第23話 私と悠人㉓

「あ、本当だ! 久しぶり〜」

そう言って手を振ってきたのは、大学時代の同級生である優希だった。

彼女も私と同じで、この公園で昼食を摂ることが多いのだ。

「久しぶりだね、元気にしてた?」

と聞くと、彼女は笑顔で頷いてくれた。

それから一緒にお弁当を食べることになったのだが、話題は自然と最近の近況報告になった。

お互いの仕事やプライベートについて語り合った後、今度は私から質問をしてみることにする。

その内容というのが、彼氏の有無についてだったのだが、意外なことに彼女は現在フリーだということが分かったので驚くことになった。

しかし同時に納得もしたのだった。

何故なら彼女からは大人の色気のようなものを感じ取ることができたからだ。

「ねえ、良かったら今度一緒に食事でも行かない?」

と誘ってみると、彼女は嬉しそうに頷いてくれたので、早速日程を調整することになった。

そして、数日後には彼女と二人で出かけることになったのだが、そこで思わぬ出来事が起こることになるとは思いもしなかったのだった……。

まず最初に訪れたのはホテルだった。

ここで一晩過ごすことにしたの。

部屋に入った途端、緊張してきたせいか喉が渇いてきた私は、冷蔵庫に入っていた飲み物を手に取ると口に含んだ。

すると、突然眠気に襲われてしまいそのまま意識を失ってしまったのである……。

翌朝目を覚ますと、隣にはいつの間にか裸の悠人が寝ていたことに驚くが、昨夜の出来事を思い出して納得するしかなかった。

「あれ? 優希は?」

「昨日、遅くまで飲んでたみたいで、今日は来ないって連絡があったよ」

と言われ、私はがっかりした。

そして、気を取り直して今日の予定について相談することにする。

悠人は少し考える素振りを見せた後、私に提案した。

「それじゃあ、遊園地にでも行こうか?」

そう言われたので、私たちは電車に乗って隣町にある大きな遊園地に向かうことにしたのだった……。

「わぁ、凄い!」

入場ゲートをくぐると、そこには沢山のアトラクションが立ち並んでいた。

その中でも一際目を引いたのが、ジェットコースターである。

悠人はそれを見て目を輝かせると、私の手を引っ張って走り出す。

「早く行こうよ!」

そう言って急かす彼に苦笑しながらも、私もワクワクしていた。

それからしばらくの間、私たちは色々なアトラクションを楽しんでいたのだが、中でも特に印象に残ったのはお化け屋敷だったと思う。

薄暗い通路を進みながら進んで行くと、突然現れたお化けに驚かされた私は思わず悲鳴を上げてしまうほどだったが、

それ以上に怖かったのは悠人の反応だった。

彼は顔を真っ青にして震えていたかと思うと、いきなり私に抱きついてきたの。

「怖いよぉ、美咲ぃ……」

と言って泣きついてきたので、私は思わずキュンとなってしまい、そのまま抱きしめてあげたのだった。

結局、その後は休憩も兼ねて近くの喫茶店で一休みすることになったのだが、そこでも悠人は私にベッタリだった。

まるで子供みたいに甘えてくるものだから、私もついつい甘やかしてしまうのだった。

そんな楽しい時間を過ごした私たちは、帰り際にお土産屋さんに立ち寄ることにした。

そこで私はある物を購入して帰路につくことになったのだが、途中で悠人が寄り道をしたいと言い出したため、仕方なく付き合うことにする。

辿り着いた場所は人気のない路地裏だった。

そこで彼は突然私にキスをしてきたの。

突然のことに驚いたものの、不思議と嫌な感じはしなかった。

むしろ、もっとして欲しいと思ってしまったくらいだ。

それからしばらくの間、私たちはお互いを求め合うようにして愛し合っていたのだが、

中で誰かが近づいて来る気配を感じ取ったため、慌てて身支度を整えてその場を離れることにしたのだった。

そのまま悠人と共に帰宅すると私はキスをする。

「ふふっ、どうだった? 今日のデートは楽しかった?」

そう聞くと、彼は笑顔で頷いてくれた。

どうやら満足してくれたようだ。

そんな彼の姿を見て、私は嬉しくなった。

今度はどこに行こうかと考えながら、彼との幸せな時間を過ごしていくのだった……。

翌日、仕事を終えた後、私は悠人と共に帰路についたのだが、途中で立ち寄ったコンビニで思わぬ人物と出会ったことで驚くことになる。

それは会社の同僚である理恵だったのだが、何故か彼女の様子がおかしかったの。

明らかに挙動不審であり、何か隠している様子だったため問い詰めてみると、実は彼女は妊娠していたことが発覚したのである。

しかも相手は悠人であることがわかった瞬間、頭が真っ白になってしまった私だったが、

「おめでとうございます、理恵さん」

そう言って、私は笑顔で祝福の言葉をかけたのだった。

それからしばらくして、理恵のお腹が大きくなってきたことに気づいた私は、ある提案をすることにする。

それは、私が彼女の代わりに家事を引き受けることだった。

最初は遠慮していた彼女だったが、最終的には折れてくれたのでホッとしたものである。

そして、その後も私たちは共に過ごす時間が増えていったのだが、ある日のこと……。

悠人が理恵と浮気している現場を目撃してしまったことで、私はショックを受けることになるのだった……。

「悠人、理恵と何時寝たの? どうして妊娠させているの? 私とはどうするの?」

「美咲、ごめん、これは違うんだ! 聞いてくれ!」

悠人は必死になって言い訳をしようとするが、私には聞く耳を持たなかった。

それからというもの、私は彼と距離を置くようになった。

しかし、どうしても気になることがあり、一度だけ話をする機会を設けることにした。

そこで改めて理恵とのことを聞くと、彼は正直に答えてくれたの。

その内容というのが以下の通りである。

まず最初に彼が行ったのは浮気相手の理恵に連絡をして謝罪することだった。

そして、次に彼女と話し合いの場を設けた上で関係を解消するようにお願いしたというのである。

その後で私に謝罪したいと言われたので会うことになったのだが、そこで彼から告げられたのは意外な言葉だった。

「美咲、本当に申し訳ないと思っている。でも、どうか許して欲しい。俺にはお前しかいないんだ」

それを聞いて、私は彼を許すことにした。

しかし、ただ許すだけでは気が済まないため、条件を出すことにする。

それは、今後一切浮気をしないと約束することだった。

「分かった、約束するよ。もう理恵と浮気しない」

そう断言した悠人は、翌日からしっかりと約束を守ってくれるようになった。

それからというもの、私たちは今まで以上に幸せな時間を過ごすことになったのである。

ある日、私が理恵の家を訪れると、彼女は幸せそうな表情を浮かべながら出迎えてくれた。

その様子を見て私も嬉しくなると同時に、少しだけ羨ましく思ってしまう自分がいた。

そんなことを考えているうちに、私はあることを思いつく。

それは、悠人との子供を妊娠することだった……。

そして私はその日の夜、悠人に打ち明けることにしたの。

「ねえ、もし私が子供を産んだら喜んでくれる?」

と聞くと、

「ああ、もちろんだよ。理恵とはただの遊びだったからね、俺との子供は美咲との子供だ。

その子が産まれたら、俺は絶対に大事にするよ」

そう言って、悠人は私のお腹を撫でてくれた。

そして、私たちはその日、ついに結ばれたのだった……。

それからしばらくして、私のお腹には新しい命が宿ったことがわかったの。

悠人はとても喜んでくれたけど、同時に不安そうな表情を見せることもあったわ。

それはきっと私が流産してしまうかもしれないと思ったからだと思うの……。

でも大丈夫!

私のお腹の中で元気に動いている小さな命を感じる度に、私は幸せを感じていたわ。

そしてついにその日が訪れると、私は泣きながら悠人に言ったわ。

「悠人、ありがとう、私、幸せだよ」

すると、彼も涙を流しながら喜んでくれたの。

そして、私は無事に元気な男の子を出産することができたわ。

名前は悠人が考えてくれたんだけど、その名前を聞いた瞬間に、胸が熱くなるのを感じたの。

この子は私にとって、とても大切な存在になるんだって確信したのよ。

こうして、私は悠人との間に可愛い息子を産むことができたのでした……。

しかし、一つだけ気になることがあったの。

それは、悠人のことなんだけど、最近、理恵とばかり仲良くしていて、私のことをあまり構ってくれないのよね……。

でも、寂しいなんて言えないし、どうしたらいいのかしら……?

そんなある日、悠人が突然、こんなことを言い出したの。

「美咲、今日はちょっと出かける予定があるんだ。悪いけど、一人で留守番していてくれるかい?」

それを聞いて、私は思わず不安な気持ちになってしまったわ。

「どうして? どこに行くの?」

そう聞くと、彼は少し間を置いてから答えた。

「それは言えないんだ、ごめん」

そう言ってはぐらかされてしまったため、それ以上追及することはできなかったの……。

そんな悠人に対して不信感を抱きながらも、私は彼の帰りを待つことにしたわ。

でも、なかなか帰って来なくて心配していると、突然玄関のドアが開く音が聞こえたの。

急いで玄関に向かうとそこには悠人の姿があったんだけど、何故か全身ずぶ濡れになっていたのよね……。

それを見た瞬間、

「悠人、どうしたの!? 何があったの!?」

と、思わず叫んでしまったわ。

すると、彼は苦笑いを浮かべながらこう言ったの。

「ごめん、ちょっと転んだだけなんだ」

それを聞いて安心したけど、よく見ると怪我をしているみたいだったから心配になったわ。

だから、すぐに手当てをしてあげようと思ったんだけど、何故か断られちゃったのよね……。

どうしてだろうと思って聞いてみると、彼は少し困った様子でこう答えたわ。

「大丈夫だよ、これくらい平気だから」

それを聞いて私はムッとなったけど、これ以上言っても無駄だと思い直して引き下がることにしたの。

「わかった、じゃあせめて着替えだけでもした方がいいんじゃない? 風邪引いちゃうよ?」

そう言うと、彼は渋々といった感じで頷くと、自分の部屋へと戻って行った。

それからしばらくして、戻ってきた悠人はすっかり元通りになっていてホッとしたわ。

それにしても、一体何があったんだろう?

気になった私は思い切って聞いてみることにしたの。

すると、彼は一瞬躊躇うような素振りを見せた後、ゆっくりと話し始めたわ。

どうやら、帰り道の途中で偶然見かけた女の子を助けようとしたら、足を滑らせて川に落ちたらしいのね……。

それで全身びしょ濡れになって帰ってきたというわけなのよ……。

まったく、無茶なことをするんだから呆れちゃうわよね……まあ、そこが悠人らしいといえばそれまでだけどさ……。

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