第3話 美咲と悠人③
前を見ると、少しずつではあるが進んでいるのがわかる。
それを見てホッと胸を撫で下ろすと、運転に集中することにした。
しかし、その後も何度か同じようなことがあったため、その度にドキドキさせられてしまっていたのだが、
それも最初のうちだけだった。
慣れてくれば気にならなくなるもので、そのうち完全に慣れきってしまっていたのだ。
やがて、無事に目的に到着することができた。
そこは有名な観光地であり、多くの観光客が訪れる場所でもある。
到着するまでの間、車内では他愛もない話をしていたのだが、話題が尽きてくると自然と沈黙が訪れた。
だが、気まずい雰囲気ではなく、心地の良い静寂といった感じだった。
しばらく走っているうちに、目的の場所に辿り着いたようで、悠人が声をかけてきた。
その言葉に従って車を降りると、目の前に広がる景色を見て感嘆の声を漏らした。
視界いっぱいに青い空と海が広がり、太陽の光を受けてキラキラと輝いている様子がとても美しいと感じた。
まるで絵画のような美しさに圧倒されていると、悠人が手を引いて歩き出したので、それについて行くことにした。
砂浜の上を歩きながら、波打ち際まで歩いていくと、靴を脱いで裸足になった。
砂の感触が心地よいと感じると共に、波が足をくすぐっていく感触もまた違った良さがあった。
(気持ちいいなぁ)
と思っているうちに、いつの間にか足首辺りの深さになっていた。
そこで、ふと悠人の方を見ると、彼もまた同じようにして遊んでいたので、
微笑ましく思いながら眺めていたら目が合ってしまい、恥ずかしくなって顔を逸らしてしまった。
すると、悠人が近づいてきて耳元で囁いた。
「キスしてもいいか?」
「えっ!?」
突然のことに驚いている間に唇を塞がれてしまい、なす術もなく受け入れるしかなかった。
舌を入れられ、口内を舐め回される感覚に背筋がゾクゾクしてくるのを感じた。
頭がボーッとしてきて何も考えられなくなるほど夢中になっていたが、
不意に唇が離れたことで我に返った時には、すでに手遅れだったという感じだった。
肩で息をしながら呼吸を整えようとしていると、悠人に抱き上げられた。
そのまま車へと運ばれていき、後部座席に乗せられたと思ったら押し倒されていた。
抵抗しようとしたが、力が入らずされるがままになってしまう。
「またキスしような」
「うん、わかったぁ♡」
そう言うと再び唇を重ねられ、口内を蹂躙される感覚に溺れていった……。
(あぁ♡幸せだなぁ)
「じゃあ、帰るか?」
悠人がそう言ってきたので、私は頷いて答えると、車に乗り込んで帰路についた。
帰りの道中、疲れてしまったこともあって眠ってしまったらしく、
気がついたときには自宅に到着していたようだ。
目が覚めると、目の前に悠人の顔があって驚いたが、同時に嬉しくもあった。
思わず笑みが溢れてしまう。
そんな様子を見て不思議そうに首を傾げる彼に、なんでもないよと言って誤魔化しておいた。
「そっか、まあ、いいや、それより夕飯にしようぜ!」
と言いながら、キッチンへと向かう彼の後ろ姿を眺めながら、幸せな気分に浸っていた。
しばらくすると、テーブルの上に料理が並ぶのを見て、お腹が空いていたことを思い出したかのように、お腹が鳴った。
その音を聞いて、悠人が笑いながら言う。
「ほら、早く食べようぜ」
その言葉に促されるようにして席に着くと、早速食べ始めた。
どれも美味しくて、ついつい箸が進む。
あっという間に完食してしまい、満足感に浸っていたところで、不意に悠人から話しかけられる。
「なあ、明日は休みだし、今夜は一緒に寝ようか?」
突然の提案に驚きつつも、断る理由もなかったので承諾することにした。
それから順番にシャワーを浴びた後、寝室へと向かった。
部屋に入るなり、後ろから抱きしめられたので、振り返るとキスをされた。
舌を絡め合う濃厚な口づけを交わすうちに、だんだん気分が高揚してきたので、
自分から求めるようにして積極的に求め続けた。
しばらくして、息が苦しくなってきた頃に解放されたが、物足りなさを感じてしまい、
もっとして欲しいと思ってしまった。
それを見透かしたように、今度は首筋を舐められてゾクッとした感覚が襲ってくる。
「ひゃうっ! ちょ、ちょっとぉ、いきなり何すんのよ〜」
慌てて抗議するが、全く意に介さない様子で続けてくる。
「いいじゃんか別に、減るもんじゃないだろ?」
そう言われると反論できない自分が恨めしい。
結局、されるがままになってしまった……。
(うぅ〜、悔しいけど気持ち良いかも?)
