどうして日本に帰ってきたのかを話してくれたわ。
その内容というのがね、海外で働いていた彼がふとしたきっかけで自分の人生を見つめ直すことになったらしいのよ。
そこで、今度は自分自身がやりがいを感じることができる仕事を見つけたいと思い、再び日本に戻ってきたということだったの。
それを聞いて、私はすごく嬉しかったわ!
だって、私たちの未来のために彼が新しい一歩を踏み出そうとしているんだから、応援してあげなきゃって思ったのよね。
それに、もしここで私たちが別れるようなことになれば彼もまた自分探しの旅に戻ってしまうかもしれないでしょう?
だから、私たちはこれからも一緒に歩んでいくことに決めたの。
「そうだね、一緒に頑張ろう!」
その言葉を聞いて、彼は嬉しそうに微笑んでくれたわ。
そんな彼を見ていると私も幸せな気持ちになれるのよね。
だからこそ、これからもずっと一緒にいたいと思ったの。
彼と出会って、私は変わったと思う。
今までは自分のことしか考えていなかったけれど、今は違うわ。
相手のことを考えて行動することができるようになったし、周りからも褒められることが多くなったもの。
これも全て彼のおかげだと思うわ。
彼には本当に感謝しているの。
だから今度は、私が彼を幸せにしてあげたいと思ってるのよ。
そんなことを考えていたらなんだか顔が熱くなってきた気がするんだけど、きっと気のせいよね。
だって私たちは、夫婦なんだからお互いを愛し合っているんだものね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます