第7話

 家に帰ると、いつものようにお風呂に入り、熱にぼんやりと朦朧し、自室のベッドに着き、そのままベッドに倒れ込んだ。寝ようとしても、心にもやもやとするものが胸を刺し、眠れなかった。

目を閉じていると、バイブレーションの音。それは前の高校の友人「光」からのメッセージだった。

『最近どう?高校上手くいってる??』

ぼんやりと彼女の顔を思い出す。光は私の唯一と言ってもいい友達で、ずっと学校生活を共にしていた。彼女なら相談できるかもしれない。

『うん。ちょっと話したいことがあるんだけど、電話してもいいかな。』


 ツー、ツー、ツー。


「もしもし紗夜? 久しぶり!」


「あ、うん。久しぶり。元気にしてた?」


「元気だよー! 紗夜も元気だったー? 新しい高校では馴染めてる?」


「うん。最初は慣れなかったけど、少しずつ親しくなれてると思う。」


「それは良かった……! 友達とか出来た?」


「あー、出来たよ。とても優しい子でね。いつも話しかけてくれてー。」


 木下さんの話をしようとしたら、あの瞬間が脳裏にくっきりと現れた。


「ー。紗夜? もしもし?」


「光さ。1つ相談があるんだけど。」


「うん、どうしたの?」


「恋人ってどんな物?」


「え? 紗夜、好きな人出来たの!?」


「いや! そういう訳では無いけど……。」


「ちょっと、そういうのが分からなくて、光なら知ってるかなって。」


「あー、そうなんだ。紗夜も青春してるね。」


「これは私の意見だけど、紗夜って恋人ってドラマみたいなイケメンでかっこいい人の事とか思ったりしない?」


「あー、うん。ちょっと憧れるよね。」


「でも、私は違うと思ってて、恋人ってのはそういう見た目とかじゃなくて、ただ近くにいたらいいみたいないると元気になるとかそういう内面を大切にしたらいいと思うんだ。」


「そうなんだ。それって好きってことになるの?」


「なると思うよ。そもそも人を好きになるのって疲れるんだよ。長時間そんな強い気持ちが続くわけない。だから、長続きするように、軽くゆっくり、そんなのが恋人だと思うな。」


「……ありがとう。光。」


「気にしないで。私そろそろ寝るね。今度はいい知らせが聞けると嬉しいな。」


「うん。そうだね。」


 プチッ。


 電話が切れると私はそのままベッドに飛び込んだ。ざぶーんとベッドが凹み私を包む。その夜は少し落ち着いて寝る事ができた気がした。

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