そんなことを考えながら、しばらくの間身を委ねていたが、次第に眠くなってきたため、
そろそろ寝ようかと思った矢先、悠人が話しかけてきた。
「なあ、今日は楽しかったかい?」
その問いに、私は満面の笑みで答えた。
その後、一緒にお風呂に入ったりご飯を食べたりして過ごした後は、ベッドに入って眠りについたのだった。
翌朝目を覚ますと、既に悠人の姿はなかった。
リビングへ向かうと、机の上にメモ書きが置かれていることに気づいた。
手に取って読んでみると、そこにはこう書かれていた。
〈おはよう、よく眠れたか?〉
という文章を目にした瞬間、昨日のことを思い出して顔が熱くなるのを感じたが、何とか平静を装って返事をすることにした。
(よしっ、大丈夫)
自分に言い聞かせるように心の中で呟くと、朝食の準備を始めた。
トーストに目玉焼き、サラダといった簡単なものだが、特に問題はないだろうと判断した上での行動である。
準備を終えてテーブルに並べ終える頃には、ちょうど出来上がったところだったので、タイミング良く悠人も起きてきたようだ。
二人で一緒に食べることになったのだが、その際にちょっとした出来事があった。
というのも、私が口を付けた後のフォークを使って食べているのを見た彼が、自分も同じことを要求してきたのだ。
最初は戸惑ったものの、結局は受け入れることにしたのである。
それからというもの、食事中はずっとこんな感じで、まるで恋人同士のようなやり取りをしていたことに気づき、
恥ずかしくなって俯いてしまうのだった……。
(うう、なんか恥ずかしいよぉ)
そう思いながらも、どこか嬉しい気持ちもあることに気づいて、複雑な心境になるのだった……。
昼食を食べ終わった後、悠人と一緒にテレビを見ていたのだが、途中で飽きてきてしまって、つい欠伸が出てしまった。
それを見た彼は、苦笑しながら言った。
どうやら、退屈させてしまったらしい。
申し訳ない気持ちになったが、眠気には勝てず、ソファーに横になるとすぐに眠りに落ちてしまったようだ。
どれくらい時間が経ったのだろうか、ふと目が覚めた時、私はベッドの上で横たわっていた。
どうやら、あのまま眠ってしまったようだ。
隣を見ると、悠人が寝息を立てているのが見えた。
起こさないようにそっと起き上がると、服を着て部屋を出た。
洗面所へ向かい、顔を洗っていると鏡に映った自分の姿が目に入ったのだが、そこで違和感に気づくことになった。
髪が伸びているのだ。
しかも、腰まで届くほどのロングヘアになっているではないか!
驚いて声を上げそうになったが、なんとか堪えることに成功した。
とりあえず落ち着くために深呼吸をしてから考えることにする。
なぜこんなことが起こったのかはわからないが、思い当たる節がないわけでもない。
おそらく昨日の影響だろうと推測できるからだ。
つまり、原因はあのドリンクということになるわけだが、一体どういうことなのだろうか?
考えてもわからないことだらけだったが、いつまでもここにいるわけにもいかないので、部屋に戻ることにした。
部屋に戻ってくると、悠人が目を覚ましていたようで、こちらを見て微笑んできた。
その笑顔を見た瞬間、胸が高鳴るのを感じると同時に、なぜか安心感を覚えたのだった。
そして、自然と口から言葉が出ていた。
「ねえ、悠人、キスしていい?」
自分でも何を言っているのか理解できなかったが、気づいた時にはもう遅かった。
次の瞬間、唇が重ねられていたのだから当然だ。
最初は軽いものだったのだが、徐々に激しくなっていくにつれて、頭がボーッとしてくるような感覚に襲われた。
やがて、満足したのかゆっくりと離れていく彼の顔を見ながら、名残惜しさを感じていた自分に驚くとともに、戸惑いを覚えていた。
(あれ、なんでこんな気持ちになるんだろう)
そんなことを考えているうちに、再び唇を重ねられていた。
今度は先程よりも長く、深いものだった。
舌が入ってきて口内を舐め回される度に、背筋がゾクゾクするような快感に襲われる。
ようやく解放された時には、すっかり蕩けてしまっていた。
その後も何度か繰り返していく内に、完全に虜になってしまっていた。
それからしばらく経って、落ち着いたところで悠人が言った。
「じゃあ、寝るか?」
私は無言で頷くと、手を引かれるままに寝室へ向かった。
ベッドに潜り込むと、後ろから抱きしめられる形で横になった。
彼の体温を感じながら、幸せな気分に浸っているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
気がつくと朝になっていたようで、窓から差し込む光で目が覚めたようだった。
隣に視線を向けると、悠人が眠っている姿が目に入った。
(寝顔かわいいなぁ)
と思いながら眺めていると、不意に目が合った。
その瞬間、一気に顔が熱くなるのを感じたが、目を逸らすこともできず、見つめ合う形になってしまった。
悠人は微笑みながら、私の髪を撫でながら言った。
「おはよ、昨日は可愛かったぞ」
その言葉に、私の顔はますます赤くなっていった。
恥ずかしさのあまり、枕で顔を隠していると、悠人が顔を覗き込んできた。
「おーい、どうした?」
その言葉に、ますます恥ずかしくなった私は、黙り込んでしまった。
すると、悠人が耳元で囁いてきた。
「またしようぜ♡」
その言葉に、思わずドキッとした。
(えっ!? それってどういう意味なんだろう……?)
混乱していると、さらに追い打ちをかけるかのように、悠人が続けた。
「好きだ、愛してる」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が大きく跳ね上がった気がした。
それと同時に、胸の奥底から何かが込み上げてくる感覚に襲われ、涙が溢れ出てきた。
そんな様子を見て、心配そうに声をかけてきた彼に対して、泣きながら抱きついた。
悠人は驚いた様子だったが、何も言わずに抱きしめ返してくれた。
それが嬉しくて、余計に泣いてしまった。
しばらくして、落ち着きを取り戻した私は、顔を上げて悠人の顔を見つめると、意を決して尋ねた。
「私も、あなたのことが大好きです!」
と言うと、再び唇を重ね合わせた。
今度は私から舌を入れると、それに応えるようにして彼も絡ませてきた。
お互いの唾液を交換し合うかのように、何度も繰り返すうちに頭の中が真っ白になり、
何も考えられなくなったところで、ようやく解放された。
もう立っていることすらままならない状態だったため、その場に座り込んでしまった私を見下ろしながら、悠人は言った。
その表情からは感情が読み取れなかったが、なんとなく怒っているような気がしたので、
恐る恐る聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。
それを聞いてホッとした私は、緊張の糸が切れたせいか、そのまま意識を失ってしまった……。
目が覚めると、ベッドの上だった。
時計を見ると、まだ朝の6時だった。
起き上がって周りを見回すと、悠人の姿はなかった。
トイレにでも行っているのだろうと思い、待っている間に着替えることにした。
しばらくして戻ってきた悠人に、おはようと挨拶をした後で、朝食の準備を始めたのだった。
悠人と付き合い始めてから数か月が経ち、季節は秋へと移ろいでいた。
そんなある日、私は風邪を引いてしまい寝込んでいた。
熱が高くて動くこともままならず、ベッドで横になっていることしかできなかった。
そんなとき、悠人が看病してくれた。
手にはコンビニ袋を持っているようだ。
中身はスポーツドリンクや栄養ドリンク、果物などが入っていた。
それを見て嬉しくなった私は、思わず笑みが溢れてしまった。
それを見た悠人も安心した様子で、私に話しかけてきた。
「大丈夫か? 食欲あるなら、お粥でも作ろうかと思って買ってきたんだけど、食べれそう?」
そう言われて、少し悩んだ末にお願いすることにした。
しばらくして、出来上がったお粥を持ってきてくれたので、食べさせてもらうことにした。
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