第4話
「さ、サリア!? 一体どうしたんだ!?」
「その赤ん坊はなに!? 誰の子なの!?」
「お父様ぁ~...お母様ぁ~...」
実家の男爵家に戻ったサリアは、ポロポロと涙を溢しながら両親に事の経緯を説明した。
「なんてことだ...あの若造! 許せん! よくもウチのサリアを!」
それを聞いた父親は激昂し、
「それでサリア、この後どうするつもりなの? その赤ん坊はどうするの?」
母親は心配そうに尋ねた。
「離婚します。相手に非があるのは間違いないんで、裁判所に訴えればスンナリ通ることでしょう。この子は私が責任を持って育てます」
サリアはキッパリと言い切った。
「いやいや! ちょっと待て! ちょっと待て! そんな血の繋がりもない、縁も所縁もない子の母親になるつもりなのか!?」
父親が慌ててそう言ったが、サリアは断固とした決意を固めたような顔付きで、
「お父様、血の繋がりなんて些細なものです。それに縁も所縁もあります。この子と私は、同じ男に酷い目に遭わされた被害者同士なんですから」
「だからといってあなたが未婚の母になるだなんて...」
母親は憐れみを込めて自分の娘を見詰めた。
「お母様、未婚の母じゃありません。×1の母です。どういった理由であれ、一度結婚に失敗した私は傷物になりますので、この先一生独身のままでしょう。だったらこの子と二人で生きて行きたいと思います。ちゃんと働いて養いますから」
サリアは悟りに至ったような表情を浮かべてそう言った。
「いやしかしだな...」
「フゥ...あなた。もうなにを言っても無駄よ...この娘は昔から一度言い出したら聞かない娘なんだから...サリア、本当にそれでいいのね? 後悔しないのね?」
母親の方も諦めの境地に達したかのような表情を浮かべた。
「はい、お母様。子育ての先輩として色々教えて頂けると助かります」
「分かったわ...」
「サリア...その...色々と苦労を掛けて済まんな...」
父親が申し訳無さそうにそう言った。
「お父様、謝らないで下さい。玉の輿だなんて言って浮かれてたのは私の方なんですから。実際は泥舟だった訳ですけど...」
サリアは自嘲を交えて苦笑しながらそう言った。
「ただ、あのクズ男はこの子を奪い返しに来るでしょう。私は絶対に渡す気はありませんが、伯爵家の権威を振り翳して来られたらどうしましょう...」
サリアは一転して不安気な表情を浮かべた。
「心配するな。お前とその子のことは儂が守ってやる」
父親は力強く言い放った。
「大丈夫ですか? 我が家に負担を掛けることになったりしませんか?」
サリアはそれだけが心配だった。
「大丈夫だ。あの若造はまだ伯爵家を継いだ訳じゃないからな」
「えっ!? そうなんですか!?」
寝耳に水だったサリアはビックリして聞き返した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます